「高額療養費制度があるので医療保険は不要です。」
喫茶店で打ち合わせをしていた際、隣のテーブルで保険営業マンが言い切っていました。彼の名刺には”ファイナンシャルプランナー”の文字。
さて、医療保険は本当に不要なのでしょうか?
私のコラムは実体験を基にしているので身の上話が多くなってしまいますが、私の父は先日、約1ヶ月入院しました。硬膜下血腫という病気のためです。昨年は、母が女性疾患で手術を受けたために1ヶ月ほど入院しました。その前には友人が、そして仕事上、保険も扱っているため、何人かのお客様がご入院され、治療を受けてらっしゃいます。
病になる人は意外に多いものですね・・・という主張ではありません。彼らの中で「医療保険なんていらなかった」と言っていた人がどのくらいいたでしょうか。
答えは、一人もいなかった、です。さらに言えば、「医療保険に入っていてよかった」と言っていました。
目次
医療保険の必要性を判断する2つのポイント
そもそも高額療養費制度とはどのようなものかご存知でしょうか。
堅苦しい説明はなるべくしたくないので簡単にまとめますが、高額療養費制度とは健康保険制度の対象となる治療については上限を設け、その上限を超過した分については精算する制度です。(詳しくは厚生労働省のページをご参照ください。)
理論的には、ある程度の貯蓄がある前提でこの制度を利用すれば医療保険は不要です。上限分+αを貯蓄しておけば事足りるためです。
ですが、本当にそうでしょうか。
私は、必ずしも医療保険が必要だとは思っていません。かといって、100%不要とも思っていません。それは個々人の生活であったり、考え方によって変動するものだと考えているからです。
そこで、医療保険が必要か不要かを検討する際には、下記の2つの点から考えてみることをお勧めしています。
1.入院時、ご自身がどう過ごしたいか?
ひとつは「入院時、ご自身がどう過ごしたいか?」です。
私の尊敬する経営者の方は、ご自身が入院された時の経験から、入院しても自由に仕事をするためには個室が適しているという理由で医療保険に加入されています。私も同様に、少しでも心身にかかる負荷をなくして早く治るために、そして、回復が進んだ時に仕事をするために医療保険に加入しています。
仕事の話となれば誰かに聞かれてはいけないこともありますし、何よりネット環境が禁止される場合もあるためです。
入院そのものにかかる費用に限定して言えば、前述のとおり、高額療養費制度を利用すれば支出は抑えられます。
なので、健康な時に想像するのは難しいかもしれませんが、病気になった時のご自身の心理状態でどんな環境で治療を受けたいかを想定してみることをオススメします。
私は小心者ゆえ、慣れない環境で他人のイビキや痛みに耐える声を聞きながら、ぐっすり眠れる気がしないというのも個室を利用したい理由かもしれません。
2.日々の生活費の担保があるか
もうひとつは「日々の生活費の担保があるか」です。
「有給があるから」や「傷病手当があるから」などの理由でなんとかなると思っている方もいらっしゃると思います。ですが、もうちょっと深く掘り下げて考えてみてください。例えば10年後、有給がある会社に働いているでしょうか。
あるいは、入院する可能性が高まる定年を迎えられた後、年金が支給するされるまでの数年間の間に入院することになったら、その費用を負担することはできるでしょうか。
傷病手当について言えば、傷病手当は支給されるまでに時間を要する場合があります。その期間の支出はカバーできるでしょうか。
保険営業マンの営業話法はある意味で事実です。ですが、ある意味では売りたい保険商品への誘導です。なので、投資や保険など、ご自身にあった金融商品を選ぶ際には将来のことに目を向けて提案してくれるFPや営業マンを選ぶことをオススメします。
どうやって見分けるか。
例えば、ご自身が相談したFPや営業マンがいたら、生活環境が異なるご友人やご家族を紹介してみてください。紹介した先でも全く同じ話をしていたとしたら、それは営業話法であり、ご相談者に適した提案ができるFPではないと思います。