皆さん、こんにちは。今日は「相続対策のプロセス」というテーマで述べたいと思います。
まず相続発生後の手続きに関しては、下記の手順で行われます。
目次
相続発生後の5つの手続き
1. 法定相続人の確定
これは戸籍つまり法律にもとづいて決まりますので、本人や回りの意見・思い等は一切入りません。
2. 相続財産の確定
被相続人名義の財産の確定です。この時、税務調査等では不動産は余り問題になりませんが、問題になるのは名義預金です。つまり預金の名義は別人(家族等)になっているが、実質の所有者は被相続人ではないか? と見なされるわけです。相続税の税務調査では、必ず調べられますので、注意してくださいね!
3. 相続財産の分割
相続で一番トラブルが起きやすい問題です。遺言書や遺産分割協議書で分割する前の相続財産は、相続人全員の共有財産と見なされます。
4. 相続税の算出・納付
一般的には税理士に依頼して相続税の申告書を作成してもらい、申告書を提出すると同時に、相続税を納付します。提出・納付の期限は、相続が発生してから10ヶ月以内です。
5. 相続財産の取得
被相続人の名義である財産を、遺言書又は遺産分割協議書にもとづいて、各相続人に名義変更する、つまり相続人にとってみれば、相続財産を取得する事です。
以上から、相続対策とは、上記の相続の流れを阻害する障害を事前に取り除き、スムーズな財産の移転を目指す事をいいます。その為、相続対策を考える時は、下記の項目・流れに沿って、具体的に検討する事になります。
相続対策の3つのプロセス
1. 遺産分割対策
どの財産を、誰に、どのようにして残すか? という事です。一般的には遺言書の作成が最も効果的である、とされています。
遺言の種類としては、普通方式では自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書の3種類があります。この中で、一般によく使われるのは、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
(1) 自筆証書遺言
これは遺言者が、遺言書の全文・日付・氏名を自書し押印する事で成立するもので、証人や立会人は不要で、費用がかからず手軽に、又秘密できます。但し相続発生後、家庭裁判所の検認が必要で、相続人等が勝手に開封してはいけません!
(2) 公正証書遺言
これは、証人2人以上の立会いの下で、遺言者が公証人に遺言の趣旨を述べ、公証人がこれを筆記して遺言者・証人に読み聞かせ、遺言者・証人がチェックした後、署名押印し、公証人が 法律にしたがって作成された旨を付記して、署名押印します。家庭裁判所の検認は不要ですが、費用と手間がかかり、又内容を秘密にできません。
通常、一時相続(父親死亡時)の場合は、配偶者(母親)がいる為、相続分割で余りトラブルはありませんが、よくトラブルになるのは二時相続(母親死亡時)の時です。というのも、昔は家督・長男制がありましたが、現在の民法では、子供は長男だろうが次男だろうが、男性だろうが女性だろうが、法の前では全て平等であるからです。
もし自分が死んでから、相続で何らかのトラブルが予想される場合は、ちゃんと遺言書を書いて残しておくべきですよ!
2. 納税資金対策
案外見落とされがちなのが、相続税をどのようにして納付するか? という納税資金対策です。公平性、又は少しでも多く財産を貰いたい、この事だけに熱中して遺産分割すると、肝心の相続税をどうやって払うか、という基本的な問題でつまずきますからね。
例えば、ある相続人が少しでも多く財産を貰いたい為、多額の不動産を相続したものの、現預金が少なく、結局相続税が払えないという事は多々ある事です。
この場合は、延納・物納を検討するか、遺産分割対策に戻って、再度遺産分割のやり直しをするか、という事になります。
3. 節税対策
通常よく言われる相続対策はこの事を指す場合が多いですが、相続財産そのものの評価額をいかに少なくするか? 又は各種特例が適用できないか? 等を検討して、相続税額を少しでも 少なくできないか? を考える対策です。
以上、このプロセス(順番)は重要ですよ!
よく相続対策と言うと、節税対策だけがクローズUPされてますが、遺産分割対策 → 納税資金対策がしっかりできてから、考えるべき問題ですからね。
なぜなら遺産分割が決まらないと、各自の相続税の計算もできません → 相続税の全体の額も不明になりますし、もし相続人の誰かが相続税が支払えない状況になると、相続税の支払いは連帯納付義務ですから、相続人全員で支払う事になり、又遺産分割のやり直しになるからです。
順番を間違ってはだめですよ! 以上が、相続対策のプロセスです。どうですか? 相続が発生した時の手続き・相続対策のプロセスが、少しはつかめましたか? 特に、今年決まった税制改正の影響で、H27年1月1日から相続税の基礎控除が引き下げられる為、今は自分にとって関係なくとも、いつ関係してくるか分かりませんから、決して他人事ではないではないですからね! 今日は、ここまでです。(執筆者:大川 正吾)