近年、注目され出した卵子の凍結保存。
初めは若い女性のがん患者さんが、化学療法や放射線の治療後に妊娠や出産の可能性を残しておくようにと、事前に卵子を取り出して冷凍保存してきたもの。
しかし2013年に健康な女性でも卵子の凍結保存が可能となり、働く女性達のライフスタイルにも大きな影響を与えています。
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目次
健康な女性の卵子凍結保存
2004年、日本産科婦人科学会・日本癌治療学会・日本泌尿器科学会の3団体が「癌患者さんの妊娠できる能力を残すために卵子凍結は施行されるべきである」と発表。
そして2013年には日本生殖医学会が、「健康な未婚女性が将来の妊娠に備えて卵子を凍結保存しておくことを認める」というガイドラインを正式に決定しました。
これを受けて健康な女性の中でも、卵子の凍結保存を考える人が増えてきました。
また先日、40代の女性が卵子の凍結保存を経て無事に出産を果たしたことから、そのニーズは高まることが予想されます。
加齢で卵子にもダメージが…
仕方のないことではあるのですが、加齢と共に卵子の老化も進みます。加齢や老化で少しずつダメージを受けた卵子は、受精や着床の確率が低くなり、妊娠・出産が難しくなってきます。
また卵巣や子宮の疾患、栄養バランスが偏った食生活、飲酒、喫煙、冷えやストレスなども卵子に悪い影響を与えます。
そう考えるとやはり若いうちに、より健康な卵子を保存しておく必要性を感じざるを得ません。
卵子の凍結保存にはルールがある
卵子の凍結保存にはいくつかのルールがあります。
・卵子採取時の年齢が40歳以上は推奨しない
・凍結保存した未受精卵子を使用する際の年齢は45歳以下が望ましい
・本人の生殖可能年齢を過ぎた場合は通知の上で破棄することが可能
卵子の凍結保存や体外受精を行なえば、いくつになっても妊娠・出産が可能という意味ではありません。
受精卵を育てるには、子宮や心身の状態、ホルモンバランスなどといったトータル的な健康状態が維持出来ているかどうかも重要です。常日頃から自分の健康を意識し、体調に配慮することが必要になってきます。
卵子の凍結保存にかかる費用
では実際に卵子の凍結保存にかかる費用はどれくらいなのでしょうか。
現在のところ、卵子の凍結保存は保険が適用されていないため、各医療機関で費用が異なっています。
・卵子保管1個に1万円~╱年
・体外受精30~50万円
これは、あくまでも現時点での平均的な金額。
自治体によっては、一部の額を負担する動きも出て来ています。
卵子を解凍し体外受精を行なっても100%受精する訳ではありません。
個人差はあるものの、女性は35歳以上になると卵子の染色体異常や受精後の胚発育の悪化により流産の確率が高くなります。そう考えると、出来れば卵子を多めに採取・凍結保存しておきたいもの。
上記の平均的な金額に、卵子10個10年間凍結保存するケースを当てはめてみると、
・10個の卵子を保管すると10万円×10年=100万円
合計が200万円~250万円ということになります。
人生の選択肢
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人生の中で何にどれだけお金をかけるか…それは個人の価値観によります。
卵子の凍結保存を必要とみるか不要とみるかも人それぞれ。
但し選択肢が増えることは決して悪いことではありません。
まずは正しい知識を得ることが大切。情報が溢れる社会だからこそ、その判断を誤らないことが必要であり自己責任になってきます。
一度きりの自分の人生。
先のことは分からないものですが、「何を大事にしたいのか…」その優先順位を考えてみるだけでも、いろいろなものが見えて来るかもしれません。(執筆者:藤 なつき)