5月11日、東京証券取引所の主役に躍り出たのは、証券コード6502の東芝でした。
その理由は、5月8日(金)に発表された粉飾会計疑惑によるもの。結果、売り圧力が強まり、ストップ安の403.3円(前日比-80円)で11日の取引を終えました。
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目次
東芝の疑惑とは
東芝は4月3日の時点で、2013年度の単体決算で受注案件費用の不正見積もり問題の可能性を表明。そのため社内に特別調査委員会を設け調査にのりだしていました。しかし、「問題はそれだけじゃなさそう…」というのが、5月8日発表の内容です。
簡単に言うと、受注案件費用の不正見積もり以外にも問題がありそうなので、調査対象を広げます、ということ。それで、今まで社内特別調査委員会が行なっていた調査を、外部の専門家だけで構成される第三者委員会が行なうことになりました。
火のないところに煙は立たないですからね。少なくとも「一部の案件で費用が過少に見積もられた問題が判明した」と、ロイターは報道しています。
思い出すオリンパス事件
今回の “東芝事件” のニュースを聞いて思い出すのが、2011年に起こったオリンパス事件。この事件の過程と内容はかなり複雑で詳細を記すことは難しいのですが、簡単に言うと…
菊川会長:なーに言ってんだ? 俺は何も悪いことしとらんで。おまえがやめんかい(怒)
ウッドフォード社長:そうですか。じゃあ、訴えますよ!
…という感じ。(※役職はすべて当時のもの)
オリンパスは長期にわたり損失隠しを行ない、就任して間もないウッドフォード社長がその問題を指摘。最後は上場廃止の瀬戸際までオリンパスは追い込まれた格好となったわけですね。
誤解しないでいただきたいのは、東芝もオリンパスのようになるとか、東芝にも長期間にわたっての不正会計があると言っているわけではありません。今のところ、東芝は淡々と冷静に事を進めているという印象ですが、問題がどれほどの程度なのかは未だ不明です。
14年度の決算発表は6月以降になる予定ですから、事実の全貌が解明となるのに1カ月は要するかもしれません。
今後の東芝と株価の展望は?
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画像にあるように、5月11日(月)の東芝株価は急落。前日比-80円のストップ安、403.3円で取引を終えました。この流れはある程度続くと考えられます。その理由として挙げられるのは、
・期末配当無配に
・信用買残りが多い(14倍台)
という点。
信用倍率が14倍台ということは、東芝株を信用買いしている人が売っている人より14倍多いということ。例えば、信用買いの多くの人が480円ほどで買っているとしましょう。株式単位は1000株ですから、48万円で買いつけているということになります。
48万円で買った株が、5月11日終値の時点で40万3千円ほどになってしまっているわけですね。東芝株を持っている人は、値があるうちにとにかく売りたいという心理になりますから、売りが膨らむことに。しかし、買い手より売り手のほうが多いわけですから、株価が下がりやすい状況になるということです。
東芝の不正会計処理の全貌が明らかになるまでは株価が下へ下へと行きやすく、東芝株を保有している人は眠れない日々が続くかもしれません。
今回の東芝事件から学べる教訓とは
(1) 株を買わない勇気が投資家には求められる
今回は4月3日の時点で “氷山の一角” が姿をあらわしたわけです。ですから、それ以降に株価を買ったとしたなら、それは投資ではなく投機に近い取引だったと言わざるを得ません。
会計不正処理の可能性が取り沙汰されたということは、少なくとも東芝への信頼が揺らいだわけですから、そのような株を買わない勇気。投資家に必要な態度だと思います。
(2) 社長を含めた会社自体の誠実さを見る
今回の東芝株の全貌はまだ不明ですが、多少なりとも不正があったのは事実のようです。どのような成行きで不正に至ったのかはわかりませんが、会社自体に不正があったというのが事実だとしたら、その会社の株を買いたいとは思いません。
投資家が株を買うとき、会社とその経営陣の誠実さを見て取る必要があると、今回の東芝事件を通してあらためて感じさせられました。株を長期で保有したいと思うなら、一度は株主総会に出席し、経営陣の姿を直で見てみるのは一つの手だと思います。人の誠実さってすぐに伝わりますよね。
信頼を失うのは一瞬ですが、信頼を取り戻すためには時間と行動が求められます。まずは、今後の展開を見守る必要がありますが、東芝の経営陣がどのような真摯な態度と誠実さを見せていくのか。注目です。(執筆者:堀 聖人)