ライフプラン・キャッシュフロー分析の必要性
将来のライフプランを考えた場合や、住宅などの大きな買い物をする場合、多くの方がご自身の将来に対して、少なからぬ不安を感じています。
例を挙げれば、『もう一人子供がほしいけれど生活は大丈夫だろうか』、あるいは『住宅を購入したいけれど返済計画に無理はないだろうか』など将来に対し金銭的に不安を抱くことは自然な感情とも言えます。
このような不安に応えるため、ファイナンシャルプランナーをはじめとした多くのコンサルタントは、「ライフプラン分析」あるいは「キャッシュフロー分析」を行い将来に備えることを勧めています。
ここで言う「ライフプラン分析」あるいは「キャッシュフロー分析」と呼んでいるものは、ご自身の想定する将来設計に基づいた金融資産の推移を分析するものという意味では同一のものです。
将来にわたる所得や、支出を時系列に並べ、収支の推移を把握し、将来起こりうるイベントに備えておくことは、分析の精度が信頼できる前提の上では、将来のリスクに備え、安心を得る上で有効な手段と言えます。
現在行われているライフプラン・キャッシュフロー分析の方法と問題点
それでは、現在行われているライフプラン・キャッシュフロー分析(以後LP・CF分析)にはどのような手法が用いられているのか見てみましょう。
一般的に、収入の予測は、前年の税込年収を基準に、コンサルタントが顧客の同意を得られる範囲の係数を提示し単純にかけ算をして求めている場合がほとんどです。
これを例示すると、昨年度の年収が500万円、年収の上昇率を2.5%と仮定した場合、初年度は512.5万円、5年後は565.7万円、10年後は640万円、15年後は724.1万円と常に右肩上がりの所得上昇の結果が得られます、このように推計した年収を基に将来を予測する危険性は説明するまでもありません。
また、公的支出(税金、社会保険料、健康保険料など)も同様に、前年の実績値を基準に単純に係数を乗じたものが表示されています、ここで設定される係数が収入の上昇率以下で設定されている場合には、算出される可処分所得は必ず前年を上回ることになり、実態を反映しているとは言えない結果が導き出されます。
生活費や、教育費などの私的支出は、さすがにライフプラン分析を謳うだけあって、幾つかの統計数値を利用し、ある程度は詳細に分析されているものが多いようです。
LP・CF分析を単年度で見た場合、収支は以下の式で表示することが出来ます。
可処分所得 - 私的支出 = 年間収支
この式から、年間収支を求めるには、年収の推計や公的支出の推計をないがしろにしては、全体としての分析の精度が確保できないことが判ります。
現在の分析手法は、私的支出については詳細な分析が行われていますが、可処分所得を算出するために必要な、長期間にわたる所得や公的支出の算出には、何ら信頼できる根拠を持つものではありません。
初期値に単純に係数をかけて求められた、年収や公的支出を求める手法は、3年から5年程度の、ライフプランとしては比較的短期間の予想を行うために用いられるべき簡易手法です、そもそも長期間の分析に耐える精度は持ち合わせていないのです。
このことは、ファイナンシャルプランナーのテキストにもこの手法による分析は10年以内に抑えるべきとの記述があることからも、多くのコンサルタントに認識されていなければならないずのことですが、現在行われている分析の実態は、この注意書きを無視して何の対策も打たずに期間のみを延長したものがほとんどです。
このような手法で作成された分析表では、ある程度信頼できるのは当初の5年程度と考えられます、10年もたてば分析結果はかなり怪しくなり、それ以上の期間は例え最もらしく見えても気休めに過ぎないのです。
分析を希望されるほとんどの方が求めている分析期間は、お子様の成長過程や、住宅ローンの返済期間中における金銭的問題点を把握するという、数十年に及ぶ分析が必要なことがほとんどですが、現在行われているLP・CF分析では、このような長期にわたる分析希望に添えないことは明らかです。
他にも、現在の分析手法では、採用する係数の採用基準が曖昧であり、分析するコンサルタントの業務上の立ち位置によっては恣意的な運用が可能になるなど、多くの問題点を抱えています。
次回からは、ここで指摘した問題点を回避するにはどのようにすべきなのかを記載します。