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こんにちは! 国際フィナンシャルコンサルタントの荒川 雄一です。さて今回は、ヘッジファンドを取り巻く環境が大きく変化する中、「今後のヘッジファンドが目指す方向性」について、考えてみたいと思います。
今後のヘッジファンドが目指す方向性
非常に厳しい運用環境となっているヘッジファンド業界ですが、その一方で、実は運用資産残高を伸ばしている分野もあります。
それは、「個人投資家向けの分野」です。
これまで、ヘッジファンドの大口顧客だった「年金マネー」によるヘッジファンド離れが進む中、「個人マネー」に向けたサービス・運用商品に注力しているのです。
キーワードは、“投資の小口化”と“手数料の引き下げ”です。
アメリカの金融システム会社ヘッジコ・ベストは、今年1月から新たなサービスを開始しました。同社と提携する証券会社の口座を通じて、約50のヘッジファンドの中から、運用方針の気に入ったファンドを選び、その同じ投資銘柄を口座で再現できるという「ヘッジファンドのコピー」で運用できるサービスを開始しました。
いわゆるヘッジファンドの「ラップ」のようなイメージでしょうか。現在は、まだ5000万ドル程度の運用額のようですが、運用結果次第では、今後の伸びも期待できるところです。
一方、より着実に資産残高を伸ばしているのが、「ヘッジファンド型の公募投資信託」、いわゆる「リキッド・オルタナティブ・ファンド」です。
“オルタナティブ”とは、ご存じのように、ヘッジファンドなどの総称でよく使われる言葉です。そして“リキッド”とは、「毎日解約できる流動性」を表しています。
ヘッジファンドが、投信タイプとなることによって、個人投資家にとっては、使い勝手の良い商品に生まれ変わります。
具体的には、
・基本的に毎日売買できる(流動性の確保)
・マネジメントフィーが通常のヘッジファンドに比べ低め
・パフォーマンスフィーの設定が無い
といったことが挙げられます。
アメリカのモーニングスターによれば、ヘッジファンド型投信の運用資産は、昨年末で3042億ドル(約38兆円)となり、この5年で4.3倍にまで拡大しています。
投資信託のような特徴を持ちながら、“ヘッジファンド手法”で運用できることから、この「リキッド・オルタナティブ・ファンド」は、今後も残高を伸ばしていくと考えています。
過去に色々と問題もあったヘッジファンド業界に対しては、“ヘッジファンドの終焉”といった言葉も聞かれますが、本来の「ヘッジ手法」自体に対する“投資家のニーズ”が無くなることはないため、その姿を様々に変容させながら、“進化”していくのではないかと考えています。
今後も、市場への影響力の大きいヘッジファンドの動向には、注視が必要と言えるでしょう。(執筆者:荒川 雄一)