最近、「高校無償化」あるいは「大学無償化」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。
政治の場面などでよく出てくる言葉ではありますが、「無償化」という概念が登場した背景には、少子高齢化や格差拡大など日本社会全体が抱える種々の問題があると考えられます。
一方で、学費を賄うために「奨学金」制度を利用したが返済ができずに自己破産するというケースも増加しています。
それらの問題は「日本社会が抱える問題」ですので、一個人で簡単に解決できる話ではありませんが、だからこそ
「どういう準備をしておいたほうがいいか」
について個人レベル、家族レベルでも考えておいたほうがいいと思われます。
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目次
1. 「無償化」について
まず、高校と大学では事情が全く異なります。
「高校無償化」は2010年に制度として始まっていますが、「大学無償化」については未だ制度化していません。
さらに「無償化」 = 無料、タダという訳ではありません。
公立か私立かによって国から補助される金額は異なりますが(年間11万8,000円以上)、対象となるのはあくまで授業料のみであり、例えば修学旅行の積立金や通学定期代、教科書代、私立高校の入学金や寄付金などは対象外です。
また所得制限もしっかりついていますので学生全員が対象となる訳ではありません。
私立高校は授業料もピンキリですので、授業料が高額ですと国からの補助だけでは賄えない可能性があります。
「大学無償化」については、やっと議論が始まったところですので、どういう制度になるか殆ど白紙状態です。
「高校無償化」は議論が始まって約2年で法案が通りましたが、大学の場合は金額がもっと大きな話になりますから個人的には2020年以降になると考えています。
これらの事から、
・ 大学については、現在中学生あるいは高校生のお子さんが大学進学を考える時には、まだ制度そのものが施行されていない可能性があります。
決して制度をあてにせず、しっかりとした教育費の準備をしておいたほうがいいでしょう。
・ また高校、大学ともに言えますが、「奨学金」の活用も選択肢の一つとして考えてみましょう。
2. 「奨学金」について
先述しましたが、「奨学金」が返済できずに自己破産を申請する件数は年々増加しています。
今や大学生の2人に1人が奨学金を活用しており、社会人になっても返済ができなくて自己破産する若い人は累計1万人を超えています。
借りる時と返す時とで状況が変わってしまったと言えばそれまでですが、ここ数年は世帯収入の減少や学費の値上がり、非正規雇用による収入低迷などによって社会問題化するほどの件数になっています。
返せないお金は借りてはいけない
また「奨学金」を借りる時は連帯保証人や保証人をつけることになっていますので、本人が返済できない時は保証人である親などに返済義務が生じ、保証人も連鎖破綻するというケースも考えられます。
これらの問題についてはテレビの特集番組などでいろいろ報道されていますが、私個人の意見としては「返せないお金は借りてはいけない」です。
例えば住宅ローンやカードローンなどで借りたお金を返済できない場合は何らかの形で責任をとるしかありません。
「奨学金」は教育ローンの一つであり、返済できない場合は他のローンと同じように法的措置がとられる訳です。
違いがあるとすれば、借りた本人が学生であり、借りた時には収入がなく、将来の収入保障もない状態での借り入れであるという点です。
よって保証人となる親など保護者が本人以上にしっかりと借り入れと返済について考える必要があるのです。
景気や賃金、法律や政策などは個人の力では如何ともしがたい現実です。
それらを踏まえた上で、
「アルバイトなどは可能か」
「本当に必要な奨学金はいくらか」
「何年で返済するのか」
「月々の返済はいくらか」
「いざという時に親が返済できるか」など
さまざまな事を保護者がしっかりと考える必要があると思います。
「~かもしれない」という考え方で計画する
「大学もそのうち無償化になるだろう」とか「いい会社に就職したら返済は問題ないだろう」と考えるのではなく、「大学の無償化はかなり先になるかもしれない」あるいは「もしかしたら就職活動に苦労するかもしれない」、このように「~かもしれない」という慎重な考えに基づいた計画がこれからは特に必要です。
そして子どもの夢や将来について親子でしっかりと議論する、そしてそのためにはどういう教育が必要か、大学に行くのか否か、国立か私立か、自宅通学か下宿か、費用はいくらかという基本的な箇所をしっかりと考えてください。
そのうえで、給付型(返済の必要がない)奨学金や民間団体の奨学金、また社会福祉協議会の「生活福祉資金」や都道府県の「母子父子寡婦福祉資金」など、利用できる制度についてもしっかりと時間をかけて調べて準備するということが大事です。
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最後に
年金などに対する漠然とした不安を抱える若い世代が、社会人としての一歩を踏み出した途端に何百万円もの借金返済をせまられ、将来に対する夢や希望を捨てて厳しい選択を余儀なくされるということにならないようにしたいものです。
国や都道府県という「社会」が取り組むこともあれば、「保護者 = 親」が準備できることもあります。
いま何ができるかを整理して、しっかりとした教育計画を立てましょう。(執筆者:長谷川 泰且)