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離婚に向けて現実的なお金の話
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これ以上結婚生活を続けるのは難しい…こういった状況になったときに、まず女性が直面するのは、経済的に子どもとどうやって生活をしていくかだと思います。
しかし、今の自宅から引っ越すにせよ、実家に戻らなければ、引越し先の敷金等や家賃、引越し費用などまとまって必要になります。また引越し後も日々の生活費をどうするかという現実的な問題が生じます。
すぐに離婚の話がつき、相手(元夫)からまとまったお金を受け取ることができれば先の見通しが立てやすいですが、離婚の話が長引くと、日々の生活費の支払いがあればまだしも、そうでないときは生活に困窮することになります。
ただ、公的な支援の制度は一般的に給付・貸付にせよ、離婚後母子家庭になった場合を想定しており、離婚がまだ成立しないときは使えないことが多いです。
まったく収入がない場合には、生活保護を受けるのも一つですが、収入がある程度あれば利用が難しいこともあります。
離婚成立していなくても受給できる児童扶養手当
こういった場合でも利用できることがあるのを知っておくとよい制度があります。それが児童扶養手当の制度です。
児童扶養手当は、法律もしくは施行令で定められた児童をみる母親または父親、もしくは父母がみていない場合の養育者に対して支給されます。
児童扶養手当は、かつて「母子手当」と呼ばれていたもので、平成22年8月以降は父子家庭も支給対象になっています。
今では、母子もしくは父子家庭の生活の安定と自立促進を通じて児童の健全育成を図ることを目的にした制度となっています。
受給資格ある場合としては9つ挙げられており、典型的なケースでいうと、母(父)が婚姻を解消した場合・父(または母)が死亡した場合、あるいは父(または母)の生死が明らかでないときが挙げられます。
そのため、イメージとしては、離婚が成立しないと受け取れないように捉えている方もおられるでしょう。
しかし、受給資格があるケースには、父(または母)が法令により引き続き1年以上拘禁されている児童・あるいは父(または母)がDV防止法の保護命令を受けた児童であるときも、児童扶養手当を受けられます。
ですから、父(または母)が刑事事件で捕まり、裁判のため勾留されているときには、児童をみている母(または父)が児童扶養手当を受けることができるのです。また保護命令を受けた場合というのが、平成24年8月から支給対象に加わっています。
ですから、離婚が未だ成立していなくても、上記のケースにあたれば、児童扶養手当を受給する資格があることになります。
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別居中でも支給対象になる場合
それでは、夫婦が別居中ではあるものの、上記のケースに当たらないときは、児童扶養手当を受給できないのでしょうか。
実は、それ以外でも支給対象になるケースがあります。それが、「父または母が引き続き1年以上遺棄している児童」のときです。
この「遺棄」というのは「父(または母)が児童と同居しないで監護義務をまったく放棄している場合」をいうとされていて、具体的な認定基準が定められています。
一方が家を出ており、仕送りがないときは、「遺棄」にあたりそうですが、具体的に認定基準を定めた通知によると、さらに「子どもの安否を気遣う電話・手紙等の連絡」がなく、「税法上扶養親族の扱い」になっていない、警察・親族により捜索の証明ができ、他方に離婚意思がある、などかなり細々とした要件が決められています。
ですから、単に仕送りがないというだけでは「遺棄」にあたらないこともあるので、注意が必要です。
そのため、実際のところこの児童扶養手当の支給を受けているのは、既に離婚しているケースが多く(80%以上)、この「遺棄」にあたるとして支給を受けているのはわずか0.3%程度のようです(平成25年5月現在の数値)。
ただ、最初にお話したように、離婚が成立するまでかなり時間がかかるケースもありますので、児童扶養手当の受給資格が少しでもありそうなら、市区町村役場でご相談されることをおすすめします。(執筆者:片島 由賀)