私が年金事務所で期間短縮(10年)年金の受付に携わっていることは4月に書きました。(【年金支払期間】10年かと思っていたら、25年だったケースがあります。「もらえればいい…」ではなくしっかりと確認を。)
その後も8月半ばまでほぼその業務だけを行ってきました。
現在は窓口で他の業務も扱っていますが、今でも1日に数件は期間短縮年金の請求に対応しています。
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目次
老齢年金の受給資格期間が10年になったことで実感したこと
横浜という土地柄にも関係あるかもしれませんが、老齢年金の受給資格期間が25年必要だったころ、男性の老齢年金請求の多くは学校を卒業して会社勤めをし、退職するかまだ働きながら年金受給開始年齢を迎えられるパターン、女性は卒業後数年会社勤めをされたあと結婚して専業主婦になって年金受給開始年齢を迎えられるパターンが圧倒的に多く、かなり安定した生活を送っている方たちでした。
一方、今回受給資格期間が10年になったことで受給権ができた方たちのこれまでの人生は波乱万丈です。
短い会社勤めをいくつかされた方、脱サラして自営になったけれどあまりうまくいかなかった方、女性では結婚歴が2回、3回という方も珍しくありません。
この方たちは高齢になっても年金収入がないのですから、当然生活は苦しく、生活保護を受けている方の割合もかなり高いようです。
年金制度についてはいろいろ言われていますが、やはり現状では年金は老後生活を支える大きな柱であることは間違いないと実感しました。
「宙に浮いた年金記録」がかなりの数あります
また、脱サラの成否は老後の生活まで考えるとかなりハードルが高いことを改めて感じます。
10年以上記録がある方には請求書が送られてそれを持って来所されます。
確認をしますが、氏名検索でまとめられていない記録が次々に出てきました。
どうせ年金はもらえないと一度も相談にいらしたこともない方が多いので、1人で5つも6つもの厚生年金の番号をお持ちの方もいらっしゃいました。
今回こうしてそれらの記録が統合されたので、いわゆる「宙に浮いた年金記録」のかなりの数が判明したのではないでしょうか。
記録が見つかって25年以上になって本当は前から年金がもらえたことが分かった方もかなりありました。
被保険者であった期間は従前戸籍をたどっていけば必ず行きつける
期間短縮年金の受付では本当に25年ないかの確認にかなり時間をかけます。
「宙に浮いた年金記録」の確認のほかに合算対象期間に該当しないかを確認します。
そこで結婚歴をお訊きすることになるわけです。
昭和36年4月から61年3月までの期間で配偶者が厚生年金(共済年金も含む)被保険者であった期間(他にも条件はありますが)が合算対象期間です。
それは今の配偶者に限らず、元配偶者でもいいのですが、ずいぶん前に離婚されているような場合、その証拠になる婚姻日の記載のある戸籍謄本を入手するのは面倒なようで、戸籍謄本を持ってきてくださいとお話ししてそれきりになっている方もあります。
相続のときにもやりますが、従前戸籍を手繰っていけば必ず行きつけるはずなので早くやって頂きたいものです。
配偶者の合算対象期間を使って25年になる方は多いのですが、特にご自身の老齢年金受給開始年齢の前から遺族年金を受けていらっしゃる方のケースが本当に多かったです。
遺族厚生年金を受けられているので、亡くなったご主人は厚生年金加入者だったわけで、そうすると昭和61年3月以前の合算対象期間があることが多いのです。
「1人1年金」ではないのですかと訊かれますが、65歳からは遺族厚生年金と妻自身の老齢基礎年金は両方受けられます(詳しい説明はここでは省略します)。
25年以上が確認できれば時効にかからない5年分が支給されます。
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手続きが難しい外国人の方のケース
現場で手続きが難しい場合として、外国人の方のケースがあります。
国際結婚された方、難民の方、中国残留孤児が中国で結婚してその後帰国されたときに一緒に来日された方など、ある年齢になってから来日され、会社勤めをして厚生年金に加入したり、または国民年金の保険料を納付して(日本に住んでいれば20歳から59歳までは強制加入です)10年以上の期間がある方です。
実はこの方たちの多くが合算対象期間を使って25年になりました。
帰化された方、永住許可を受けた方がまだ海外に住んでいた期間のうち20歳以降の期間が合算対象期間になるのです。
そのためにはいつ来日されたかの確認が必要で、何冊ものパスポートを全部コピーしたり、法務省に出入国記録の開示を請求して頂いて確認しました。
最後に
8月に受給資格期間が短縮されたことがテレビ等で報道され、請求書は届かなかったけれど自分はどうだろうと来所された方もかなりいらっしゃいます。
まとめられていない記録が見つかり受給できるようになった方もありますが、120月にどうしてもならない方もいらっしゃいます。
70歳前なら国民年金に任意加入、特例任意加入する(もちろん保険料を納付しなければなりません)ことも可能ですが、足りない月数の方が70歳前の月数より多い場合は特例任意加入はできません。
自分はどうだろうと思っていらっしゃる方はできるだけ早く年金事務所で記録の確認をされることをお勧めします。(執筆者:高橋 良子)