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今年度の採用内定を前に
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新年度から約1か月。来年に新社会人になる学生のリクルート姿をよく見かけます。
現在就職活動中の方は、もう少し先にはなりますが、採用内定をもらえば一段落、ということになると思います。
この、「採用内定」をめぐって時々みられるのが、採用内定の取消ができるかどうかといったものです。
すこし前のことですが、学生が内定を受けたのち、ある経歴が発覚して取り消しになったことをめぐり裁判になったというケースはまだ記憶に新しいところです。
「採用内定」は会社が新規卒業者を卒業までに、早期に採用試験を行って採用を予定し、卒業ができないなどの事情が発生したときは取り消すというものです。
このように、「採用内定」は、本採用に至っておらず、おおむね3か月くらいの試用期間を得て、本採用になるのが一般で、その間の地位は不安定なものとなります。
そうはいっても、「採用内定」の場合は、一度出ると、内定者はその会社が雇ってくれると期待して、他の会社からの就職のオファーを断るのが一般的でしょう。
内定取り消しについて
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そうであるにもかかわらず、
途中で雇わない、内定取り消しとされてしまうと、学生は当面就職する機会を失ってしまい、断られた側からすると大きな不利益となります。
そのため、内定取消は制限されていて、内定により労働契約が成立している以上、一定の要件がある場合だけ解約できる権利が会社に留保されているにすぎないと考えられています。
具体的には、
2) そのことを理由に採用内定を取り消すことが採用内定制度の目的などからみて、客観的に合理的で、社会一般からも認められるものであること。
が必要とされています。
たとえば、経歴詐称や健康上の問題があり、労働力にかかわるものに関しては、内定取消とすることに合理性があるとされていますが、その内容や程度によって違ってくるでしょう。
他方、経営上の理由から取消をするというときは、内定の際予測できなかった経営状態の大きな変化があったという場合でない限り、認められないとされています。
また、内定期間の間に、会社から研修を受けることが求められたり、レポート作成・提出が求められることがあります。
その場合でも、あくまでも内定したに留まり、会社との関係で労働契約に基づく効力は生じていません。
ですから、レポート提出などが会社との関係で当然に義務になるのではなく、内定の際に、会社と内定者との間でどういった合意をしたかにより決まってきます。
内定取り消しで裁判に発展した例
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裁判例でも、入社前の研修は内定者の同意があって行われるものなので、内定者が学業のためなど合理的な理由から研修の参加を見合わせたのであれば、会社は研修を免除すべき義務があるとしたものがあります。
内定が取消され、その理由が合理的でないといえるときは、取消された側は、裁判で労働者としての地位の確認や賃金の支払い、損害賠償を求めることになります。
逆に内定は受けたけれども、その会社に入るのを辞めることにした場合は、2週間前に予告すれば解約できます。
最近ではむしろ若年層の人口減少が問題になってきているので、会社からの内定取消というケースは多くないかもしれません。
ただ、特定の業種や、経営上の理由からの取消というのはありうると思いますので、どんな場合なら内定取消が争えるか、あらかじめ知っておくことが必要だと思います。(執筆者:片島 由賀)