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奨学金地獄の知人をみて願う 大卒=正社員の時代に幕。自分のタイミングで大学に行ける社会にしてほしい。

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奨学金地獄の知人をみて願う 大卒=正社員の時代に幕。自分のタイミングで大学に行ける社会にしてほしい。

奨学金問題


今や、日本の大学生の半数が「日本学生支援機構」の奨学金を利用しています。

ところが、返済不能に陥って信用情報に遅延情報が掲載される、いわゆる「ブラックリスト」入りしてしまったり、返済のために生活がままならなくなる若者も急増中

もちろん、奨学金の毎月の返済額は収入が低くても返済できるよう負担の少ない金額に設定されているので「奨学金問題」は本人の自業自得という側面もあります。

しかし、本人や家族の病気やケガ、失業などで返済できない経済状況になってしまう若者が存在するのも事実です。

「奨学金ブラック」に陥った知人

今回は「奨学金ブラック」に陥ってしまった知人の体験をお話していきます。

登場する「A子さん」は、将来のあなたの子供の姿も知れません。

奨学金を借りること、そして返済していくことについてじっくり考えるきっかけにしていただけると幸いです。

母子家庭で大学進学

A子さん(31歳)は母子家庭で経済的に苦労することもありましたが、小学校時代から一生懸命勉強をして、私立大学に合格することができました。

家計は厳しい状態でしたが

「今はだれでも大学に行く時代だから」

と、母親は娘の進学を後押ししました。

母親には、授業料や生活費を全額仕送りしてあげられる余力ないので、当然のように日本学生支援機構の「有利子奨学金」を申し込みます

もちろん、奨学金だけでは足りないので週に5日間のアルバイトもこなします。

そうやって、二人三脚で無事に大学を卒業しました。

卒業後の返済

奨学金残高は312万円、毎月の返済額は1万5,504円でした。

彼女は学生時代のアルバイトを通じて接客業に楽しさを見いだし、飲食店に正社員として就職しました。

彼女の就職した会社には、健康保険や厚生年金制度がなかったため、総支給額16万円から、国民健康保険料や国民年金、所得税、住民税を差し引いた額は

12万円未満です

親元から離れての一人暮らしだったので、アパートの家賃や光熱費、食費などを差し引くと奨学金の返済に充てるお金はほとんど残りませんでした。

それでも最初の数か月は、順調に1万5,504円を支払えました。

徐々に苦しくなる生活


数か月が過ぎると、返済は預金の残高不足で引き落とし不能になりました。

その頃、学生支援機構の奨学金の滞納に対する督促は、今ほど厳しくなかったため、忙しさを理由に放置していました。

そして、いつのまにか奨学金の滞納額は50万円を超えました

押し寄せる督促状に窒息しそうな毎日

奨学金を返済しなければならないことは重々承知していましが、

「なんとかなるんじゃないか」

と思っていたのも事実です。

全額支払うようにと言われても、50万円もの大金は手元にある訳もありません

実家の母親に頼ろうにも、彼女の母親も「生活していくのがやっと」という状態です。

彼女は、日本学生支援機構、そして業務を委託された「債権回収会社」からの督促の電話にも出ず、督促状は見ずに捨てるようになりました。

実家と保証人に督促状が届く

いくら奨学金の返済を無視しても、奨学金には「保証人」が存在するので、実家や保証人に連絡がいくだけです。

彼女の母親は、債権回収会社からの電話で初めて「奨学金滞納」の事実を知り、

保証人への連絡をストップしてもらえる

と言われ、慌てて数万円を振り込みました。

奨学金の保証人はA子の叔父でした。

お金で親戚に迷惑をかけることだけはしたくなかった母親は、加入している生命保険の「契約者貸し付け」を利用してお金を借りたのです。

母子二人三脚での奨学金返済

実家や保証人にまで迷惑をかけたこと知りました。

学生支援機構に交渉をして滞納分も毎月2万円入金することで、一括返済を求めないようにしてもらい、彼女と母親で毎月1万円ずつ返済をすることにしました。

それでは滞納額は増える一方なので、2人ともお金に余裕ができるたびに追加で入金します。

毎月の給与が一定ではない上に生活が厳しいA子さん、固定給の仕事ではない母親には、月に1万円の返済も厳しい時がありましたが、

「毎月入金すること」

だけは維持したので、督促はされませんでしたが、滞納額もほとんど減らない状態が続きました。

A子さんの転機


彼女が30歳を迎える頃、転機が訪れました。

結婚をして住宅ローンを組もうと思ったのです。

ご主人の収入だけでは希望する家は建てられないと言われ、夫婦の共同ローンを組むことにしました。

しかしA子さんの信用情報には、度重なる奨学金の返済遅延情報が掲載されています。

住宅ローンの審査が通らないことを不思議がるご主人に彼女はやっと、奨学金のことを正直に話しました。

家の前に借金返済

ご主人の提案により、家のための貯金を下ろして滞納額を減らしたうえで、日々の生活を切り詰めて少しでも余裕ができたら日本学生支援機構に入金しました。

