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クラウドファンディングとは
主にインターネットを通じて不特定多数の一般個人または法人などから資金を集める手段のことでした。
出資・投資の対価(見返り)によって大きく
「購入型」・「貸付型(融資型)」
「株式型(エクイティ型)」
に分類されます。
自由の女神像もクラウドファンディングで制作された?
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クラウドファンディングの仕組みが始まったのは古くは17世紀に遡るようですが、有名なのは19世紀後半の自由の女神像の建設に関するものです。
自由の女神像の台座部分の建設資金が不足したことを受け、当時の「ニューヨーク・ワールド」紙が寄付を呼び掛けました。
その結果5ヵ月で約16万人ものアメリカ国民から10万ドル以上の寄付金が集まり、無事完成したといわれています。
(出典:BBC NEWS)
個人の出資額は少額でも、多数の市民から資金を集めて大きなプロジェクトを遂行したという点で、「寄付型」のクラウドファンディングの前身といえるでしょう。
日本でよく知られているのは上記のような「寄付型」や「購入型」などで、「クラウドファンディング」というと一種のボランティアのようなもの、共感性の高いもの、とイメージされることが多いようですが、今回はクラウドファンディング全体の市場規模と種類についてみていきたいと思います。
世界と日本におけるクラウドファンディング市場の成長
仕組みとしては300年以上の歴史があるクラウドファンディング。この数年で広く認知されるようになりましたが、現在世界ではどれ位の市場規模があるのでしょうか。
Massolution(2015)による調査では、2013年度には61億USドルであった市場が2014年度には約170%増加の162億USドル、さらに2015年度には344億USドルに達する見込みとされています(図表1)。
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(図表1)出所:Massolution(2015)よりロードスターキャピタル株式会社作成
この詳細をみてみると、規模では北米が172.5億USドルと際立っていますが、伸び率ではアジアが一番です。
アジアの一部である日本でも2014年度以降のクラウドファンディング市場の拡大は目覚ましく、2014年度は前年度比59.5%増の197億円以上、2015年度はさらにその43.9%増の283億円以上となると見込まれています。(矢野経済研究所(2015))
クラウドファンディング市場はIT技術の急速な進化を背景に
(2) 資金需要者側も借入先の選択肢が広がる
という特徴によって拡大してきていると考えられます。
クラウドファンディング市場の拡大に貢献しているのは何型?
それでは、寄付型・購入型・貸付型・株式型のうち、どの種類が成長しているのでしょうか?
種類別の構成をみると、世界(図表2)・日本(図表3)ともに貸付型が圧倒的に大きいことが分かります。
日本の2015年度分については正確な数字はまだ出ていませんが、世界では344億USドルのうち実に70%以上である251億USドルが貸付型であると見積もられており、日本の2014年度実績でも全体の約80%を占める約156億円が貸付型でした。
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(図表2)出所:Massolution(2015)よりロードスターキャピタル株式会社作成
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(図表3)注:年間の新規プロジェクト支援額ベース
出所:矢野経済研究所「国内クラウドファンディング市場に関する調査結果2015」(2015年8月28日発表)pdf
日本で「寄付型」、「購入型」がよく知られている理由
クラウドファンディング市場では貸付型が最も大きな割合を占めるにもかかわらず日本で
とイメージされることが多いのは、日本においては2011年の東日本大震災の復興支援方法の一つとしてクラウドファンディングの認知が進んだこと、またwebで検索すると寄付型や購入型に関する情報が目立つ位置に出てくることなどが理由かもしれません。
貸付型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)が急拡大した理由
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さて、貸付型がここまで成長した理由はどこにあるのでしょうか?
貸付型はその特性から寄付などと比べ募集金額が大きくなりやすいことも一因として考えられます。
しかしながらそれ以上に、ソーシャルレンディングの
「出資者は金銭的な対価を得られ、しかもその利回りが良い」
という点が、資金需要者にも資金提供者にもWin-Winの状況を生み出したから、といえるのではないでしょうか。
P2P(Peer-to-Peer)レンディングとは
欧米では、貸付型クラウドファンディングはP2Pレンディングとも呼ばれます。
P2Pには借り手と貸し手を直接結ぶという意味合いがあるのですが、これは投資家が自らの判断で出資する相手と金額を直接指定できる仕組みが整っているからです。
海外ではこの透明性が市場の拡大に大きく寄与していると考えられます。
配当が期待できるクラウドファンディング
少額投資が可能で、投資・出資の対価として金銭的な見返りがあり、その利回りが5%前後(場合によってはそれ以上)になる可能性のある貸付型クラウドファンディング。
出資者側からみると、いわばミドルリスク・ミドルリターンの「配当が期待できるクラウドファンディング」ともいえるでしょう。
日本においても今後市場が適正にますます発展していくことが望まれます。(執筆者:岩野 達志)