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実現望まれる「シッター代所得控除」
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「少子化対策」、「女性の活用促進」、「労働力確保を通じた経済成長促進」は、日本経済の成長という大きな観点のみならず、私達の日々の生活、そして安心して過ごせる老後生活を守るための大切なテーマです。
そのためにも、出来るならば、子供ができても働き続け、子育てと共働きを両立させたいと願う女性は多いでしょう。しかしながら待機児童の問題はいまだに解消されません。
このたび、厚生労働省が仕事と家庭を両立し、女性の活躍を促進する等の観点から、ベビーシッター等の子どもの預かりサービスを利用した際の費用の一部について、税制上の所要の措置を講ずる旨、税制改正要望に盛り込みました。
ベビーシッター費用に対する税制措置は海外ではすでに制度化されている国がいくつかあり、私が住むフランスでも税制特典があります。フランスといえば先進諸国の中でもトップクラスの出産率を誇る国です。それにもかかわらず、夫婦共働きの家庭が多いのは、このような子育て費用に関する税制支援があることが少なからず貢献しているのかもしれません。
フランスの「シッター」に関する制度
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フランスの当制度を簡単に説明しましょう。
6歳以下の子供を託児所に預けた場合の支出のみならず、シッターなどで個人が個人を雇用する場合の費用を税額控除の金額に組み込むことが可能です。
後者の『個人が個人を雇用する場合』は、給与支払い(シッター代)は当然のことながら、被雇用者(シッター)に対する社会保障も払います。もちろん雇用契約も交わします。
しかしながら一般人が雇用契約や社会保険の計算をするのは実に面倒。そのため、個人間雇用契約の締結、社会保険料の計算、確定申告時の税額控除額計算を行ってくれる専門の公的機関が存在するのも、シッター利用者が多い要因のひとつでしょう。
『特定支出控除』の利用と課題
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さて、日本では、早ければ来年度の所得税法の一部が改正がされるというこの制度。今回の税制改正要望では、ベビーシッター等の子供の預かりサービス費用を所得税の『特定支出』項目に加える方針のようです。
所得税の『特定支出控除』とは、給与所得者が利用できる会社や自営業者の『必要経費』のようなもの。給与の支払者から補填されずに自費で負担した通勤費、転居費、資格取得費や、勤務のために着用する衣服代、交際費など税法で定める範囲内の仕事上で必要とされる支出が該当します。
これらの年間支出合計額が給与所得控除額の1/2を超え、確定申告をすることで特定支出控除が利用できます。
例えば、年収400万円の人なら年間の特定支出の合計額が67万円を超えると当制度を利用可能。他の特定支出がなくシッター代のみだとすれば、少なくとも月当り55,900円のシッター代を負担しなければ税制メリットは受けられません。
仕事と家庭を両立し、女性の活躍を促進する等の目的の制度ですが、高額なシッター代を負担して仕事を継続するのは一部の女性に限られるかもしれませんね。
しかし女性の場合、出産などで離職した後の正規社員での再就職はまだ難しい場合が多いのも事実。他国のように多くの人がシッター代の所得控除制度を享受でき、子育てと共働きの両立ができるためにも、今後の制度の拡充に期待したいですね。(執筆者:續 恵美子)