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従来の逆発想の介護保険
現状の民間の介護保険は、介護状態ではない被保険者がまだ元気なうちに加入し、保険会社が規定している介護状態に該当すれば、保険金が支給される保険が主流だ。
また介護状態が継続すれば、年金形式で継続的に給付金が支給される介護保険もあるため、介護状態が改善したことによる経済的なインセンティブは働かない商品設定である。
SOMPOホールディングスとアイアル少額短期保険が昨年9月から発売した「明日へのちから」は従来の民間介護保険とは逆の発想で設計されている保険。
この保険に加入できるのは、要支援・要介護認定を受けた人で、介護度が改善すると保険金が給付されるという国内初のしくみだ。
年間保険料は、5,000円、1万円、2万円の3種類。
介護度が改善すると支払った保険料の5倍の保険金が、年間最大2回まで支給される。
加入できるのは、現状SOMPOグループの介護施設の入居者だが、将来的にはグループ外の施設での拡販も計画されているようだ。
介護離職防止を目的とした保険も登場
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三井住友海上火災とあいおい損保が昨年10月に発売した特約は、要介護2以上に認定された親のために介護休業を取得した人の収入減をカバーする保険。
国の介護休業制度では家族1人当たり93日まで休業が認められ、雇用保険から休業前賃金の67%の給付金が受け取れるしくみだ。
しかし93日を超えると雇用保険からの給付もストップ、収入が途絶えてしまう。
この保険では、月収を上限に、雇用保険からの給付が終了した後も保険金が支給されるので、休業が長引いた場合の収入がカバーできる内容になっているのだ。
しかし、現状では企業と契約する団体保険の特約として販売されているため、誰でも加入できるわけではない。
保険会社の商品設計は損をして得を取るという発想はない
介護関連の新商品はこれからも発売されるだろうが、民間保険会社から発売される保険商品は、上記2例のように加入者を限定するなど、保険会社が一定の利益を確保できる設定でしか商品は投入されない。
介護にまつわる経済不安に対応するためには、将来を見据えた貯蓄方法を確立する自助努力はかかせない。(執筆者:釜口 博)