ようやく春らしく気候となり、日中はスーツ姿でいると、早くも少し汗ばむような季節へと変わる気配を感じる昨今ですが、相も変わらないのが、相続相談の圧倒的な件数ではないでしょうか。
私が理事を務める東京都相続相談センターにおきましても、インターネットからの反響はもちろんのこと、月に平均5~6回の相談会等を開催していますが、毎回、結構な数のご相談を頂戴します。
その中で、今回のコラムのテーマは、あえて書かせていただきたいテーマです。
感情的な説明は時間の無駄になることも
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私達、相談員は相続のプロでありますが、別にボランティアでもなく、やはり限られた時間でスケジュールを調整した上で、皆様のご相談にのっているわけです。
その限られた時間の中で、最も相談者の方にとってパフォーマンスの高い回答をし、また、ご提案等を行うのが使命ではあるのですが、相談の流れによっては「?」となり、きちんとした回答ができず、困る場合があります。
それは、相談の仕方が「上手な方」と「上手でない方」に分けられます。
「相談なんだから、自分の相談したい内容を相談したいように相談すれば良い!」という方がいらっしゃいます。
とかく、相続のお話は、肉親との話であり、そこには、生まれてから今に至るまでの様々な歴史が有るので、ご自身にとっては、理解されていますが、初めてお会いして伺う相談員としては、まったく頭に入りません。
そして、他の相続人と揉めていたりする方は、かなり感情的になっているので、感情的なお話も多く、他の相続人の悪口のオンパレード状態の事もあります。
当然、我々も、そのあたりは心得ているので、ある程度は、耳を傾けますが、そもそも、その感情的なお話しの中で挙がる「○○!」が、法定相続人なのか、どんな関係者なのかも、全く知らないため、あまりにも多数の方のお名前が挙がると、「そんなに相続人がいるのか…」と不安になりますが、実際に後々、確認すると、相続人は1人か2人…等といったこともあります。
遺産についても同じことで、「あそこのビル」とか「こっちのアパート」とか、「そこの家」等と言われてことがありますが、そもそも、どの物件を指すのかもわからず、ようやく頭の中で整理ができ、図示しながら確認すると、最終的には、法人名義でお持ちの資産だったりすることもあります。
つまり、長々と時間を駆けて説明いただいても、相談を伺う相談員である私達から見ても「核心的な部分」は何もつかめず、常に「?」だらけですし、数時間もひたすら話し続けてきた相談者のご本人からしても、「数時間も説明しているのに、なんで、この相談員は何も理解していないんだ!」…となるわけで、極めて無駄な時間としか言えません。
この手の場合、相談員がどんなに一生懸命、伺おうとして「それで、先程の○○の件ですが…」と質問すると「さっき、言ったじゃない!」と憤慨される方が顕著にみられます。
確かに、選択肢を迫る相談したい時等は、選択肢から選ぶことが目的なので、その目的である選択肢の説明から入ってしまいがちで、最も大切な部分が欠けていたり、「そうそう、そういえば…」的に大切な部分のお話や、個人名などが挙がってしまうと、相談員としては、頭の中で、繋がりません。
上手に相談内容を伝えるポイント
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それでは、どのような形で相談をすればよいのかというポイントを挙げますと、
Ⅱ)相続財産を明示する(所在・権利者・利用用途・背景…等)
Ⅲ)相談、解決したい内容の相談
であり、この手順で進めるのが、双方にとって、非常に有意義であり、大切なポイントです。
まず、相談員は、家族構成等を伺うことにより、所謂「家系図」をイメージします。そして、どのような財産があり、それらを相談者の方のご意見・ご希望を承りながら、どのような対策・手続きを行っていくべきかを、イメージします。
そして、そのうえで、相談者の方を含め、関係者の方々のエピソードを伺い、各々へのご意見等も踏まえながら反映させますので、やはりこちらの手順で進めるべきですし、相談者の方の口から出てくる「親族の方のお名前」、「財産」等も理解した上での相談になりますので、頭の中で整理もできます。
一見、相談したいことの結論を早く出したいがために、
上記Ⅰ)、Ⅱ)の説明は後回しで、Ⅲ)から説明し、思い出したように、所々でⅠ)、Ⅱ)を散りばめながら相談される方がいらっしゃいます。
しかし、「急がば回れ!」で、まずは、Ⅰ)、そしてⅡ)、最後に自分の希望や相談のⅢ)とすることにより、頭の中も整理され、抜けの無い相談となり、結果的に無駄な時間もかかりません。
むしろ、相談者にとっても、相談員にとっても効率的でお互いがお互いの状況や理解度を再確認し合うこともできるので、相談員からは好評ですし、やはり、相談員自体も、そのご相談への理解が深まることにより、より、確実であったり、更には、より良い対応策等を提案しやすく、双方にとって好ましいのではないでしょうか。(執筆者:佐藤 雄樹)