2020年に大学入試改革が行われて、「センター試験」は廃止されて、各学校で入試を受けることになります。
入試改革の一番の目玉として、「英語の入試改革」で、すでに入試システムに変更が行われていて、筆者の近所に住む高校生(公立)の子から話を聞くと、急に変わった英語の指導方法に戸惑いをみています。
その中で、古くからの超難関校の生徒さんが、海外の有名大学に進学希望を出して、毎年1~3人入学している学校があります。
もちろん、超難関校在籍の生徒さんではなく、海外に興味があり、海外の大学で勉強をしたいという生徒さんが増えつつあります。
しかし、学費・生活費はもちろん、日本でしておくことや入試制度、仮に合格してからの生活の違い、奨学金制度について、知っておく必要があります。
我が子が海外大学進学を希望した時に、必ず話し合いをして欲しい問題です。
「我が子には関係はない」という方も、今後の教育のゆらぎを知ってもらえれば幸いです。
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目次
大学卒業後から高校卒業後に海外大学進学へシフト
以前は、有名大学から海外の大学で、研究したい分野の視野を広がるために、海外大学進学希望者が大半でした。
しかし、高校在籍中に志望大学を「海外の大学にしたい」という生徒が出たのが、つい最近の話ではなく、2000年前半に出始めて、学校でもサポートする制度はありませんでした。
関西で私立トップ校の「灘高」出身で、「プレジデント Family 2018年号」で、海外大学の進学問題について、インタビューを受けている生徒さんの話を少し紹介します。
在学中に東大受験を考えていたものの、海外の大学で勉強したいという気持ちがあり、2004年東大とハーバート大学のダブル合格をしてから、最終ハーバート大学に留学しています。
卒業後は帰国し、中高生向けの海外留学・進学を支援するNPO団体を運営しています。
この生徒さんの例を読んで、「お金がないと、何もできないのでは」と考えられる方は多いはずです。
しかし、学校によっては、国籍を問わず、「個性と実力」を重視して、受け入れている海外の大学は多いです。
入学試験がない。その代わりに厳しい条件あり
入学試験がない代わりに、書類選考が全てになります。
選考に必要とされているのは、
・ SAT(大学進学適正試験)
・ 生徒会活動・部活記録・コンクールなどの課外活動記録
・ 学校からの推薦状
・ エッセイ(作文・もちろん英語)
・ TOEFLなどの英検以外の英語検定のスコア(除外される学校もあり)
基本としては、これらが必要となり、最近はネットで志望大学へ資料を送るところがあります。
どの海外の大学も重視するのは、GAPとSATの結果に注目をしますが、海外の大学入試担当者は、日本の高校のレベルを把握しているので、他に注目するのはどこでしょう?
ハイレベルの海外大学では、課外活動記録・エッセイ・推薦状・場合によっては面接(大学のOBやOGが面接官です)の評価で、合否がきまります。
エッセイのテーマは「あなたは誰ですか?」、「あなたはどんな人物ですか?」という、一見不思議に感じるテーマが出題されますが、「自己分析ができていて、その結果を、英語で表現できる」ということを、学校側は見たいわけです。
受験生が一番ここで頭を悩ませるところで、主観的に書くか、客観的に書くかで悩まされると言われています。
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合格通知が来てからかかる費用と手続き
基本は、入学金を大学に納めることはありません。
ただし、入学先の国や大学で大きく変わります。
例えば、アメリカの大学へ進学が決まれば、州立大学は私立大学より安いのですが、滞在都市などで、大きくかわります。
学費のほかに、滞在費(ホームスティや大学寮利用など)、食費などの生活にまつわるお金がどのぐらいかかるか、見えてこないということもありますが、医療保険やビザ・パスポート取得代などを含めて計算すると、最初の1年間で最低300万円(1ドル120円と計算しています)は用意する必要があります。
在学期間は4~5年が標準期間ですが、大学院に残りたいということになると、在籍期間の制限がなくなり、日本の大学在籍時の費用と差が出なくなるということになります。
海外の大学院は、社会人からでも入学できるので、刺激になるという生徒さんの話もでています。
奨学金制度はあるのでしょうか?
進学先で奨学金を受けて、学費に影響が出ないことはありますが、よほど優秀な生徒さんでなければ、受けることができません。
また、日本国内で奨学金を受けることはできますが、現在文科省で「トビタテ!留学JAPAN!」と奨学金制度を設けていて、募集をしています。
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ただし、このプログラムを利用するには、英語取得のみに重点をと考える生徒さんは利用できないので、他の奨学金制度を利用することになります。
個人だけでは難しいので、コーディネイト会社を利用することを考えて
海外の大学留学は、日本では考えられないプログラムがあり、ついていけずに、途中で帰国する生徒さんは少なくありません。
問題となっているのは、学費面の問題でもありますが、「現地の習慣になじめない」、「積極的に仲間に入れない」ということで、ひとりぼっちになって、日本へ帰国するケースがあると言われています。
筆者も、高校時代にカナダに1か月半英語研修旅行に参加したことがありますが、積極的に現地の人と会話ができなければ、日本の生活が恋しくなります。
ある海外留学・進学の取次をしている大手コーディネイト会社によると、進学に成功して帰ってくる子は、進学時に低かったとしても、現地での過ごし方で差が出ていると話しています。
私立高校では、特別に海外進学を支援する部署はないけれど、留学で海外の様子を知ったクラスメイトから話を聞いて、決める子が多いことを、「プレジデント Family 2018年春号」でも紹介されています。
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自分一人では、ビザ取得が難しかったり、国によっては、留学生がアルバイトをしてもいいというプログラムを導入しているところもあるので、それらのことを知るためと、進学先にミスマッチが出ないように、コーディネート会社を利用するのもいいでしょう。
今後の大学進学について
今回は、海外大学進学について紹介しましたが、2020年の大学入試改革が、本格的にスタートすると、一部の高校生や浪人生の海外大学進学が加速する可能性はあります。
奨学金が使えるとはいえ、進学先の大学の奨学金が使えるという保証がないため、日本で奨学金を工面する必要もあります。
一時期、文科省が成績優秀者に対して行っていた「返済不要」の学費支援制度があったのですが、今は別のシステムに切り替わっているので、親御さんで、大学進学経験者の方でも、最新情報はしっかり手に入れるようにしましょう。
最後に、「日本の大学なんて海外よりダメじゃないの」と思われている方はいらっしゃいますが、現在アメリカやイギリスの大学に在籍している学生が、学費を払えず、奨学金にも申し込めないという問題が出ています。
日本では、奨学金の返済問題が深刻化しているので、どちらの大学がいいかということは、コーディネーター会社としっかり話し合って決めてください。(執筆者:笹倉 奈緒美)