相続の相談をはじめ、不動産の売却、購入の相談をいただく際、自身が想定する「不動産の評価」と実際の不動産の評価が異なり、戸惑われる方が多くいらっしゃいます。
以前にもお伝えしたように不動産の評価は「1物4価」と言われますが、私は、常日頃、厳密には「1物5価」であると主張しています。
「1物4価」とは、相続税路線価、公示(基準)価格、固定資産税評価額、時価(不動産鑑定評価額)を指しますが、「1物4価」とは、これに「時価(市場流通価格)」を加えます。このような事を言っては、世の不動産鑑定士の方々には怒られてしまうかもしれませんが、理解のある不動産鑑定士の方には、賛同いただいています。
不動産鑑定評価と市場流通価格の違い
不動産鑑定評価とは、不動産鑑定士の独占業務であり、不動産の評価を行うにあたり、法で定められた評価方法により、国家資格者である不動産鑑定士のみが、唯一、有料で行うことができる評価です。
蛇足ですが、よく、インターネットやチラシ等で、不動産業者が「無料査定」等とありますが、逆に有料では行えません。「無料」で行ってもらったから…といって「申し訳ない」気持ちになる必要はありません。そもそも自身の大切な不動産が幾らで売れるのかが分からない状態では、売却するか…の意思判断ができるわけがないのですから。
そして、市場流通価格とは、簡単に言えば、成約価格です。不動産売買は当然として、契約なわけですから、売りたい人がいて、買いたい人がいるわけです。買いたい人がいるからこそ、売りたい人は、その価格で売ることができます。
つまり、所謂、相場と逸脱した価格であっても、どうしても買いたい方は、買いますし、買わない方は買わないのです。不動産鑑定評価は、周辺の取引相場をベースに様々な要因を根拠として評価の増減が客観的になされます。
一方、市場流通価格は、上記のように人の感情によって、大きくその振れ幅が生じてしまうことが多々あること等からも時価という1つの定義においても、不動産鑑定価格と市場流通価格の2種類に分類できると言えます。
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相続における不動産の価値は?
さて、本題の相続という分野における不動産の価値は、上記の内のどれが当てはまるのでしょうか…。
答えは、そのシーンによって異なります。
例えば、相続と聞いて、多くの方が頭に浮かべられる相続税では、どの価格を使うのでしょうか。
実は、相続税法上は、「時価」と記載があります。そして、相続税には、国税庁からの財産評価基本通達という内部マニュアルが存在し、この内部マニュアルの中で、市街化区域においては、相続税路線価を用いて評価するような内容となっています。そして、建物については、固定資産税評価額を用いることになっています。
しかし、これはあくまで相続税といった観点からの評価であり、例えば、「争族」等と揶揄されるように遺産分割で揉めてしまっている場合などにおいては、審判などにおいて用いられるのは、不動産鑑定評価となります。また、例え、揉めてしまっていても、相続人同士が互いに弁護士を立てながら協議する際などにも不動産鑑定評価が利用されます。
また、円満に分割協議ができる場合は、不動産業者による無料査定を利用して土地の評価を行い、その評価額をベースに遺産分割することがあります。中には、上記のように相続人が弁護士を立てあっているような場合でも、複数の不動産業者の無料査定サービスを用いて、平均評価額を財産評価とするケースもあります。
以上のように、1つの分野においても、用いられる価格が沢山あり、難しいのが不動産の評価というものです。尚、売買の際の、不動産価格の評価に興味がある方は、以前の記事もご覧いただければと存じます。(執筆者:佐藤 雄樹)