贈与税について勘違いしていたために、あとで多額の相続税がかかってしまうことがあります。正しい知識で、あげる人ももらう人もHappyな生前贈与をしましょう。
「あげたつもり」は贈与にならない
房江さん(60歳)は、相続対策のつもりで、長女の香織さん(30歳)には内緒で、毎年110万円を香織さん名義の通帳に預金していました。香織さんはそのことを知らず、通帳や印鑑も母の房江さんが持っています。
10年後、房江さんが亡くなりました。香織さん名義の預金1,100万円は、実質的には房江さんの預金であるとして(これを「名義預金」といいます。)、相続税の対象になってしまいます。
贈与は「あげますよ」、「もらいますよ」というお互いの意思疎通があってはじめて成立するものです。房江さんのように「あげたつもり」では残念ながら贈与したことにはならないのです。
贈与を受けた香織さんが、贈与されたお金を自由に使える状態になっていなければ、贈与したとはいえません。したがって、通帳や印鑑は、贈与した人(親・祖父母)ではなく、贈与を受けた人(子・孫)が管理するようにしましょう。
「贈与の証拠」を残す方法
相続の時に税務署から名義預金と認定されないようにするには、たとえ親子や夫婦など親族の間であっても、贈与が成立しているということを証するために、「贈与の証拠」を残しておくことが大切です。
具体的には、上記の「通帳・印鑑の管理」のほかに、
2. 贈与は現金ではなく振り込みで行う
3. 贈与税の申告をする(基礎控除額110万円を超える贈与を受けた場合)
の3点に気をつけましょう。
あえて基礎控除額110万円を少し超える金額の贈与を受けて、贈与税の申告・納税をすることにより、贈与の証拠を残しているという方もいます。ちなみに、111万円の贈与ならば、贈与税は1,000円です。120万円の贈与ならば、贈与税は1万円です。(執筆者:内田 麻由子)