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年金の受給資格期間を25年から10年に短縮
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改正年金機能強化法案が成立し、来年平成29年8月1日から施行されることが決定しました。
条件とされていた消費税の10%への引き上げが延び延びになっていたので、該当の方が窓口にいらっしゃったときに、「報道に注意して待っていてください」とお話ししていました。
高齢の方が多かったので、私たちも少し安心しています。
これにより受給権が発生する方が64万人いらっしゃるとのことです。
25年はないけれど既に10年以上ある方に対しては年金請求書が送られることになるでしょう。これらの方は9月分の年金から支給され、初回支払いは10月になるようです。
「合算対象期間」を賢く使う
10年に短縮になったことにより、多くの方が年金を受給できるようになりました。
しかしなかには、それでも10年に達してないと落ち込んでいる方もいると思います。
私は一人でも多くの方に受給して頂きたと考えております。そこで実際にあった相談から「合算対象期間」を使ったアドバイスをいくつかさせていただきます。
アドバイス1 「合算対象期間」は自己申告
合算対象期間(カラ期間)を使わないと10年にならない方は自分で申し出なければ年金を受給することはできません。
現行の制度と同じですが、合算対象期間は受給できるかどうかを判断するのに使われるだけで、年金額には反映されない期間です。この方たちは64万人に含まれていないのではないかと思われます。
昭和24年6月生まれ67歳の男性Aさん
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若いころに80月厚生年金に加入したことがあるだけで、その後自営業になってからは国民年金保険料を1回も納めたことがありません。
受給資格期間に足りない場合、65歳を過ぎていても国民年金に特例任意加入することができますが、それも70歳になる前(誕生日の月の前月)までしか払えません。
今年の11月から払い始めても31月しかなく、80月と合わせても120月になりません。
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今から厚生年金に加入すればこちらは受給資格期間に足りない場合には70歳以降の期間も足すことができますが、実際に雇ってくれる会社はなかなかないでしょう。
そこで、合算対象期間の確認をしました。
と伺ったところ、1年浪人して4年制大学に入学して4年で卒業しているとのことでした。
1年浪人だと入学時が19歳で1年生の途中で20歳になります。つまり、6月生まれのAさんの場合、1年生の6月から卒業するまでの46月が合算対象期間になるので、80月とあわせて120月以上になります。
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もしAさんが現役で大学に入学していたら学生の合算対象期間を使ってもまだ10年にならなかったので、本当にギリギリでした。
Aさんに在籍証明をとって確認しておくように伝えました。年金をあきらめていらしたようなので、驚いていらっしゃいました。なお、この20歳以上の学生の期間が合算対象期間になるのは昭和36年4月~平成3年3月までの期間です。
また、専門学校等が該当するかは年金事務所でお尋ねください。
アドバイス2 合算対象期間の種類
男性に使える合算対象期間の種類は多くありません、他には外国に住んでいた期間などがあります。
女性の場合によく使われる合算対象期間は昭和36年4月~昭和61年3月の期間に20歳以上60歳未満で夫が厚生年金に加入していて自身が専業主婦だった期間です(配偶者のカラ期間)。
夫死亡による遺族年金だけを受給している昭和6年8月生まれのBさん
自身の老齢年金は受給できていません。新制度になった昭和61年4月から60歳になる前月の平成3年7月までの64月、サラリーマンの妻で3号になっていました。
しかしBさんの夫はずっと厚生年金に加入していたわけではなく、配偶者のカラ期間を使っても25年に足りず、老齢年金が受給できませんでした。
今回の短縮で配偶者のカラ期間を使って10年にはなるので、戸籍謄本等の婚姻期間の証明できるものを添付して請求できるようになります。
アドバイス3 サラリーマンの妻なのに…
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サラリーマンの妻で夫に扶養されていた期間が3号になっていない場合があります。
この期間については3号特例という制度で手続をすれば3号にできますが、それが認められるのは手続をした以降になります。
このような期間があって受給資格期間10年に該当する方が平成29年9月分から年金を受給するには前もって手続きをしておく必要があります。
アドバイス4 「合算対象期間」以外で足せるもの
合算対象期間ではありませんが、生活保護の生活扶助を受けていた期間は国民年金保険料が法定免除になるので、期間として足せるだけではなく、年金額にも反映します。
解明されていない宙に浮いた年金記録についても検索の精度が上がっています。特に旧姓のある方の記録が見つかることはかなり多いです。
あきらめずに確認して相談する
このように、年金をあきらめていた方にも受給権が発生する可能性があります。
50代後半以上の方で年金をあきらめている方はお1人お1人のご事情を確認する必要がありますので、できるだけ早くご相談されることをお勧めします。
今回の受給資格期間短縮で1人でも多くの方が年金を受けられるよう私たちも協力したいと思っています。(執筆者:高橋 良子)