「貯蓄から投資へ」
マイナス金利の導入もあり、資産運用についての関心が高まっています。そんな中、皆さんは実際にどのくらい投資をしているのか?
その実態を調べてみました。
今回参考にしたのは総務省統計局のデータ(pdf)です。
目次
日本人の貯蓄の83.2%は預貯金と保険

上記データによると、2人以上の世帯で貯蓄にしめる有価証券の割合は平均14%でした。ちなみに、有価証券とは株式・公社債・投資信託などを示します。
つまり、日本人の平均世帯の貯蓄のうち、14%が株式や国債などの投資に回されていることになります。
ある世帯の貯蓄を100万円と仮定すると以下です。
預貯金 21万1,000円
定期預金(定期性預貯金) 42万2,000円
生命保険など 20万6,000円
金融機関外 2万1,000円
「日本人は貯金と保険が好き」と言われますが、実に83.2%を預貯金と保険で占めています。これでも有価証券の構成比は2009年から増加しており、14%という数字は過去最高となっています。
貯蓄の多くを貯金と保険に回すことが必ずしも悪いとはいえません。
日本人に多いこの貯蓄構成比は、日本が将来「デフレで円高」になった場合に威力を発揮します。
しかし、反対に日本が「インフレで円安」になった場合、資産が目減りすることになります。ちなみに、日銀はインフレを誘導しようといろいろな金融政策を行っています。
貯蓄が多い人ほど投資をしている
次に、世帯の貯蓄の多寡によって投資比率がどのように変わるのかも見ていきましょう。
平均世帯の投資比率が上述のように14%だったのですが、貯蓄高に分けてみるとその比率はこうなります。
貯蓄高における有価証券の構成比
200万円以上400万円未満 3.1%、
400万円以上600万円未満 3.0%
600万円以上800万円未満 3.9%
800万円以上1,000万円未満 5.2%
1,000万円以上1,200万円未満 5.5%
1,200万円以上1,600万円未満 5.8%
1,600万円以上2,000万円未満 8.3%
2,000万円以上3,000万円未満 9.8%
3,000万円以上 19.1%
これを見ると、貯蓄が多い世帯ほど投資に回す比率が大きくなるということが分かります。
3,000万円以上貯蓄がある世帯は19.1%も投資に回しています。その一方、貯蓄高800万円未満の世帯は、いずれも4%未満にとどまります。
上述の平均14%という数字は一部の高貯蓄層が数字を押し上げていたのですね。
このデータを見ると、日本の平均世帯はほとんど投資をしていないということが分かります。
年収が高い人ほど投資をしている
次に、勤労者の年収別で見てみましょう。同じくデータは総務省統計局のもの(pdf)です。
年収を5段階(第1階級から第5階級)に分け、貯蓄を投資に回す比率を比較します。
それぞれの平均年収は、第1階級336万円、第2階級501万円、第3階級640万円、第4階級811万円、第5階級1,223万円です。
階級毎の投資(有価証券)比率は以下。
第2階級 6.4%
第3階級 7.8%
第4階級 8.8%
第5階級 16.1%
年収が最も低い第1階級は貯蓄の4.9%しか投資に回していません。それに対し、年収が最も高い第5階級は貯蓄の16.1%も投資に回しています。
つまり、年収が高い人ほど投資をしているということが分かります。
今回のデータをまとめると以下です。
・そんな中、貯蓄がある人ほど投資をしている
・さらに、年収が高い人ほど投資をしている
果たして「お金があるから投資ができる」のか?

この結果を見てどう思うでしょうか。
「投資はお金持ちしかできない」と考えるかもしれませんが、今回比較したのはあくまで比率です。
一般にお金持ちは20%近い資産をリスクをとって投資に回しています。
平均世帯が漠然と銀行預金と保険にお金を置く一方で、お金持ちは真摯に運用先を考えています。まとまったお金があると「お金に働いてもらう」ということが可能です。
例えば、日本の大企業の中には年間4%程度の配当を出すところはたくさんあります。
仮に300万円投資すれば、年間12万円の配当が受け取れます(税金除く)。これだけで、月換算で毎月1万円の不労所得を得ることができます。その配当金を消費せず投資に回せば、資産は雪だるま式に増加します。
こういったインカムゲインによる富の蓄積の重要性は金融市場の権威ジェレミーシーゲル博士もたびたび指摘しています。
「お金があるから投資ができる」というのではなく「投資をするからお金ができる」と捉えることが必要ではないでしょうか。
退職金を受け取ってからはじめて投資デビューをするのではなく、無駄な支出を減らして早い段階から種銭をつくり、リスクのある金融商品に資産をさらす経験が、金融リテラシーを育む上で不可欠です。
投資は自転車の乗り方と同じです。はじめから失敗しないでうまくいく乗れる人などいません。むしろ早い段階で失敗をしないと、失敗したときに大けがをする乗り方をしてしまいます。
2016年に入ってからの世界経済の先行き不安は長期的に考えたら割安に金融商品を購入できるチャンスにもなりえます。
事実、2009年のリーマンショック時はあとになってみると絶好の買い場でした。
あせらず、少しずつインプットとアウトプットを重ねていきましょう。(執筆者:国府 勇太)