仮想通貨価格が2018年4月、大幅に下落しています。
利益を狙いたい投資家としてはあまりうれしくない状況ですが、一方で「低迷はチャンス」と考えて贈与を検討する人も少なくありません。
確かにチャンスではあるのですが、注意点もあります。
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目次
コインチェック事件に世界的な規制強化の嵐
ビットコイン価格は3分の1に
仮想通貨人気が沸騰した2017年とは対照的に、2018年は仮想通貨の価格が軒並み下落しています。
コインチェックでのNEM流出事件や世界的な仮想通貨規制強化の影響で投資家心理が冷え込んだのが背景にあります。
売買も昨年ほど行われてはいないようです。
その一方「価格低迷の今こそ贈与のチャンス」と考え、子や孫へ仮想通貨を譲ることを検討している人もいます。
2017年200万円だったビットコインも今は70万円台となり、仮に同じ1単位を贈与しても暦年課税制度の非課税枠110万円以内で収まるからです
上手に活用すれば確かに節税しながら贈与すべきいいタイミングとなるのですが、このときでも注意をしないと後で納税する破目になってしまいます。
暦年課税制度で仮想通貨を贈与する場合には、次の2つのポイントに気をつけましょう。
仮想通貨「贈与」での注意点
【注意点1】贈与契約書を作成しよう
1つ目の注意点が「贈与契約書を作成すること」です。
贈与は法律行為の一種であり、成立するためには贈与する側と受贈する側の双方が「あげます」、「もらいます」と贈与について合意していることが必要です。
この贈与の合意については民法上、口頭でも成立します。
ただ、後日発生するかもしれない税務調査などを考えた場合、書面で残しておく方がより安全です。
贈与契約書ではあげる側ともらう側の双方の自筆のサインと実印での押印を行えば、贈与の事実の証拠となります。
ただ、これだけではまだ心もとないのです。
なぜかというと、双方の恣意によっていくらでも金額や日付を動かすことができると税務当局からは疑われるからです。
そのため、贈与契約書を公正証書にしておくのがもっとも望ましいと言えます。
なお、贈与契約書を作成する場合、贈与時の仮想通貨価格を記録した書類(主たる取引所の仮想通貨の相場チャートなど)も証拠として一緒に残しておきましょう。
【注意点2】名実ともに相手の所有に変えること
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2つ目に大事なのが「仮想通貨を名実ともにもらう側の所有に変えること」です。
たとえば、贈与契約書を作成し、仮想通貨の秘密鍵が入っているハードウェアウォレットもあげたけれど、肝心なパスワードやリカバリーフレーズをもらう側が知らないとなれば、贈与が成立したことになりません。
この状態を放置すれば、後々、仮想通貨の持ち主が亡くなった際、贈与したはずの仮想通貨は被相続人の所有とみなされて相続財産に加算されることになります。
つまり、「贈与したつもりが成立していなかったので相続の対象になってしまった」ことになるのです。
きちんと相手がもらった仮想通貨を自分の意志でコントロールできる状態にしておきましょう。
さいごに
「ピンチはチャンス」といいます。
仮想通貨価格が低迷している今、見方を変えれば贈与のベストタイミングです。
上記の点に注意して、節税しながら贈与を行いましょう。(執筆者:鈴木 まゆ子)