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IPO49連勝ですが…
12月17日の日経新聞に取り上げられていましたが、ジャスダックに資金上場したアズマハウスの初値が1760円と公募・売り出し価格(公開価格、1600円)を10%上回りました。これで、初値が公開価格を上回るのはアズマハウスで49社連続となり、市場では49連勝とよんでいます。
はじめにお断りしておきますが、IPOを狙った株式での運用を否定しているわけではありません。流動性を供給すること、新しい企業のパワーを株式市場に反映させること。この点でIPOは無くてはならない価値あるものです。しかし、これを「投資」と読んでよいのか? この点には大いに疑問があります。
投資とは? もう一度考えてみませんか
なぜ「投資」と読んでよいのか? と疑問に思うのか。その理由は、「どうせ直ぐに売るんでしょ。売り遅れた人がババをつかむんでしょ。この企業を愛する気持ちなどどこにもないんでしょ。」との点です。
本来IPOと言うのは、成長する企業の価値の増大をもっとも長く享受することができる、もっとも株価の低いところから享受することができる、長期株式投資にとってもっとも効率的な手法なはずです。しかし、そんな思いなど今のIPOには微塵も感じません。抽選で当たればラッキー。初値がついた瞬間に売ってしまい、連勝だ連勝だと騒いでいる。やはり変ですよ。
実際、初値がついた後の株価は多くの銘柄で下落しています。
不動産情報サイトを運営するオウチーノは上場初日の11日に公開価格の2.3倍の初値を付けたものの、翌日からきょうまでは4日続落。今日は一時制限値幅の下限(ストップ安)まで売られ、終値は4300円と初値(8050円)から5割近く低い水準に。
初値倍率が3倍超だったアライドアーキテクツや、メディアドゥ、M&Aキャピタルパートナーズなども総じて初値高騰後は下落基調。
初値倍率が5.1倍に達したカジュアル衣料販売のANAPは初値から約6割値下がりした。
(個別銘柄名などは日経新聞記事から抜粋)
このように、10月以降に上場した16銘柄中、9銘柄が上場来安値となっています。中には、エナリスやホットリンクなど堅調に推移している銘柄もありますが…
また記事には、「上場直後の過熱感が一服すれば、成長性や業績などを元にした選別が進み、人気が二極化しそう」こんなアナリストからのコメントもありました。こんな言葉が出てくること自体おかしいと市場関係者は感じないのでしょうか。なぜなら新規公開時の株価設定が明らかに間違っていると言ってるも同然だからです。
株式投資の基本は、応援することができ、成長が期待できる企業の価値向上を自身の資産増加につなげるものです。それはセカンダリー(流通市場)であっても、プライマリー(発行市場)であっても同じです。IPOだから構わない。どうせ少々高くても、みんなが買ってくれるからそれでいいんだ。こんな雰囲気なのでしょうが、これで良いのでしょうか。
将来のための投資
こんなことを言うと固い奴だ。株式投資なんて儲かれば何でもいいんだ! そんな声が聞こえてきそうですが、本当にそうなのでしょうか。今後、少子高齢化を迎える日本は、ストックのある今の内に投資市場のあり方を変えておかなければ、豊かな未来を迎えることができる可能性がますます小さくなります。
必要なことは、ストックのあるうちに、日本人の個人資産を安定株主としての資本提供へと向かわす割合を増やし、企業成長とともに国民が豊かになる流れを作ることです。株主である国民は企業を応援し、企業価値の向上に期待をしながらも、厳しい目で価値ある企業なのかのチェックを続ける。そんな関係です。
企業も企業です。株価がほぼ間違いなく下落する状態にあるのに、見て見ぬふりをしてとりあえず上場を果たす。上場時から長期にわたる安定株主になってもらうことが、もっとも大きな目的の1つであるはずなのに、そんなアピールもしない。株価が価値あるものだとのアピールもしない。株価が大きく下がることに何の疑問も挟まない。おもちゃにされても平気なM体質なのでしょうか…。
全部とは言いませんが、半分でもIPOに申し込む投資家が、長期にわたる安定株主となるためにIPOに申し込む。このような考えが、常識として日本に根付けば、と思います。いっそのこと、東証が数年間の売却制限を条件にして、その条件を満たす投資家に優先的に公開株を割り当てありすれば良いと思いますが。
25年も終わろうとしていますが、投資について改めて考えてみる。26年はそんな年にしませんか。(執筆者:山副 耕一)