子をもつ親にとって子どもの成長は何ごとにも代えがたい喜びですが、一方で子どもの成長にともなって頭を悩ませるのが教育費です。教育費は住宅資金、老後資金とならぶ人生の三大資金の一つとされる大きな支出ですが、今回はその教育費で失敗しないためのポイントについて書いてみたいと思います。
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目次
教育費はいくら掛かるか?
そもそも教育費はいくらくらい掛かるのでしょうか?
幼稚園~高校までの教育費の目安としてよく引用されるデータが文部科学省が実施している「子供の学習費調査」です。調査結果は文部科学省のHP上で公開されているので誰でも閲覧することができますが、平成24年度の調査結果によると、幼稚園から高校まで全て公立に通った場合の総額が約504万円、全て私立に通った場合だと総額は約1678万円になります(学校外活動費含む)。
また平成26年度「学校基本調査」によると、高校卒業者の大学進学率は48.1%、短大・専門学校も含めると進学率は70%超となっています。大学4年間に掛かる費用も様々なデータがありますが、生活費も含めると自宅から国立大学に通う場合で約500万円、下宿で私立大学に通うとなると大体1000万円前後は掛かっています。
但し、こういったデータはあくまで全国平均値であり、実際に掛かる費用は地域や通う学校によって違ってきます。平均データは目安として参考にしながらも、現実的な選択肢や可能性を考慮しながら、より具体的な情報を個別に調べていくことが重要になります。
学費などは学校のHPで簡単に調べられますが、一番いいのは入学を予定(検討)している学校に実際に通っている家の親御さんに生の情報をもらうことです。学費以外にも様々な費用が掛かる場合があるからです。大学の場合は、実際の学生の生活費などが大学や大学生協のHPに掲載されていることもあるので要チェックです。
教育費の準備はコツコツ時間をかけて
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上記のとおり教育費の総額はかなりの金額になりますが、教育費の特徴として言えることが
「必要な時期が確定している」ということです。教育費の中でも最も大きいのが大学費用ですが、子どもが生まれたら18年後には(おそらく)高校を卒業します。そのときまでに大学進学時に必要な資金を貯めるなら、少しずつであってもなるべく早く始めることが大切です。
月々1万5千円を18年間にわたって積み立てていくと324万円貯まります(利子分は除く)。しかし小学校を卒業して13歳からの6年間で同じ金額を貯めようとすると、月々4万5千円も積み立てないといけません。準備は早く始めた方が楽です。
学資保険はどう選ぶ?
教育費の積立に学資保険を利用する方も多いと思います。保険の場合、毎月必ず保険料が引き落とされる上、払い込んだお金は簡単に引き出せないので確実に貯めやすいというメリットがある一方で、途中で解約してしまうと払い込んだ保険料よりも少ない金額しか戻ってこないというデメリットもあります。
また保険会社や保険の種類によって、返戻率(利率)重視のタイプもあれば保障重視のタイプもあり、大学進学時に一括でお金を受け取るタイプもあれば、中学・高校入学時など複数回に分けて受け取るタイプもあります。
目的に合ったタイプの保険を選び、無理なく続けていける保険料で加入することが大切です。もちろんご自身でしっかり積立ができる人は必ずしも学資保険に加入する必要はありません。
家を買う前にライフプランを
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子どもが小学校に上がる前後に住宅の購入を考える人も少なくありません。このとき当初の住宅ローン返済額と現時点の生活費だけを見て「これならなんとかやっていけるだろう」と多少高めの物件を購入しようとするケースを何度も見たことがありますが、
将来上昇していく教育費のことを考慮していないと、後になって家計が苦しくなる可能性があります。
さらに住宅ローンの金利が変動金利や短期固定金利の場合は、将来金利が上昇すれば月々の返済額が増えるリスクもあります。家を買う前に将来的な家族のライフプランと家計のキャッシュフローを確認しておくことが大切です。
お子さんに兄弟姉妹がいる場合は、資金が必要になるタイミングにも注意が必要です。双子や3歳違いの兄弟姉妹の場合、中学、高校、大学の進学が同時になり、一時的に大きな支出になります。
こどもへのお金の掛け方をよく考える
子どものためにはできる限りのことをしてあげたいと思うのが親心です。でも一般的な家庭の場合、掛けられるお金には限りがありますから、その掛け方はよく考える必要があります。
筆者も子どもが生まれたときはかわいくて仕方なくて、デパートで(大人の服よりも高い!)子ども服を買ったり、デザインがかわいい少し高めのおもちゃを買ったりしましたが、今思えば子どもが望んだわけでもなく、完全に親(自分)の自己満足で、それよりも子どもが成長して自分でやりたいこと、欲しいものを見つけたときに使った方がよかったかなと思ったりもしました。
また最近は習い事や学習教材も様々なものがあり、幼児期の習い事に高額な費用を掛けている話もよく聞きます。もちろん幼児期の教育や体験はとても大切なものだと思いますが、それによって将来の教育費の準備ができなくなっては困ります。将来必要になるお金とのバランスは考えておく必要があると思います。
親の健康とリスク管理
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筆者が毎年進学資金の講演をさせていただいている高校で、学校の先生が保護者の方々に必ずお伝えされていることがあります。それは
「保護者自身が健康を大切にしてほしい」ということです。その先生のお話では、
保護者の方が体調を崩されて仕事を続けることが難しくなり、その結果家計が苦しくなって進学をあきらめざるをえなくなった生徒を何人も見てきたとのことでした。
確かに子どもが進学するためには親が元気に働いてお金を準備しなければなりません。先生のおっしゃるとおり親の健康管理はとても大切なことだと思います。とはいえ、いくら健康に気を付けていても病気やケガのリスクを無くすことはできません。ある程度収入が減少(停止)してもやっていけるだけの貯蓄を備えておく、あるいは保険でカバーするなどリスク管理もしっかり考えておきたいものです。
教育費は必要な時期が確定していると書きましたが、それは準備がしやすい半面、先送りができないということでもあります。必要な金額は選ぶ進路によって大きく違ってきますが、計画的な準備が必要なことには違いありません。そのために今回のコラムが少しでもご参考になれば幸いです。(執筆者:長尾 真一)