今回はパーソナルファイナンスを考える上で、重要な『貯蓄』・『投資』・『投機』の違いを見ていきます。
『貯蓄』と『投資』の違いはリスクのある・なし
よく「お金を貯蓄する」とか「株に投資する」、「そのやり方は投機的だ」などという言い方をしますが、その違いは何でしょうか?
たとえば、銀行預金や郵便貯金に『投資』するとは言いません。これは預貯金にお金を預けておけば、元本に利息がプラスされて戻ってくると、みんな 信じているからです。このように、リスクがほとんどないものが『貯蓄』です(実際には預貯金にも「信用リスク」というリスクがありますが、この影響が小さ いときは『貯蓄』と考えていいでしょう)。
一方、「株式に貯蓄する」とか「不動産に貯蓄する」という言い方もしませんね。これはリスクがあることを想定しているからです。この場合のリスク とは、おもに価格が上がったり、下がったりすること自体をさします。新聞の株価欄をみてもわかるように、株価は日々値動きをしています。
『投資』というのは、モノをつくったり、サービスを提供したりするなど、何らかの経済活動を通じて、価値を作り出していることにお金を投じること をいいます。つまり、短期的には、価格が変動するリスクがあっても、長い目でみれば価値が高まるだろう、というものにお金を投じる行為なのです。
プラスサムの『投資』、ゼロサムの『投機』
『投資』はプラスサムの世界です。プラスサムは中長期で成長があり、みんなが幸せになることが期待できるケース。
例えば、会社がどんどん成長するので、株価も上がり、その株を売った人は儲かります。高くなった株を買った人も、株を買った値段以上に株価が上がるので、みんながハッピーということが期待できるわけです。
逆に『投機』は、売買に参加したうちの誰かが儲かれば、ほかの誰かが損をする(つまり、売買に参加している人の合計の損益がゼロ以下になる)ゼロサムの世界です。麻雀や競馬などのギャンブルなどはその典型です。
また、その決定プロセスにも大きな違いがあります。
『投資』はたくさんの情報の中から、より有効な情報を収集して、調査や分析に時間をかけて、慎重に投資先を決めます。 一方の『投機』は限定的な情報をもとに、少ない選択肢から決定するというイメージです。
けれども、『投資』の中でも、仕手株や短期売買の世界は『投機』に近いものがあります。これは儲けが決まっていてそれ以上増えることがなく、相手の損が自分の儲け、という考え方です。
すると、相手を出し抜いていく情報戦になってしまい、個人投資家が儲けるのはむずかしくなります。
「当った、外れた」と投機的な行為を楽しんでいる人は別にして、何らかのライフプラン目的を達成するために大切なお金を投下する以上は、ゼロサムの『投機』ではなく、プラスサムな中長期的の『投資』をしていくことが大切でしょう。