1年後、滞納はゼロになり、毎月口座から1万5,504円のみ引き落とされる「本来の状態」に戻りました。

奨学金完済まで、あと8年です。

奨学金問題の根本

奨学金を滞納したせいで苦しい思いをしたのは事実です。

彼女の毎月の返済額は1万5,504円なので、それを返済できないのは怠慢と言われてもしょうがないでしょう。

奨学金問題を考えると、「高校卒業したらすぐに大学に行くこと」が当たり前になってしまった日本社会に行きつくように思えます。

経済的に余裕がない家庭の子供たちが、全員大学を諦める必要もありません。

しかし

「高校を卒業して借金をしてまですぐに大学に行く必要があったか」

という疑問もでてきます。

大卒=「正社員」という時代ではない

昔は大学さえ卒業すれば「正社員」として終身雇用されていましたが。今では大卒の派遣社員や契約社員、そしてアルバイト社員も珍しくありません

大学を卒業しても、安定した仕事が手に入るとは限らないのです。

経済的に厳しい状態で「みんな大学に行くから」という理由でなんとなく大学に進学する必要はあるのでしょうか。

大学は自分のタイミングで行けばいい


「自分の好きな仕事をしながら大学進学資金をためる」という選択肢があってもよいのではないかと考えます。

・ 結婚をして子供を産んでから大学に進学する

・ 多くの仕事を経験してから学びたいことを決める

・ 働きながら夜間大学に通う

・ 通信制大学で学ぶ

人生の中で「大学」という学びというステージを、自分の好きなタイミングで設置できる柔軟性があれば、多くの奨学金問題が解決するのではないでしょうか。

働き方の多様化が進む中で「何度も学ぶチャンス」が出てくるのも事実です。

働き方や学び方、子供の産み育て方などの選択肢が増えて、誰しもが無理なく「生涯を通して学べる社会」に変化していくことを願います。

現実的に奨学金問題を解決する方法


有利子の奨学金を借りる前に「給付奨学金制度」や国立大学の「授業料減免制度」の支給対象かどうかを確認しましょう。

日本学資支援機構の奨学金には、

・ 経済的に厳しい家庭向けの返済不要な「給付型奨学金」

・ 国立大学には、経済に困窮していて一定の成績を保っている学生向けの「授業料減免制度」(返済不要)

が用意されています。

高校時代の成績や、大学入試の成績が優秀であれば、授業料が無償になる私立大学も多数あります

今、自分たちが受けられる公的扶助などをすべて把握した上で、大学在学中のマネープランを立てるようにしましょう。

奨学金の返済は「子」と「親」が負担する

奨学金の返済を子供が全額担うことが多いですが、子供だけではなく親も負担してみてはいかがでしょうか。

1人より2人で返済したほうが、お互いの負担が減るので返済しやすくなります。

子供が奨学金返済で困り果てる前、返済をスタートした時に二人三脚で返済することを決めていれば、「奨学金破産」のような悲劇を起こすことなく、淡々と返済が進むはずです。

毎月3万円の返済も、2人で分担すれば1万5,000円。

卒業して数年は給与が低く返済に苦しみますので、その時こそ親御さんの出番だと思います。

延滞したら支払い計画を相談

日本学生支援機構の奨学金は、

「訴訟を起こされる」
「一括返済を迫られる」

など物騒なお話を目にしますが、実際には延滞から逃げずに相談をすれば法的手段を行使することはほとんどありません

半年から1年延滞している方は、まず日本学生支援機構や債権回収組織と電話で話をしてください。

「滞納しているが、一括返済は厳しい。毎月2万円ずつ入金するから待ってほしい」などと具体的な返済金額を提示して、実際に定期的に入金しましょう。

延滞額が大きい場合は、毎月1~2万円の入金では延滞部分を解消できるまでに、長い時間がかかります。

地道に返済を続ければ、延滞が解消されて「口座引き落とし」で奨学金の返済が出来るようになります。

「返還期限猶予制度」や「減額返還制度」も用意されていますので、現状を正直に話して解決策を一緒に考えてみてください。


逃げるより、助けを求める

学生時代の奨学金で苦しんでいる方、そしてその家族は逃げずに何らかのアクションを起こしてみてください

一括返済を迫られてからでも、彼らは話を聞いてくれます。

今から奨学金を借りて進学しよう考えている方は「公的扶助」や「給付型奨学金」の対象にならないか今一度確認してみましょう。

そして、奨学金の返済は「子供」だけではなく「親子の共同作業」だと考えて、双方の負担を軽くして、生活に支障をきたさない返済計画を立ててみてはいかがでしょうか?(執筆者:平林 亮子)

《平林 亮子》
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平林 亮子

小さな商社から損害保険会社に転職後、結婚、妊娠を経て専業主婦になりました。今はライターとして保険、税金、美容関係の記事を執筆しています。趣味は貯金!特技も貯金!節約から株式投資まで、資産形成のために奮闘中です。 寄稿者にメッセージを送る

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