競売不動産取得にあたっては、一般流通物件取引とは異なった費用がしばしば発生してきます。今回は競売不動産選定にあたっての資金計画をご説明いたします。
目次
競売不動産取得の資金計画について
融資利用の有無、占有者との交渉結果、リフォームの有無によって必要資金は変わってきますが、概ね考えられる必要資金は以下の通りです。
(2) 登録免許税
落札後に落札者の名義に所有権を移転する為の費用です。
(3) 不動産取得税
(4) 融資諸費用(融資を利用する場合)
(5) 占有者との交渉によって考えられる費用
・立ち退き費用(占有者へ渡す費用。)
・残置物処理費用(占有者が所有していた家具等の処分費用)
・滞納金、遅延損害金(マンション等で管理費等の滞納がある場合)
・引渡命令・強制執行手続費用(占有者を強制的に退去させる場合)
(6) リフォーム費用
(1) 入札金額(落札金額)
入札時には物件ごとに定められた買受申出保証額を所定の振込用紙にて振り込みます。落札後、残代金については落札後に裁判所より送付されてくる代金納付期限通知書の期限・方法にて支払います。残代金については融資を利用しての支払も可能です。落札できなかった場合、買受申出保証金は、入札時に入札者が指定した金融機関口座へ返還されます。
(2) 登録免許税
落札後に落札者の名義に所有権を移転する為の費用です。
○所有権移転登記
固定資産課税台帳登録価格(固定資産税評価額)に下記税率を乗じた額(非課税土地については別途計算となります。)
土地・建物 1000分の20
※住宅用家屋の場合 1000分の3(平成27年3月31日まで。一定の要件有)
○負担記入抹消登記(差押登記、抵当権設定登記の抹消等)
1000円×不動産の個数
※固定資産評価額は対象不動産所在の役所・役場にて発行される固定資産税評価証明書に記載されていますが、落札者でないと取得できない為、入札時は3点セット記載の固定資産税・都市計画税等から類推することになります。
※登記については裁判所が職権で行いますが、融資を利用して残代金を納付する場合(残代金の融資を受けるため所有権移転登記と共に抵当権を設定登記をしたい場合)は司法書士等へ登記嘱託書を預けて抵当権を設定する為、別途司法書士等への報酬が発生してまいります。
(3) 不動産取得税
不動産取得後(所有権移転後)、約6ヶ月後に都道府県税事務所から通知がきます。税額は、取得した不動産の価格(固定資産課税台帳登録価格(固定資産税評価額))に下記税率を乗じた金額となります。
土地及び建物(住宅) 3/100
建物(非住宅) 4/100
※平成27年3月31日にまでに取得した宅地等(宅地及び宅地評価された土地)の場合、取得した不動産の価格×1/2に3/100を乗じた金額が税額になります。
※一定要件を満たす場合、軽減措置があります。
(4) 融資諸費用
融資を受けて残代金を納付する場合、融資に関わる費用(手数料、保証料、印紙代等)が発生します。詳細は金融機関ごとに違ってくるので、ご利用される金融機関にご確認ください。
※競売不動産を扱う金融機関は限定されてきますが、居住用であればみずほ銀行、賃貸収益用であれば、日本政策金融公庫等が取扱い可能です。(物件や借入申込人の収入状況等により取り扱えない場合もあります。)
(5) 占有者との交渉によってかかる費用
○立退き費用
占有者へ立ち退いてもらう際に渡す費用です。金額については個々の事件の内容にも寄りますので一概には出ませんが、現在の賃料や次に住む場所等を考慮し、決めるとよいでしょう。
○残置物処理費用
対象不動産内に置いてあるもの(残置物)を処分する費用です。こちらも残置物の量や内容によって大きく変わってきますので、入札前に廃品回収業者や不用品買取業者等に、3点セットに掲載されている室内の写真等でおおよその見積もりを確認した方がよいでしょう。
※競売の対象は不動産ですので、室内に残置されているもの(動産)は対象外です。空室に残置物が放置されている場合は、占有者に処分の同意をもらうか、占有者不在にて引渡命令・強制執行を行い、後日のトラブルを回避するようにしたほうがよいでしょう。
○滞納金・遅延損害金
3点セットの現況調査報告書に滞納金・遅延損害金が記載されていますが、この金額は現況調査を行った時点(3点セットの閲覧開始日の約6ヶ月前位)での金額になります。入札前には管理会社等へ入札時点での金額を調査・確認をした方がよいでしょう。(管理会社からの調査報告書は有料の場合が多いです。)
なお管理費等滞納金の消滅時効は5年ですので、滞納期間が長く、滞納金・遅延損害金等が多額の場合は入札前に弁護士等に相談・確認してもよいかと思います。(最高裁判例有)
○引渡命令・強制執行費用
占有者との交渉の結果、立ち退きに応じない場合、強制的に退去してもらうことになります。不動産の個数・相手方の人数・残置物の量・保管方法等により金額が決まってきます。
主な内訳(この他に発生する費用も考えられます。)
・解錠費用
・作業員料(執行補助者、作業員、特殊作業員等)
・残置物運搬・処理費用
・保管費用(運び出した動産物を保管する倉庫代等) 等
(6) リフォーム費用
リフォーム費用については、何を目的にどこまでリフォームするかによって、かなり差が出ます。収益目的のオーナーチェンジ物件であればそのまま占有者(賃借人)に住んでいただければ良いのでほとんど費用はかかりませんが、居住用・転売用・1棟収益物件等であれば、リフォーム費用は目的や使用状況に応じて大きく変わってきます。
その他の費用として、不動産業者等に競売不動産取得の代行やサポートを依頼する場合に発生する報酬や各種書類(住民票等)取得費用、郵送費用(切手代他)等があります。
また競売不動産を取得する際は室内を確認できない為、予想外の出費も十分考えられます。資金計画には余裕を持って入札に望んだ方がよいでしょう。