誰も住まなくなった実家を相続すると、多くの方がご検討されるのが「売る」という手段。
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「利用しないのだから持っていてもしょうがない」
というのは、ごもっともなご意見で、それならば換金した方が良いだろう、と想うのは、実に自然な考え方だと思います。
そもそも「実家を売る」という行動は「財産」を手放すということを意味します。
この財産には、土地や建物、家宝などの「物理的な財産」の他、想い出や安住と行った「精神的な財産」も含まれますが、こういった財産を手放すことのメリット・デメリットを考えたことはあるでしょうか?
今いる環境やライフスタイルによって、人それぞれメリット・デメリットは違ってくるとは想いますが、以下に、私が今までお手伝いさせていただいた方やまた私が考える実家を「売る」場合のメリット・デメリットを挙げてみました。
目次
実家を売るメリット
(1) まとまった金額が入る。
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・借り入れが返済できる。
・老後資金が確保できる。
・教育資金が確保できる。
・事業資金(起業資金)が確保できる。
・相続関係者に現金で分けられる。
・住宅購入資金ができる。
・室内を片付ける費用が捻出できる。
・相続税などの納税資金ができる。
・生活資金が確保できる。
(2) 空き家の管理をしないで済む。
・草むしりをしなくて済む
・空気の入替えをしに行かなくて良い。
・周囲からの苦情から解放される。
・建物を解体して売却することができる。
(3) 固定資産税を払わなくて済む。
(4) リフォームやメンテナンス費用がなくなる。
(5) 実家への想いを断ち切れる。等
実家を売るデメリット
(1) 希望金額で売れる保証はない
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(2) 権利や物件状況によって、売れない場合がある。
(3) 地方の不動産だと、相場が極端に安い場合がある。
(4) 帰れる実家がなくなり寂しい。
(5) 兄弟・親戚等で集まる場がなくなる。
(6) 実家で得られる収益が一度きりで終了する。
(7) 共有で相続した物件だと、売却金額や売却条件で話がまとまらない。
(8) 行方が分からない人がいると、売るまでにかなりの時間がかかる。
(9) 遠方の実家で地元不動産業者に売却依頼すると、頻繁に帰れない業者の言いなりになる可能性がある。
以上をまとめると、実家を「売る」メリット・デメリットは
(2) 思い通りの金額や条件で売れない可能性がある。
(3) 実家への思い入れの気持ちから、売るのに抵抗感がある。
となるように想います。
実家の売却を考える基準は、
B. 実家を活用して、豊かな人生を創りたいのか?
の2つに分かれるのではないかと、私は考えています。
売却の形もさまざま
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問題解決型の売却
前者のように周囲への迷惑をこれ以上かけたくなかったり、維持管理費用をなくしたいというのが目的なら、金額の問題でなく売れる金額と条件で、早々に売却した方が良いでしょう。
未来創造型の売却
後者のように将来かかるであろう教育費や老後費用、または自身の夢の実現など、豊かなライフプランを描くことを目的とするならば、今は売れなくても売却以外の活用方法も検討しながら、戦略的に時期や金額を考えて、売却を検討していった方が良いでしょう。
実家を資産と見るのか? 負債と見るのか? それによって、売る方法や時期も大きく変わってきます。
実家を売ることを考える際には、「いくらで売れるのか?」よりも、「何の為に売るのか?」を優先して考えてみると、今まで見えなかったもの、気付かなかったことが見えてきて、人生にプラスとなる売り方も考えられるのではないでしょうか?
私の持論でもありますが、「日本の不動産は必ず売れます。」
必ずというのは、時期や価格・条件など折り合う時が必ずあるという意味ですが、「なかなか売れない」というのは、「まだ購入される方に巡り合っていない」という意味にも捉えることができます。
まとまったお金が必要な時期と売却物件の相場・需要を見ながら、売却する適切な時期と価格を検討し、人生を豊かにするメリットが得られるよう、実家の売却を考えていってほしいと想います。(執筆者:細井 久男 )