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6月23日にイギリスでEU離脱をめぐる国民投票が行われましたが、事前の大方の予想を覆し、なんと離脱派が過半数という結果となりました。
これを受けて市場は大混乱、日本もこの煽りをうけて日経平均は1286円安という大暴落となってしまいました。
今回は日本時間で24日早朝からのこの投開票経過を、ドル円の為替レートとともに振り返っていきます。
なお、イギリスのEU離脱問題は直接的にはドル円と関係ありません。
しかし、今回は世界的なリスクオフムードの高まりという意味で、間接的ではありますがドル円も強く影響を受けた動きをしました。
今回はイメージが湧きやすさを重視して、このドル円にフォーカスを当ててみました。
目次
イギリスEU離脱国民投票とポンドドルの相場
それでは、今回のイギリス国民投票の結果が明らかになっていく流れを、時系列にしてポイントごとに振り返っていきます。
国民投票の結果は開票が終了した地域ごとに順次発表されていきます。
はじめに離脱派優勢の注目地域の結果が出てきて、その後に残留派優勢の注目地域の結果が出てくるというのが、事前に意識されていた大きな流れです。
(1)午前6時頃:投票締切後の世論調査発表
日本時間午前6時に投票が締め切られてからまず注目されたのが、Yougov社が投票した人を対象にした世論調査の結果です。
これによると残留52%、離脱48%ということでひとまず市場には安心感が広まり、リスクオフムードが弱まりドル円も106.80円まで上昇を見せました。
その後は、まずは注目地域であるサンダーランドの結果を待って、徐々に警戒感から頭を下げるという展開となっていきます。
(2)午前8時頃:サンダーランドで61%で離脱派勝利
サンダーランドは低所得の労働者が多い地域で、もともと離脱派が有利とされていた地域でした。
注目の開票結果ですが、なんと離脱61.3%となり、離脱派が大差をつけての圧勝となります。
離脱派が勝利すること自体はある程度予想されていたことですが、このポイント差の大きさに一気に離脱派勝利が現実味を帯びることとなります。
このサプライズで世論調査発表後の生ぬるい雰囲気は一変、一気にリスクオフムードが強まりドル円は103円割れまで下落しました。
(3)午前10時頃:仲値をめぐる攻防
ドル円の個別要因ですが、午前9時55分には仲値公示がありドル建て支払いのためドル買いが集中する傾向があります。
この日もこういった実需筋の注文が集まったことと、サンダーランドの結果を受けたドル円の暴落により注文が薄くなっていたことが重なって、この仲値公示をめぐって激しい動きが起こったものと思われます。
105円前後で推移していたドル円は105円後半まで上昇したあと、仲値公示後はその反動で一気に103円前半まで下落しました。
(4)午前10時半頃:残留派支持地区発表が続き、残留派が過半数奪取
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仲値公示後の暴落のあとは、北アイルランドなどの残留派有利の地域の結果発表が続きます。
午前8時代の発表以降、全体の集計では離脱派が過半数を維持してきていましたが、残留派が徐々に盛り返してきて、やがて過半数を越えていきます。
この局面では、「やっぱり残留派が勝つのかな」という雰囲気はまだあったように思います。
ドル円もこの段階では104円後半でヨコヨコの展開となっており、次の材料を待つというような格好でした。
(5)午前11時半頃:離脱派盛り返し再び優勢に、放送局が75%の確率で離脱派勝利と発表
一時は残留派が盛り返していましたが、開票が進んでいくなかで離脱派の支持が増えていき、再び過半数を取り戻して優勢になっていきます。
このあたりから不穏な空気が流れ始め、ドル円もジリジリと頭の思い展開のなか104円前半へと値を下げていきます。
そんななか、午前11時半頃には放送局で75%の確率で離脱派勝利という分析結果が出てきました。
これを受けてドル円は103円を一気に割り込む下落を見せ、ストップロスを誘発しながら100円まで割り込んで、一時99円付近まで下落を見せました。
これはまさに阿鼻叫喚といったような動きでした。
これがセリングクライマックスとなって、その後は101円後半まで値を戻して推移をします。
(6)午前12時半頃:放送局が離脱派勝利と発表
大都市の票がまだ残っているため一縷の残留の望みは残ってはいましたが、12時半頃に放送局からは離脱派勝利という分析が出てきます。
これで離脱派が勝利が決定的となり、ドル円は再び下落の流れを見せますがここでは100円付近まで。
すでにほぼ離脱を織り込んでいル状態だったということもあり、安値を更新するほどの下落は起きませんでした。
これで大相場はいったん終了となり、そのあとはジリジリと調整の戻しを見せながら、EU離脱問題で大荒れのこの週は102円前半で引けることとなっています。
なお、最終結果は午後3時頃に発表されており、最終的には離脱51.9%、残留48.1%という結果でした。
想像以上に根深かかった移民問題
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ドル円の値動きを時系列で振り返っていきました。
「まあ、大丈夫だろう」という楽観的な状態から、「おいおい、やばいんじゃないの?」と不安が高まり、最後は「マジかよ!」というようなパニックになっていくような流れでした。
筆者自身、正直なところ残留という結果になると思っていたので、そういう感覚の人がおそらく大半だったのではないでしょうか。
国民投票前の前回の記事では、この問題の本質は移民問題にあると書かせていただきました。
そして、その移民を利用したい側の人間と、移民によって苦しい思いをする主に低所得の労働者層の対立構造を強調しました。
こういう意外な結果になったのは、この対立構造がイギリスで思った以上に根深く存在していた、ということなのかもしれません。
The map of Britain's Leave vote based on our new model, rolling data from past two weeks, https://t.co/3IpjvVd88w pic.twitter.com/wrfWpb0PDz
— YouGov (@YouGov) 2016年6月21日
上にYougov社のツイートから、残留派と離脱派の分布をイメージできそうなイメージを引用します。(投票結果というわけではありませんが、それに近いものと思っていただいて大丈夫です。)
これを見ると、スコットランドや北アイルランドを除くと、残留支持が多いのはロンドンなどの都市部だけで、それ以外のほとんどの地域が離脱支持になっています。
都市部とそれ以外で残留派と離脱派が分かれてしまっているこの状況からも、EU離脱問題の本質がうかがえますね。
イギリスがEU離脱をすると国内経済は悪化する可能性はかなり高いようです。
しかし、そういうことになってでもイギリス国民がEU離脱を選んだ理由が一体何なのか、これはとても大事なことだと思います。
この根底には、国内経済がいくら良くなっても主に低所得のイギリス国民の生活は良くならないということがあるのではないでしょうか。
つまり、EU加盟は企業を潤わせるだけで、それはイギリス国民まで届くことはないということです。
だからこそ、たとえ経済が悪くなったとしても、自分たちを移民問題などによる苦しみを排除するために、EUからの離脱を選んだというわけです。
さて、我が国に目を向けてみると、現在も移民政策は着々と押し進めようとされており、実行に移されるのももう時間の問題かもしれません。
日本経済を活性化させる手段の1つということですが、果たしてこの方針は誰のためのものなのでしょうか。果たして僕たち国民にとって本当に正しいことなのでしょうか。
イギリス国民の今回の選択を目の当たりにして、考えさせられるところがあるように思います。(執筆者:貝田 凡太)