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1.老齢年金が12月支給分から減っています。
直前に郵送された通知や、通帳を見て気付かれた方もいると思いますが、12月受給分の老齢年金(10月、11月分)から金額が減っています。10月に受給している年金額(8月、9月分)よりも1%減。しかも消費税が8%となる来年4月に1%減。また更に、H27年4月にも0.5%年金額が減ります。つまり、合計2.5%分、老齢年金額が減ってしまうわけです。
2.なぜ、減るのか?
実は、今まではもらいすぎていたのです。公的年金には、物価や現役世代の賃金が上がれば年金額が増え、下がればそれに応じて年金額が減るルールがあります(物価スライド)。
ところが、デフレ状態のH12年(2000年)~H14年(2002年)の3年間、本来なら物価下落に応じて、年金額も減らさなければいけなかったのですが、選挙の票集めに目が眩んだ政権与党は、「高齢者の生活に配慮する」という理由で特例を設け、年金額を据え置きました。この特例により、累計約8兆円が過剰に支給されていたわけです。
今回の老齢年金の支給額の引き下げは、特例を廃止し、元の年金受給水準に戻すための制度。
3.景気が上向けば、老齢年金額が増える?
特例廃止で受給額が減りますが、景気が上向けば、物価・賃金上昇もあり、年金額が増えるというルールはまだ消えていません。特にアベノミクスの影響で、株価は上昇し、円安で物価も上昇気配。年金受給額が上昇する可能性もあるのではないかと思われた方もいるかもしれません。
4.実はそう簡単に老齢年金額は増えないしくみです。
物価や賃金が上がっても、そう簡単に年金額は増えません。「マクロ経済スライド」という年金額調整のしくみが動き出すからです。
このしくみは、現役世代の負担を減らすために、H16年の制度改革で導入されたもので、物価・賃金上昇に合わせて年金額を上昇させる従来ルールではなく、年金受給改定率から一定の調整率を差し引いた分しか年金額は増えないようにするというルール。この調整率は1~2%程度。現役世代の労働者の減少率に応じて毎年変わります。
例えば、従来ルールでいけば1%年金額が増えるような状況であっても、マクロ経済スライドの調整率が1%であれば、差し引きして年金額は増えません。今後、日本の景気が上向きになったとしても、アセアン諸国のように高成長率が見込めるわけではありません。
つまり経済成長率が2%以下だとすれば、老齢年金額は増えない可能性が高いのです。現在受給している世代の方だけではなく、将来受給する現役世代も、年金は減ることはあっても、増えることはないと思った方が賢明です。
5.現役世代の方が今よりも更に厳しくなります。
現在年金を受給している世代はまだ、現役世代よりも余裕はありますが、問題は将来年金を受給する現役世代です。現役世代が個人としてできることは、年金額が減っていくことに対して、手をこまねいているだけではなく、長く働けるようなスキルを磨く、あるいは、支出を抑えできるだけ多くの余裕資金を創り出せるような生活防衛対策を考えていくことだと思います。(執筆者:釜口 博)