遺言書をつくるというと、すぐに公証役場に行こうとする人が多いのですが、ちょっと待ってください。
公証役場の役割は、法的に瑕疵のない遺言書を作成し保管することだけです。公証役場では、税金の対策や、家族がもめないためのコンサルティングは、一切してくれません。公証役場は、遺留分を無視して「すべての財産を〇〇へ」という遺言書も、「これでどうやって税金を払うの?」と首をかしげたくなる遺言書も、本人が「作りたい」と言えば、そのとおりに作ってしまいます。
いちばん賢い遺言書のつくり方は、次のとおりです。
目次
いちばん賢い遺言書作成の手順 4ステップ
<ステップ1>
遺言書を作るときには、自分一人の考えで決めてしまわずに、家族とよく話し合いましょう。よかれと思って書いた遺言書が、相続人の実情にマッチしておらず、結局は遺産分割協議をすることになるケースもままあります。
<ステップ2>
その上で、まずは、相続に詳しい税理士に相続税の試算をしてもらい、相続税の納税や節税、二次相続までを考慮した内容にすることが賢い方法と言えます。
<ステップ3>
次に、相続に詳しい弁護士や行政書士に相談しながら、家族の状況をよく勘案して、争いにならない遺言内容にしておくことが大切です。特に、遺留分に配慮することと、付言として財産分けの理由や家族への感謝の気持ちを記すことは重要です。
<ステップ4>
最後に、遺言書の紛失・偽造等を防ぐため、専門家に相談して決めた遺言内容を持参して、公証役場で公正証書遺言を作成します。
※参考
遺言には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。自筆証書遺言は、「作るほうはラクだが、もらうほうは大変」です。一方、公正証書遺言は、「作るほうは手間がかかるが、もらうほうはラク」です。
自筆証書遺言
遺言者が全文を自筆で作成します。自分一人で作成でき、費用もほとんどかからない反面、些細なミスによる形式の不備で無効になってしまったり、保管場所がわからず発見されなかったり、紛失・偽造・隠匿などのおそれがあります。また、家庭裁判所の検認が必要となるため手間がかかります。
公正証書遺言
公証役場に出向き、遺言者が口述したものを公証人が筆記して作成します。証人2人以上が必要で、公証役場に支払う費用がかかる反面、形式の不備により無効となることはまずありません。原本が公証役場に保管されるため、紛失・偽造・隠匿の心配もありません。家庭裁判所での検認も不要です。(執筆者:内田 麻由子)