昨年一気に高騰したことで話題を呼んだ仮想通貨。
以前は20~30代が投資の中心でしたが、今や現役世代だけでなく、高齢世代も関心を寄せています。
中には「相続や贈与に使えるんじゃないか」と考える人もいるようです。
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目次
あらためておさらい! 「仮想通貨」って何?
仮想通貨は、「通貨」という名称ではあるものの、日本円やドルのような通貨ではありません。
資金決済法により、不特定多数の者の間で活用できる支払手段として位置づけられていますが、実態はブロックチェーンという仕組を使ったデータのやりとりになります。
送金のスピードの速さや決済手数料の安さから注目を集めるようになりました。
また、一部富裕層からは資産の避難手段としても重宝されています。
仮想通貨を子や孫に贈与したら、贈与税はどうなる?
仮想通貨は常に価格変動をするものです。
そのため、基本的には「贈与をした時点での時価がいくらか」で贈与税の有無や価格が決定されます。
贈与の時点は「秘密鍵(パスワード)を教えた」あるいは「相手のウォレットに送付した」時点となります。
贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。
今回は贈与の形態として一般的な「暦年課税」を前提に例をあげて解説します。
例1
2017年8月4日に2ビットコイン(贈与時の1ビットコイン当たりの時価:50万円)を21歳の孫に贈与した。
この場合、贈与額は
になります。
暦年課税を適用するならば、非課税枠110万円内に収まることになります。したがって贈与税は発生しません。
例2
2017年12月15日、2ビットコイン(贈与時の1ビットコイン当たりの時価:200万円)を25歳の孫に贈与した。
この場合、贈与額は
となり、非課税限度額110万円を超えているため、贈与税が課税されることとなります。
この場合、祖父母から20歳以上の孫への贈与ですので、贈与する2ビットコインは特例贈与財産に該当するため、適用する税率は15%、控除額は10万円です。
したがって、贈与税の金額は次のようになります。
結果、ビットコインを受け取った25歳の孫は2018年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告を行い、50万円の贈与税を納めなくてはなりません。
なお、もしこの贈与の対象が「直系尊属・卑属間の贈与」かつ「贈与を受け取る人が贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者」という条件を満たさない場合、このビットコインは一般贈与財産として適用税率20%、控除額25万円に変更されます。
以上は「暦年課税」を前提とした事例です。「相続時精算課税制度」ならば2,500万円まで非課税となります。
ただし、贈与側と受贈側が直系尊属・卑属に限られる、その関係では二度と暦年課税は使えない…など、条件が厳しい制度なので、事前に十分に検討することが必要です。
贈与税だけでなく所得税の配慮も必要
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ビットコインを贈与した場合、受け取った側は、場合によってはさらに納税をしなくてはならないこともあります。
受け取った側がそのままビットコインを保有せず、値上がりした時に売却した場合、あるいは値上がりしたビットコインで買い物などをした場合にはその差益部分については所得税の確定申告が必要になります。
「今後の第三の通貨」として注目を浴びる仮想通貨ですが、依然として価格変動はきわめて激しいもの。
安易に贈与対象とするのではなく、受け取った側の性格や生活面を配慮した上で、贈与するにふさわしいかどうかを検討していただければと思います。(執筆者:鈴木 まゆ子)