最近、相続のご相談・実務をお受けする中で、遺言書を用意されている方が多くなってきていると感じます。
実際に相続が発生された場合でも、公正証書遺言を書かれていて、その後の相続がスムーズにいく場合もありますし、むしろ遺言書によって揉めてしまうケースもあります。
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揉めてしまうケースとして一番の理由は、遺言者の想いが書かれていない遺言書です。
付言事項と言って、遺言書には遺言者がなぜそのような遺言を行ったのか理由をしっかり残すことが出来ます。
この付言事項があれば、相続人も遺言者の想いを大切にしようと思いその後の相続が円満にいきます。
遺言書をどのように書けばその後の相続で円満にいくのか?
前置きが長くなりましたが、最近の事例で遺言書があればよかったというケースをお伝えします。
目次
(仮称)山田花子さんからご相談頂きました。
山田花子さんは旦那様の太郎さん、長男一郎(未婚)さん、次男二郎(未婚)さんとの4人家族でした。
花子さん一家の中で、まず次男の方が不幸にして病気で30代の若さでお亡くなりになりました。
この時の相続人は結婚していないのでご両親が相続人です。
次に長男一郎さんが40歳で昨年急なご病気でお亡くなりになられました。
この時の相続人もご長男が結婚されていないのでご両親が相続人です。
そして、今年に入り旦那様の太郎さんが病気でお亡くなりになられてご相談頂いたケースです。
さて、この時の相続人は誰なのかが問題になります。
普通の方であれば「お子さんがもともといらして、今回旦那さんがお亡くなりになったのだから、当然奥さん一人が相続人だ」と思います。
ですが実は…そうではありません!
山田家は4人家族で旦那さんとお子さん二人の家族でした。
ですが、不幸にもお子さんと旦那さんが先にお亡くなりになりました。
奥様の花子さんとしては、当然に旦那さんの財産は自分のものになると思っておられました。
財産内容は、太郎さん名義の自宅の土地建物です。
この名義を自分に変更としようと思ったところ、実は太郎さんのご兄弟に4分の1の相続分があることが初めて分かったのです
奥様の花子さんは、「自分達のお金で建てた家で、自分たちが生活してきた家を、何で太郎さんの兄弟に相続する分があるのか?」理不尽だとおっしゃっていました。
太郎さんのご兄弟とは現在疎遠になっております。
太郎さんは6人兄弟で本人を除く5人のうち4人は既にお亡くなりになっているとのことでした。
ご兄弟の相続人がお亡くなりになられている場合、そのお子さんたちが代襲相続といって相続人になります。
こういった場合、家を自分の名義にするためには遺産分割協議が必要になってきます。
相続登記をするためには、相続人全員のハンコが必要です。
何人いるかわからない相続人をこれから行政書士の先生のお力をお借りしながら特定し、その後分割協議へと進み、相続登記を行うという流れになります。
順調にハンコを押してもらえるのか? 分かりませんが今後進めていく事になりました。
遺言書があれば、名義を変える事ができる
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こういった状況を回避する為には、山田花子さんは旦那さんの太郎さんに遺言書を書いておいていただくことが大切でした。
遺言書があれば、上記のような遺産分割協議をすることなく、花子さんの名義に変える事が出来たのです。
兄弟が相続人となる場合には、財産をすべて妻に相続させると遺言書を残せば、兄弟には遺留分というものがありませんので、すべて妻に相続させることが出来るのです。
(遺留分とは、一定の相続人が最低限相続できる財産の事をいいます。どういうことかというと、本来もらえる相続分があるのに、遺言書などで別の人に渡す相続分が自分の相続分を侵害して渡されるようなケースをいいます)
(1) お子さんがいない
(2) 前妻との間に子供がいる
(3) 結婚した相手に連れ子がいる
(4) 相続人がいない
(5) 相続人以外に財産を相続させたい
(6) 自宅以外に財産がない
(7) 特定の相続人に多く相続させたい
(8) 相続人の仲が良好でない
残された相続人に円満に相続してもらえるように遺言書を準備しましょう!
遺言書を書くことが重たいと感じたら、せめてエンディングノートに書き記して残しておくことをお勧めします!(執筆者:瀧澤 宏行)