文房具などの備品から交際費、出張旅費にいたるまで、会社の経費を自分の財布から立替払いをした経験は誰にでもあることと思います。
中には、クレジットカードやポイントカードを賢く使ってポイントがたまるように工夫している人もいるかもしれません。
ここで気になるのが「会社経費で貯めたポイントを自分のものにしていいのか?」ということ。
今回は、ポイントに関する法律的な考え方や注意点について解説します。
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目次
個人名義の場合:原則問題なし、ただし内容次第
会社の経費を立替払いした場合、イチバン気になるのが税金的な問題です。ここでは「その経費支払が個人名義か法人名義か」が判断基準となります。
個人名義で立て替えた経費支払については、原則として税金面でも問題になりません。
なぜかというと、カードの名義が個人だからです。その方法がクレジットカードであれ現金であれ、個人のポケットマネーで立て替えたに過ぎません。
ただし、以下のような例外もあります。
・会社の就業規則で「経費立替によるポイントは会社に帰属する」旨が定められている場合
・社宅や高額備品の購入により高額ポイントが加算された場合
・頻繁な出張や経費立替など、「一時的」と見られない場合
以上のようなケースでは、ポイントは会社に帰属するのが自然と考えられます。
そのため、会社役員ならば「役員賞与」、会社従業員なら「給与」に該当する可能性があります。
「役員賞与」「給与」に該当する場合、源泉所得税が課されることになるので、より多くの税金が個人から徴収されることになります。
さらに、役員賞与とみなされた場合、法人税法上の損金とならないため、税金的には損することになります。
また、税金以外の問題では「業務上で得た会社のポイント(資産)を無断で私的に着服した」という観点から、刑法の業務上横領に該当する可能性があります。
この場合、通常の横領罪では5年以下の懲役で済むところ、より悪質な犯罪とみられるため、10年以下の懲役になります。
法人名義の場合:業務上横領に該当、さらに源泉所得税が課税
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では、会社経費を法人名義の契約やカードで支払い、そこでたまったポイントで個人の私物を購入したらどうなるのでしょうか。
この場合は、経費により得たポイントが会社に帰属することが明白となるため、刑法上は業務上横領に該当します。
また、税金面では、「役員賞与」あるいは「給与」に該当し、法人税法及び所得税法上、損をすることになります。
プライベートで使う前に会社の就業規則などの確認を
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とはいえ、ポイントは100円で1ポイントしか貯まらないレベルのものもあれば、一生かかっても使いきれないポイントもあります。すべてがすべて、業務上横領として訴えられるとは限りません。
だからといって、会社経費で貯まったマイレージでプライベート旅行するのも何ら問題ないとは言いがたいものです。
ポイントに関する税務上の明確な規定はありませんが、問題が大きくなれば、認定賞与とされる可能性も否定できません。
刑法的にも税法的にもなるべく問題が発生しないようにするには、ポイントを使う前にまず会社の規約を確認するとよいでしょう。(執筆者:鈴木 まゆ子)