前回、火災保険と個人賠償責任保険の重要性について投稿させていただきましたが、賠償責任保険はとてもわかりづらい保険です。
火災保険と切り離して個人賠償責任保険についてお話しをさせていただきます。
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目次
「個人賠償責任保険」とは
「個人賠償責任保険」は個人及びその家族が、住宅の管理やその他の日常生活において、偶然な事故により負担する法律上の損害賠償責任に対してお支払いする保険です。
最近は多様な趣味を持ったり、スポーツやペットの飼育などを楽しむ人が増えています。
それと同時に思わぬ事故で他人に迷惑をかけるケースが目立ってきました。
昔であれば菓子折りで済んでいたようなケースでも、最近は金銭的な補償を求められる恐れが多分にあります。
個人の日常生活を包括的に賠償事故からガードする「個人賠償責任保険」は一家にひとつ加入しておきたい保険のひとつですね。
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法律上の損害賠償責任とは?
日常生活に起因する主な法律上の賠償責任は次のとおりです。
個人賠償責任保険が適用となる実際の事故においては、(ロ)不法行為責任に関わるものが多いようです。
(ロ) 不法行為責任(民法709条)※1
(ハ) 監督者の責任(民法714条)
(ニ) 工作物の責任(民法717条)
(ホ) 動物占有者の責任(民法718条)
など
※1 不法行為による損害賠償責任
不法行為とは、「故意又は過失※2によって他人に損害を与える違法な行為」をいいます。
不法行為責任が成立する要件は、以下の要件が満たされていることが条件となります。
(1) 加害者が故意または過失があること(過失責任主義)
(2) 他人の権利を侵害したこと
(3) 加害者に責任能力があること
(4) 加害行為によって他人に損害が発生したこと
(5) 加害行為と損害の発生に相当因果関係が存在すること
※2 故意・過失について
故意とは、「自分の行為が損害を及ぼすことを知って、なおかつ、敢えて行為をするという心理状態」をいいます。
また、過失とは、「自分の行為が他人に損害を及ぼす可能性を認識することができたにもかかわらず不注意によって認識しない心理状態」をいいます。
個人賠償責任保険は、基本的に故意は免責ですが、ほとんどの保険会社では過失・重過失を免責としていません。
賠償責任保険で注意を要する点
保険会社によって約款の内容や解釈が違う場合があります
賠償責任保険において基本的に保険金を支払わないケースについては、各保険会社は補償条項の「保険金を支払わない場合」で規定しています。
特別約款や特約で補償しない限り、「保険金を支払わない場合」に記載される損害は補償対象外となります。
保険会社によって若干の違いがありますので、確認してみてください。
不可抗力のケース
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賠償責任保険は、その前提として、法律上の賠償責任を負うことによって被る損害をてん補する保険です。
風水害などの自然現象に起因する事故によって他人に損害を与えた損害については、それが社会通念上予見しえない規模、状況で発生した場合には「不可抗力」とされ、法律上の賠償責任が生じないケースもあります。
予見可能な自然現象に対しては、あらかじめそれに耐えうる設備、管理等が要求され、これを怠れば当該工作物等が「通常有すべき安全性に欠けた」あるいは当事者として要求される「注意義務に違反した」として賠償責任を負担せざるをないケースもあり、被害が単に自然現象によって生じたというだけでは必ずしも不可抗力による損害とはなりません。
賠償事故が発生したら
「個人賠償責任保険」は個人及びその家族が、住宅の管理やその他の日常生活において、偶然な事故により負担する法律上の損害賠償責任に対してお支払いする保険です。
しかし、この「法律上の損害賠償責任」とは、必ず裁判上の確定判決を要するものではありませんが、事故について、被保険者に法律上の損害賠償責任が発生するか否かを個々の事案について保険会社が精査・判断することとなります。
事故の原因と関連する過去の法令等と照らしながら、客観的に被保険者※に法律上の損害賠償責任があると認められる必要があります。
保険会社に承認を得ないで勝手に示談や支払を行ってしまうと、後で払えないケースも出てくる可能性があるので注意しましょう。
※被保険者とは、保険の補償を受けられる方をいいます。
個人賠償責任保険の場合は、本人の他に配偶者と生計を共にする同居の親族等も含まれます。(執筆者:高倉 純子)