目次
1. ラップ口座が人気
日本の金融資産構成は非常にいびつだ。60歳以上の人が金融資産総額の60%近くを保有している。退職すれば、突然1000万円単位のお金が銀行預金に入り、「お金が増える方法を考えないと…」となるわけだ。
日銀の金融緩和の影響で、円安・株高の流れができ、インフレ懸念も出てきている中、投資の必要性は理解していても、いざ自分で投資商品を選ぶとなると悩みはつきない。
そんな団塊世代の悩みを一気に解消できる術ということで、「ラップ口座」が急激に口座数を増やしている。ラップ口座主要4社(野村証券、大和証券、SMBC日興証券、三井住友信託銀行)の残高は、9月末で2兆円を超えた。
2. ラップ口座とは?
ラップとは、サランラップやクレラップのラップと同義語であり、英語のWrapが語源の「包む」の意味。複数の金融商品を包みこみパッケージ化した口座のことを「ラップ口座」という。証券会社と「投資一任契約」を結び、相談の上基本方針を決定し、実際の商品選定や売買判断を金融機関の専門家にゆだねる。
ラップ口座を運用する専門家は、国内外の個別株・債券、投信、REIT、金、オプションなどを組み合わせて分散投資を行う。当然投資のプロと言われている専門家が運用するので、個人で運用するより利益が上がりやすいであろうと想定する方が多いだろう。
投資で利益を上げる一つの方法として「売買ルールを決める」という方法がある。
例えば、投資額の20%超になった時に利益を確定させて、10%以下になれば、損失を確定(ロスカット)させるなどのことだ。ラップ口座では、この売買ルールを決めることもできる。サービスが始まった当初は、数千万円~億単位だった最低投資金額も、現状300万~500万円程度に下がっている。
3. 注意すべきは、投資コストだ!
投資のプロによる分散投資、タイミングを逃さない売買ルールの設定、最低投資金額の引き下げなど、ラップ口座のメリットがある半面、気を付けたいのが投資家が負担するコストだ。具体的には、投資残高に応じてかかる手数料と投資顧問料など。
金融機関はあまり公にコストの内訳や負担率を公表しないが、投資残高に対し、年間コストは4%~5%。1000万円をラップ口座に預けると、年間40万円~50万円ものコストがかかるわけだ。
ラップ口座と同じように分散投資されたバランス型インデックスファンド(株式や債券、REITで構成)に1000万円投資した場合、信託報酬が0.6%弱ですので、年間コストは6万円弱ほど。
ラップ口座の運用とバランス型インデックスファンドは、同じような分散投資の運用スタイルであったとしても、年間に支払うコストとして、大きな差が生じるのだ。
金融商品をよく知る人は、決してラップ口座を利用しない。(執筆者:釜口 博)