中学受験の塾代に高額な費用を使っては、見学会や説明会で気分が向上し、頑張って勉強して合格を取りますよね?
その後せっかく合格したのに、ある日突然、お子さんから退学したいことを打ち明けられる…
そして事情を聞いたうえで、「学校内の交友関係や校風が合わない」という理由で学校をやめることが非常に多い点は、この数年変わらないです。
しかし最近は、お子さん側の問題ではなく、大人の金銭面の問題で自主退学を申し出るケースが増えています。
入学して1年にも満たずに退学していくケースも多く、なぜなのかを公的な調査に沿いながら解説していきます。
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目次
公的な調査をまず見てみましょう
文部科学省では2年に1度、公立または私立の幼稚園、小学校、中学校、高校(全日制)に通学させている保護者に対して、1年間の子どもの学校教育および学校外活動のために支出した1年間の経費実態を把握するために「子供の学習費調査」を平成6年度から2年おきに行っています。
最新版は平成28年度版になり、調査結果が文部科学省のホームページでも公開されています。
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調査項目は、
(学校教育費、学校外活動費)
「世帯の年間収入」
で、回答有効数は2万3,706人と公表されました。
1. 総額でみた場合の結果
調査結果を見ると、
学習費総額(保護者が子供の学校教育や学校外活動のために足した経費の総額)は、
公立中学で47万9,000円
という結果が出ています。
2年前に行われた「平成26年度子供の学習費調査」では、私立中学校の学習総額は133万8,000円と発表されていて、今回やや減額したものの、ほぼ横ばいとみていいでしょう。
2. 大きく差が出ている学校外活動費
学校外活動費とは、保護者が子供の学校外での勉強のために使うお金です。
・家庭教師費用
・通塾費用
・通信教育の利用費
は、学校外活動費の中でも「補助学習費」として扱われて、統計が取れています。
私立中学生では、平成28年度の調査から学校外活動費をみると
中2: 30万8,000円(補助学習費:20万1,000円)
中3: 37万7,000円(補助学習費:23万4,000円)
と、学年が上がるたびに学校外活動費は上昇しています。
これは、学年が上がるたびに、塾や家庭教師を利用しているのではないかという結果がでています。
習い事(スポーツや芸術面の習い事)を極めるために、多くの費用を出しているご家庭もあります。
しかし一方で、「私立中学校特有のある問題」と「親の経済面での問題」の両方で退学を余儀なくされるというご家庭も出始めています。
私立中学校での指導面から見てみましょう
1. 成績面からくる予想外の出費問題
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私立中学校のほとんどの学校は、中高一貫校ですが、中学時代に赤点が多すぎる子や、素行が悪いと上の高校へ進学させないということがあります。
小テストを毎日行なって、テストの結果の変動記録は学校側が管理しており、最終的には、全てのテスト関連の成績は、生徒指導部などで管理されます。
「私立学校で塾に通うのは不要」と、入学式に言われる学校はありますが、あまりにも成績が悪い子については、学校側で補講を行う場合もあれば、塾に通うよう指導される場合があります。
しかし私立中学生は、公立中学生と使っている教科書や指導速度が違うという点で、受け入れてくれる塾が少なく、家庭教師や個別指導塾に通うケースがほとんどです。
私立中学合格後に、家庭教師や個別指導塾などを考えてもいなかった中1・中2生のご家庭からすると、予想外の出費となります。
中3生でさらに金額が上昇するのは、「学校の授業だけでは足りない」という点や「校風に合わない」と感じるご家庭が、別の高校へ進学させるために塾に通わせるということもあったりするので、他学年よりも出費を重ねて行きます。
2. 新年度での値上げと新教育システムの導入問題
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名門校と呼ばれる学校では、ほとんど学費の変動は見受けられませんが、学校もひとつの企業ですから、経営問題から新年度に授業料などを値上げするケースがあります。
私立校では授業料などの値上げをすることは少ないですが、まれに行うケースもあります。
いちおう前年度に保護者宛に告知されるので、準備する期間はあるものの、ギリギリで教育費を用意している家庭にとっては痛い話です。
最近では、ICT教育というタブレット端末やパソコン、電子黒板を使った新教育を導入する学校が増えていて、端末を自費購入するケースが多いことや、ICT教育の影響で設備費が値上がりすることがあります。
後付けで「この費用はいくらかかっていますよ」と説明を受ける場合もあって、どこまで費用がかかるのかという不安から、退学を考えるご家庭もあります。
3. 最大の問題。親御さんの会社のリストラと倒産問題
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「学費を支払うのが父親」というケースが多いと思いますが、昨今はいきなりのボーナスカットで、貯蓄の計画が狂うということがあります。
さらに共働きをしていても、どちらかの勤め先でリストラを受けたり、会社が倒産してしまったというケースになると、生活費の確保最優先となって、学費を納めるのが難しくなり、子供さんを自主退学させるということになります。
学校側としては、どういう理由であれ支払いができないとなると、自動的に退学処分ということになります。
中途退学を避けるためにはどうすればいいか?
中学受験準備中は「志望校に合格させる」という考えしか出てこないでしょう。
しかし入学後、自分たちの今の家計がどう変動するかわかりません。
中学受験の通塾でかなりのお金を使うということと同時に、志望校でいただける資料に「1年間必要とする費用の概算」が出ているので、そこから上の高校まで出していけるかを、親御さんで一度シュミレーションしてみましょう。
特にまだ住宅ローンや車のローンと、各種ローンを持っているご家庭は、さらに子供を私立校に通わせることができるかを、年表を書いてシュミレーションするのもひとつの手です。
それよりも、子供さんを志望校の見学会や入試説明会に必ず連れて行って、子供さんが「ここで勉強したい!」と思う学校であれば、親御さんとしても何があっても通わせたいという気持ちがあがります。
まずは、親御さんが中学受験合格を最優先に考えるのではなくて、その先にある合格後の世界を先に考えて、教育費を固めておく必要があります。
まとめ
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私立中学はまだ義務教育中ということで、授業料が高額になっても、支援金制度では「焼け石に水」という状況になるため、経済面で退学するケースが徐々に増えています。
私立中学の考え方としては、中学からの教育で有名大学へ進学させたいという考え方があるので、学校の授業だけでは無理だというケースが出ます。
そのために通塾させるということになるのですが、ご家庭のお金の問題と、子供さんの「もうこれ以上はしんどい」という気持ちが重なれば、中途退学をさせるしかないと考えます。
私ごとながら、クラスの子供さんでもすでに退学者が出始めています。
学校側も考えるかとは思われますが、様々なご家庭が通う私立校なので、親御さんの負担にならないような授業料などを考えてもらいたいものです。(執筆者:笹倉 奈緒美)