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外貨建て運用が必要な時代に
アベノミクスなどをきっかけとして円安と株高の大きなトレンドが継続しています。しかし、相場の活況とは裏腹に、アベノミクスの持続力について危ぶむ声が多いのも事実です。貿易赤字の拡大や、増え続ける国の借金、少子高齢化…こんな日本の現状の中で自分の財産を守っていくためには、資産の一部を「外貨建て」にしておくことが効果的です。
それでは「外貨建て資産」と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?
外貨預金、FX、投資信託など、簡単に投資できる商品が無数に存在しています。その中でどの商品で運用するのが一番有利なのか? 税金、手数料、安全性の面から検討してみたいと思います。
外貨預金・外貨MMF・FXの比較
1. 外貨預金
税金
為替差益にかかる税金は「総合課税」。給料などの他の所得と合算されて税金が計算されます。税率は所得税+住民税で0%~50%、他の所得が多いほど高率になります。サラリーマンで年収500万円なら20%、700万円なら30%程度が目安です。
手数料
銀行の実店舗など 片道1円
ネット銀行では9銭~
安全性
銀行が破たんした場合、外貨預金は保護されません。「預金保険制度(一人1,000万円までは保護されるという制度)」の対象外となります。
2. 外貨建てMMF
税金 ★一番有利
平成27年末まで:為替差益にかかる税金は「非課税」
それ以降:20%(株式等と損益通算可能。損失は3年間繰越可能)
手数料
片道25~50銭
安全性 ★一番安全
外貨建てMMFとは、高格付で短期の公社債などで運用する投資信託です。よって、取り扱う金融機関の経営状況に関わらず、資産は保護されています。
3. FX(外国為替証拠金取引)
税金
為替差益にかかる税金は「20%」の分離課税。損失は3年間繰り越せます。(株式等との通算はできません)
手数料 ★一番有利
片道1銭程度
安全性 ★注意
投資家の資産は信託銀行で保全されていますが、業者の選択は慎重に行う必要があります。「広告でよく見かける」、「口座増加No.1」などに惑わされないようにしましょう。短資会社や証券会社などが運営しているところが比較的安全でしょう。
4. 結論は…
普通に円を外貨に換えて中長期で大きく為替差益を狙う場合なら、今のところ外貨建てMMFに軍配が上がります。為替差益が非課税になるメリットは平成27年末までですが、まだ2年の猶予があります。それまでに大きく円安になっていれば、一旦解約して非課税メリットを享受するとよいでしょう。
もし円高になり含み損を抱えていれば、持ち続けます。平成28年以降に持ち越すと、株式の損益との通算や、3年間の損失の繰り越しなどが可能になります。
もちろん、有利不利は皆さんの置かれた条件やスタンスなどで変わりますので、上記の比較を参考に検討してみてください。
(番外編)FXの賢い活用法
FX=ギャンブル・投機、などと言った悪評が定着した感がありますが、理性を持って取り組めば、とても大きな効果が期待できます。FXを投機の手段ではなく、中長期の為替戦略として活用することがポイントです。
FXの一番の特徴は、簡単にレバレッジをかけることができる点です。これが諸刃の剣となるのですが、例えばレバレッジ1倍相当の取引をする限り、リスクは外貨預金などと同じです。ロスカットなどの可能性もなく、資産の通貨分散を行えます。
そこからもう一歩進んで、レバレッジ2~3倍程度の取引にチャレンジしてみます。この程度なら、10円20円の変動は十分持ちこたえられ、日々の相場に一喜一憂しなくて済みます。FXで本当に儲かっている人というのは、案外低いレバレッジで長期運用をしているものなのです。
そういう私もこの戦略でかれこれ10年近く、資産運用の主力となっています。(執筆者:坂本 貴俊)