先週で決着するかと楽観的な雰囲気もあったギリシャ問題。しかし、ギリシャと債権団(EU/欧州連合、ECB/欧州中央銀行、IMF/国際通貨基金)の溝が深まり、支援交渉がまとまらないまま6月30日の債務返還期限を迎えるかもしれません。
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目次
先週の債権団とギリシャの交渉まとめ
先週までの経緯を対話式にすると、こんな感じです。
チプラス首相(ギリシャ):え~、これ以上なにを減らせと言うんですか?
債権団:年金支給の年齢を引き上げること! レストランの税率を上げること!
チプラス首相:オーノー! これ以上国民の負担を増やすわけにはいかんですよ。国会も納得しませんて。
債権団:言い訳は無用。いままでギリシャさんは財政改革の約束をきっちり果たしてないんですから。財政支援再開をお望みなら、改革案を法案として成立させることが条件です。
チプラス首相:ぷっ、きびしいっすね~。財政改革はしっかりやります。国会も説得しますから。金融支援をお願いしますよ~。
債権団:ならば、年金支給年齢の引き上げとレストラン税率の法案をまとめなさい!
チプラス首相:なんすかその態度は? 合意する気なんか全然ないんじゃないすか? まったく。じゃあ、こうしましょう。7月5日に国民投票で国民の真意を問いますから。国民が納得するなら財政改革、やりましょ。それでいいですね?
債権団:はっ? 7月5日? 返済期限は6月30日ですよ? 6月30日までに返済しないならデフォルトですよ、デ・フォ・ル・ト!
金融支援の獲得を模索するギリシャに対し、不信感を募らせ断固として財政改革を迫る債権団。この溝が埋まらず7月になると、ギリシャのデフォルトの現実味が一段と増すことになるでしょう。
ギリシャがデフォルトしたときの対処法
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ギリシャがデフォルトとなれば、円高と株安が起こる可能性が高いでしょう。
各アナリストの意見をまとめると、ギリシャがデフォルトならユーロ離脱も視野に入るため、ドル円は122円台か、場合によっては120円台まで円高が進むというのが主な予想です。
日経平均は、少なくとも500円以上の株安。状況次第で1000円近い下落もあり得る、という声があります。こういうときは往々にして悲観的な予想が出やすいのですが。
筆者はそこまでの下落はないのではないかと見ています。市場は「ギリシャがデフォルトになるかも」という心の準備ができており、パニック売りのような事態に発展することはないと思われますので、
・ドル円122円台まで円高進行
・日経平均は500~600円の下落
くらいかなと。ただし、デフォルトによって円高急進・日経平均急落となったとしても、一時的なものになると予想します。
ギリシャが債務不履行になり、比較的安全資産とされる日本円へ資金がまわったとしても、それが世界金融危機に発展する可能性はほとんどないと思って良いでしょう。
サムライ債(ギリシャの円建て外債)の償還が期待できなくなるという実質的な影響があるのは確かです。しかし、全体的に見ると日本への影響は限定的になるでしょうから、ギリシャがデフォルトなら押し目買いのスタンスで良いと思います。ただし、買いのタイミングだけは慎重に。
忘れていけない米・雇用統計
市場の焦点が一気にギリシャに集まってしまっていますが、7月2日(木)発表の米・雇用統計を忘れてはいけません。
米の利上げ時期は9月という予想と、12月にずれ込むという二つの意見が交錯しています。米利上げ時期を見極める上で、米・雇用統計は非常に重要な指標となります。雇用者数がどれほど増加するか。失業率に変化はあるか。この2点をしっかりチェックしたいところです。
ちなみに、今回の6月分米雇用統計発表は、金曜日ではなく木曜日です。毎月第一金曜に発表されるのですが、翌日3日(金)は米国市場が休場のため1日早く発表されます。お間違いのないように。(執筆者:堀 聖人)