過去の日本は、妻を娶って子宝を授かった後は、家の一軒も持つのが男の甲斐性と言われてきました。これが所謂、過去の常識というやつですね。
冷静にしっかり目を凝らして今の日本を見渡してください。日本の経済を、日本の社会を見渡してください。さて、今、皆さんが生きているこの社会に、過去の常識は通用するのでしょうか?そもそもそんな常識が必要なのでしょうか?
「家は持つべきか、持たざるべきか」
今回のコラムのテーマは前回の「変動金利か固定金利か」をさらに生々しく掘り下げて鋭く斬り込みます。
目次
35年ローンで家を買うと、それが本当のマイホームになるのは、ローン返済が済む35年後… その時マイホームは?
ここに私が書いた事実をしっかり読んで、社会を見渡して、そして、自分を振り返ってみてください。「それでも、あなたは家が欲しいですか?」
家を購入したいと具体的に考え始めている方は、第一に「家を欲するのはなぜか?」というところを冷静に考えてみてください。世間体とか親が言っているからとか、昔からの習慣とか・・・ そんな理由ではないですか?
実際家を買うとなった時、キャッシュで買える財力があればいいのでしょうが、そんな人はほとんどいないので、多くの場合ローンを組む事になります。ローンを組んでマイホームを買うと言いますが、実はその家が、本当の意味でのマイホームになるのは、そのローン返済後です。
賃貸で生活しようが、ローンで生活しようが、それは結局、全然マイホームではないということですね。購入したと言っても、それはあくまでもローンホームでしかない。
家を買う事=ローンを組む事。ローンを組むという事=借金を背負う事
例えばマンションを購入しても、マンションを借りても、一戸建てを購入しても、一戸建てを借りても、「私のライフの一体何が変わるのか?」というところを冷静に考えてもらいたいと思います。
マイホーム購入のローン金利・リフォーム費用・固定資産税で、もう一軒家が買えてしまうんですよ
次に・・・「それでもどうしても自分の家が欲しい!」と考えた時に、「ローンを組んだらどういうことになるのか?」ということを、現実から目を背けずに、しっかり見つめて欲しいと思います。
前回のコラムでもお話ししたように、住宅ローンで3000万円借りたら、金利も含めた総額では4000万円ほど返済することになるので、1000万円多く支払うという事になります。
※ 借入3000万円、返済期間30年、ローン金利2%=支払い総額39,918,769円(諸費用別)
もちろん、持ち家になったら、それ相当の固定資産税も毎年払っていかなければなりません。また、家はローンを支払っている30年の間に恐らく一回か二回、水回りのリフォームが必要になります。お風呂も30年間そのまま使える訳ではありません、キッチンもトイレもそうです。一軒家でしたら、キッチンの床も外壁にも問題が出て来ます。
とあるリフォーム・アドバイザーに聞くと、最近は、そういったリフォームに1200万円くらい掛ける方が多いという事です。
よくネット広告で色んな部分のリフォーム施工が80万円ですよとか150万円ですよとか出ていますが、最低の値段でやる人はまずいないらしいです。広告にある安いのを本当に組み合わせれば500万や600万で済むのかも知れないですが、いざやるとなると、それでは終わらないんですね。
1200万円・・・ これって、もともとローン支払いの金利分と同じくらいのお金ですよね。ローン金利、固定資産税、リフォーム… 全部足したら「もう一軒家が買える!」なんてことになりませんか?
私たちは「家を買った」という相談者には、「じゃあ、月々2~3万円の貯蓄はしていかないといけませんね」とアドバイスしますが、多くの相談者は「えっ!?」と驚かれます。「なぜなんですか?」という少し苛立った質問に、私は「それは家のリフォーム費用です」と答えます。つまり買ったそばからリフォーム費用を貯めていかないと、間に合わなくなってしまうんですね。
一戸建立てでなくマンションの場合でも、強制的に毎月、修繕積立金というのをさせられますし、大規模リフォーム時に積み立てた費用が足らないと追加金を出さなければならないときもあります。
驚くような厳しい現実ですが・・・ローンで家を持つという事は、こういうことなんですね。今まさにローンで家を買おうとしている人は、そういったことまで考えて行動していますか?
