今年も残りわずかとなってきました。年末になりますとご実家に帰省したり、家族の皆さんが集まったりすることが増える時期でもあります。この機会に、ご実家の相続について話し合ってみるのはいかがでしょうか。
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年末に「相続」とは何かを考える
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先日、アメリカのフェイスブック最高経営責任者(CEO)であるマーク・ザッカーバーグ氏が、慈善活動のために保有する自社株の99%を、生涯にわたり寄付するというニュースがありました。寄付する株式は時価総額で5兆5千万円にものぼるとのことです。
このような話を聞くと非常に立派な行為だと思いますが、正直なところ、寄付文化が根づいていない日本ではなかなか理解しがたいと感じる方も多いのではないでしょうか。
一方で最近、相続争いをテーマにしたテレビドラマが放送されていました。家族内の争いを強調して描かれていましたが、アメリカのお話と違って共感できる場面も結構あるのではないかと思います。もし自分がそのような状況だったらどう行動するのかを考えると、何となく身近に感じられてきます。
ただしドラマの中では資産家の家庭が描かれていますが、今や「争続」は一部の富裕層の話ではなくなってきました。遺産がそれほど多くない家庭においても相続争いは増加しており、最近の家庭裁判所における遺産分割の調停件数のうち約4分の3は、遺産額が5千万円以下とのことです。
せっかくご両親に財産を残してもらったのに、争いが起きるというのは何とも残念なことですね。
相続でもめないために
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遺産額が多いならともかく、少ないにもかかわらず争いになりやすいのは、遺産の大部分が亡くなった方の住んでいた自宅という場合
です。遺産が自宅だけとなると平等に分けにくいですし、かといって共有名義にするのも問題を先送りしているだけと言えます。
誰が自宅を相続するのか、どこの家庭でも悩むところですが、最近はすでにみんな自宅を持っていて相続した家には住まないため、空き家が増加しているということで社会問題となっています。今後住む見込みのない自宅の土地建物を所有していても、固定資産税は払い続ける必要があるため、相続した人の負担は大きいでしょう。
それではどうしたらいいのでしょうか。
皆さん誰でも、今後住む見込みのない自宅を相続するよりも、自由に使える現金預金をもらいたいと考えるでしょうから、遺産分割の際に自宅の評価額を実際の価値よりも少なめに考えると、公平感が出るのではないでしょうか。また、将来的に自宅を処分することも視野に入れながら、売却価額をもって話し合うのも現実的かもしれません。
また、もめないためには一般的に、生前に遺言書を残すのがいいと言われています。ただ実際に遺言書を書くとなると、抵抗のある方も多いでしょう。争いを避けるには、やはり普段からできるだけご兄弟と連絡を取り合い、お互いの気持ちを理解しあうに越したことはありません。
相続税を払う必要があるか
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相続というと、争いの他に税金の心配もしなければなりません。
今年(平成27年)から相続税法が改正され、基礎控除額(非課税枠)が
となり、昨年までに比べ40%も縮小されました。
ひとつの目安として、不動産も含めた遺産額が5千万円を超えるような方は申告が必要になる可能性が高く、対象者が大幅に増加していると思われます。
いわゆる中流世帯、一般的なサラリーマン世帯でも対象となってきますが、そうした認識が普段税務申告経験のない方にどこまで行き渡っているか、ちょっと心配になります。
一般的なサラリーマンの場合、給与から源泉所得税が引かれて年末調整で調整されますので、自ら納税する機会はほとんどないと思いますが、相続税の場合は税務署から通知が来るとは限らず、対象となる場合は自主的に申告して納税しなければなりません。
相続税の申告期限は死亡後10か月以内ですが、期限が近くなってから慌てて動き出すケースが多いですので、本格的に申告が増えるのは平成28年からではないかと言われています。
また実際に申告が必要かどうか試算しようとしても、計算するのは自分の財産ではなく亡くなった方の財産ですから、全体を把握することはなかなか大変だと思います。時間がかかる作業になると思いますので、できるだけお早めに検討することをおすすめします。
以上、相続税の話をさせていただきましたが、多くの方にとって重要なのは税金の心配よりも、相続争いを避けることでしょう。年末年始の機会に、ご家族でぜひ今後のお話し合いをされてみてはいかがでしょうか。(執筆者:馬場 英輝)