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3世代同居の専業主婦が社労士に
守屋社会保険労務士事務所代表の守屋 三枝さんは、元・専業主婦。結婚後、3人の子ども授かり、3世代(一時期4世代)同居7人家族の専業主婦として13年を過ごした後、1999年に社会保険労務士資格を取得し開業した。
今年でキャリアは17年目に入り、「企業と働く人の最良の接点はどこか? それを探すお手伝いをさせて頂ける社会保険労務士業は、私の天職です」と言う。
トラブルを解決するというよりも、トラブルを未前に防ぐために、会社の環境整備に重きを置くことを心がけている。
あなたが「お金の心地いい側面」を感じた時の話を聞かせて下さい!
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私は、何をしていると楽しいのだろうか?
―専業主婦が、どうして社会保険労務士を目指そうと思ったのですか?
一番下の子が幼稚園に入った頃かしら?
いわゆる「ミドルエイジクライシス」(※)と思われる脱力感に襲われたんです。朝起きても、力が入らない、何もやる気が出ない。そして、こんなふうに思いました。
「今まで、“良い娘、良い妻、良い嫁”と、ずっと誰かのために生きてきたけれど、私自身の人生の足跡は付けられたのだろうか? 後半の人生、私らしく生きるとは、どういいうことだろうか」と。
―そう感じている人は多いかもしれませんが、行動を起こすまでにはなかなか至りません。
子育てをする最中、ママ友とランチをしたり、子どもの服を作ってみたりもしてみましたが、「すごく楽しい!」という訳でもなく(笑)。「私って、どういうことをしていれば楽しいのだろうか?」と、ずーっと、心のどこかで自問していました。
また、3人の子育てをするというのは、すごいエネルギーが必要です。「子どもの手が少し離れたら、このエネルギーを社会に還元しないともったいないな」という気持ちもありました。
※ユングが提唱した、中年期に気持ちや体調面で「今までの生活」を続けることが難しくなること。「中年の危機」と訳されることがあるが、「後半人生を見直すための転換期」という意味で、「きわめて正常なこと」とも言われている。
ジグソーパズルの最後の1ピースが見つかった
―そういうことをママ友とお話しされたりしていたのですか?
いいえ。世代的には、まだ「子育て、介護をしたら、人生卒業」という世代です。ただ、私は「社会と関わることをしたい」という気持ちが、ずっとどこかであって、ボランティアも経験しました。ボランティアは、「報酬がない仕事の限界」を感じて絶念しましたが。
「社会と関わりたい、生涯仕事をしたい、人と関わる仕事がしたい、人の役に立つ仕事がしたい、子ども3人にはまだ手がかかり、義父母も同居なので自宅でできる仕事が良い、時間の融通の利く仕事が良い…」など、頭の中に真っ白な模造紙を広げ、書いたり消したりしながらたどり着いた先に、社会保険労務士という仕事がありました。
―その時は、どんなお気持ちでしたか?
人生の鉱脈を掘り当てた気分です。それまでも「社会保険労務士」という名前は看板などで見かけていましたが、「何、それ? おかしな名前ね」くらいに思っていたのに、調べれば調べるほど、「私が探していたのは、これだ!」という気持ちになって。
欠けていたピースがピタリとはまったかのような快感がありました。「これ、私の天職だ! この資格をとって、生涯働こう」と、その時点で思いましたね。
企業戦士の夫も受験を応援してくれた
―すごいですね。
社労士の資格を見つけて、すぐに通信教育を始めました。専業主婦ですから自由になるお金はそうありませんし、学校に通うなんてできないと思い込んでいました。それでも、自分が好きなことを学べる喜びは大きかったですね。
通信教育なので、教科書が1冊ずつ届くのですが、教科書を開く時のワクワク感ったら! 「この中には、何が書いてあるのだろう!?」と、ほんっとに(力強く)幸せでした。
―御家族の反応は?
主人は私の人格を尊重してくれる人でしたので、「頑張ってね」と応援してくれました。通信教育で勉強した最初の年はダメで、「絶対に受かるぞ!」という覚悟で挑戦した2年目の試験前3日は、主人が会社を休んでくれました。
朝から晩まで仕事をするのが当たり前の企業戦士世代ですが、3日間は子どもの世話から両親の食事のことまで、家のことを全部引き受けてくれました。
「勝負の時」は、きちんとお金をかけるべし!
―社労士試験に合格された後は?
すぐに事務所を開業しましたが、最初の3年くらいは、仕事になりませんでした(笑)。
「社労士試験に合格する」ことを目標にがんばっていたので、合格後のグランドデザインが何もなかったのが原因です。
その経験から、事業を始めようという人には、「何をしたくて、どのような事業計画なのか?」という長期的な視野を持って、事業をスタートすることをお勧めしています。
-なるほど!
お金のことでいえば、「ここぞ!」という時は、ドンとお金をかけることも大切です。
2年目は社労士の学校に通ったのですが、授業料は20万円でした。専業主婦にとっての20万円は大きかったですが、「ここは勝負しなきゃいけない。私の人生最大の買い物だ!」くらいの意気込みでお金を出しました。
「安物買いの銭失い」ではありませんが、費用対効果という意味では、チマチマと「痛みのない」お金をかけても、望んだ結果はなかなか得られません。
自分の懐を痛めた大金、つまりは「痛みのある」お金をきちんとかけると、覚悟や真剣さが違ってきます。私も2年目の受験の時は、「20万円を捨て金にしたくない。絶対に元をとってやる!」という気持ちでしたよ(笑)。(執筆者:楢戸 ひかる)