不動産業者の悪魔の囁き「賃貸の家賃にそんなに払っているのなら、ローンで夢のマイホームが買えますよ」
どこの不動産業者でも声高らかに言います。「今、賃貸の家賃にそんなに払ってるんだったら、自分の家を買ってローンが払えますよ。家賃は払うだけですが、ローンなら、その家は自分のものになりますよ!」そんな言葉は鵜呑みにしちゃいけない。なのに、オフィスに相談に来られる方の中には、鵜呑みにしている方が驚くほど多いのです。
この考え方は、ライフという、それぞれの人間にとって大切なものを大きな視野で見ていない。今月、来月っていう感じで、本当に目先のことしか見えていないですよね。
これからお子さんをとお考えのご夫婦が家を購入した場合を考えてみましょう。お子さんを一人育てるには、教育資金だけでも1000万円というふうに言われていますが、もっと慎重に考えてみてください。その子が中学生、高校生になったら、どれだけ食べるかという事を。夫婦以上の食費が子供に掛かって来ます。
一説には、子供一人を育てるのに教育資金、養育費をたして3000万円かかってると言われています。それを聞いて「住宅ローンを払っていける」と自信を持って言えるでしょうか?

子ども一人あたり年間子育て費用(食費、衣服費、生活用品費、教育費)
未就園児 約85万円 ×3年=255万円
保育所・幼稚園児 約120万円 ×3年=360万円
小学生 約120万円 ×6年=780万円
中学生 約155万円 ×3年=465万円
子どもが中学生になるまでの費用 =1860万円
≪内閣府『インターネットによる子育て費用に関する調査報告書』(2010)より≫
高校から大学までの教育費
子ども一人当たり 1031万円
≪日本政策金融公庫『教育費負担の実態調査結果』(2012)より≫
【結果】
大学までの教育費、衣食住の費用も含めると、およそ子ども一人育てるのに3000万円ほどかかることになる
50歳で家を買え… 自分のライフはまだまだ続く。家を買うのは今が最適ですか?
家を買うためのライフでなく、自分のライフのクオリティを重視すべきではないですか?
賃貸住宅に30年間、10万円の家賃を払い続けて住んでも総額は3600万円。4000万円で家を買って固定資産税や後々のリフォーム費用もかかると考えると、お金をしっかり貯えて、もう少し年をとってからキャッシュで買うという選択肢も浮かび上がってきませんか?
私は以前、「50歳で家を買え」というコラムを書いた事があります。要は、30歳の今、50歳になった自分の思考が分かりますか?ということなんですね。
それに、30歳と50歳の時代で、自分が家に居る時間を比べると、一般的には50歳の方が長いですよね。子供の教育環境やなんかを考えて「子供が小学生の間に家を買いたい」と発言をする方がいます。でも、小学生の子供なんてそこから7~8年しか、その家に住まないかもしれないんですよ。
そんな理由だけで若い時期に家を買ったが為に、自分の好きな場所でなかったり、自分の年齢に環境が合ってなかったり(30代は都会に住みたいけど50代になると田舎が良くなったり)する場所に家があったりすると、そこに延々お金を払い続けてゆくのも少し不幸かなと思います。
だから、50歳を越えて、ライフスタイルも見えてきて、ある程度のお金を蓄えた後に家を買うというのもいい選択だと思います。足りずにローンを使うにしても、1000万円と3000万円借りるのとでは期間も短いし、1000万円を10年で借りても払う利息は知れています。
※ 借入総額1000万円、返済期間10年、ローン金利1.5%=支払い総額10,774,922円(諸費用別)
手かせ足かせの重さもないし、期間もすごく短いので精神的にも安定しますよ。途中で子育てが終わってしまえば、もう子供にお金を掛けること無くなっているので、それほど心配もない。50歳を越えて、自分の志向が定まった時に家を買ってもいいんじゃないですか?
ここでも、やはりご自身のライフをしっかり考えた方が後悔しない結論を出せるんじゃないかなと思います。
今、30歳の人に、50歳になった時にどんな生活をしたいのかイメージしてと言っても、夢や理想は持っていたとしても、実際にそれが実現出来る人生になってるのか、なってないのか分かりませんから、単純にそう思います。そんなメンタルもしっかり含めて家を買うという事を検討してもいいのではないですか?
さて、ファイナルアンサーです・・・
ここまで語って来た色々な判断要素を目の前に並べてみて
「あなたはそれでも家が欲しいですか?」
「50歳で家を買え!」と言っている私は、「じゃあ、どうすればいいのか?」ということをお話ししなければなりませんね。ということで、次回は「50歳で家を買う」という選択肢についてじっくりお話ししたいと思います。お楽しみに。