住宅金融支援機構発表の、2013年10月の『希望する住宅ローンの金利タイプ』の調査結果によれば、住宅ローン利用予定者のうち、変動金利を希望する人の割合は26.6%であるが、同月の民間の金融機関で借りられた住宅ローンのうち、変動金利の占める割合は47.0%であった。
前回調査(2013年6月)でも変動金利を希望する割合は24.8%であるものの、同月に変動金利を選択した利用者の割合は44.6%であり、変動金利を選択する人の割合は長期金利の低下により一時期より割合は減ったものの、現在でも4割程度と、最も多く利用されてる商品である。
筆者は不動産業者であるが、周囲のハウスメーカーや不動産会社の担当営業マンは顧客に対し、一番安い変動金利を薦め、その低金利で資金計画を立てているのをよく見受けられる。
現在の都市銀行の多くが提供する変動金利商品の店頭金利は2.475%(平成26年5月現在)であり、最優遇金利は1.7~1.75%である為、実質0.775%~0.725%、史上最低の金利である。月々の支払いが安ければ購入のハードルは下がるが、注意されたいのは、変動金利はこれ以上下がる余地はほぼない為、毎月の返済計画を立てる際には用いらない方が良いという事である。
変動金利は毎月3月と9月の短期プライムレートを基準に4月と10月に決定する銀行がほとんどであるが、この短期プライムレートは現在の政策金利である無担保コール翌日物金利(分かりやすく言うと銀行が他の銀行から今日借りて明日返済する金利) に連動させている。
現在の無担保コール翌日物金利はおよそ0.07%程で推移しており、連動する短期プライムレートは1.475%である。住宅ローンの変動金利はこれに1%上乗せしたものである(金融機関による)。
この短期プライムレートは、日銀ゼロ金利政策により無担保コール翌日物金利がほぼゼロであった2001年から2006年の間でも1.375%であり、当時の変動金利の店頭金利は2.375%であった。したがって、店頭金利は2.375%よりも下がる可能性はほぼ無いのである。
現在は最優遇後の実質金利が0.775~0.725%であるが、2001年から2006年当時は現在程の金利優遇は無かったため、現在の方が実質の変動金利は低い。尚、現在の再優遇金利である0.775%利息(金利)の中には調達コストのほか、団体信用生命保険料等も含まれるため、銀行の利益はほぼ0に近い水準である。
ちなみに、バブル崩壊後で変動金利が一番高くなったのは、リーマンショック前である2007年であるが、この時の無担保コール翌日物金利は0.497%であり、当時の短期プライムレートは1.875%、変動金利は2.875%であった。
今後の変動金利がどの位の水準で推移していくかは、日銀の政策によるが、上場企業の2014年3月期の業績がリーマンショック前の水準に近づくなか、今後上昇する可能性は充分にある。これから住宅ローンを借りる人や現在変動金利を選択している人は、現在の低金利がいつまでも続かない事を念頭に、余裕をもった資金計画を立てるべきである。(執筆者:櫻井 定治)