銀行で融資を受ける場合、金額が大きくなれば事業資金でも、そして住宅ローンやアパートなどの収益物件のローンなど、銀行に不動産を担保とするのが一般的です。
今回は、アパートローンを例に、担保となる不動産を銀行員がどのように現地調査しているのか、その一端をご紹介します。
また、昨今シェアハウス問題で銀行の担保調査についても悪い部分がクローズアップされており、同じ業種に勤める者としては残念に感じているところです。
今回、何が問題だったのか? などについて私見ではありますがご参考になればとの思いもありこのテーマとしました。
銀行の担保調査は、手法やノウハウなど秘中の秘に属する部分もあり、また各銀行によって基準など違いますが、共通する部分や皆さんが不動産を自分で見る時参考になりそうなポイントなどについて、銀行員として担保調査をしてきた私の視点からお教えします。
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目次
現地調査の段取り
今回はアパートローンを例にします。
中古アパートの売り物件があり、銀行に購入資金のローンを申し込んだ。住人が居住中のいわゆるオーナーチェンジというケースです。
事前準備~現地調査の前に必要なことをあげていきます。
準備その1.所有者や住人の承諾無しには調査しない、調査できない!
銀行に限ったものではありませんが、不動産の調査には当然ながら所有者や関係者の承諾が必要です。
建物の中や室内にまで立ち入ることはありませんが、下記は調査の必須事項です。
(1) 最低でも敷地の中には立ち入って調査する
(2) 入居率の把握に必要なことがらは入念に調べる
(3) 敷地の周囲も歩いて調査する
(4) 写真撮影は必須(上記(1)~(4)については詳細後述します)
万一所有者の事前承諾を得ていなければ警察への通報や、最悪不法侵入で訴えられるかも知れません。
また、アパートのように住人がいる場合など、その住人への配慮も必要になります。
オーナーの許可はもらってあっても、現地に行ったら住人に「勝手に写真を撮るな」、「勝手に立ち入るな」と怒られたりするからです。
賃借人とはいえ、自分の住むところに見知らぬ人間が突然やってきて、しかも写真まで撮っている。怒って当然です。
こうしたトラブルを防ぐため、銀行では現地調査の事前承諾を入念におこないます。
実務的には不動産屋などの仲介業者にオーナーや住人にネゴしてもらいます。
さらに必要な場合業者の人間に、現地調査への立ち会いを依頼することもあります。
現地調査は入念な作業が必要で、コソコソおこなうものではありません。
もちろん、(他行ローンの借り換えなどで水面下の調査する場合)事前承諾なしに調査するケースもあります。
ただしその場合、敷地は遠くから見るだけ。むやみに立ち入ったりしませんし、もちろん絶対に写真は撮りません。
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先輩銀行員から聞いた体験談
現地調査で、オーナーや住人など関係者の承諾は全く問題なかった。
現地調査は順調にすすんでいたが、突然数人の男子高校生に囲まれ「あなた何してるんですか?」と詰問されてびっくり。そのあと先生まで出てきて…
銀行のもので、現地調査に来たことなどを説明して事なきを得ましたが、ふと見ると、なんと現地の隣が高校だったそうです。
男子生徒はてっきり校内を盗撮している変態だと思い見張っていたそうです。
先輩は調査に必要な写真を撮影しただけですが、運悪くカメラが学校に向いていたそうで、騒ぎになったとのこと。
ダンディーな先輩で決して変態には見えません。本人は笑って話していましたが、もし自分だったらと、聞いているほうは結構冷や汗ものでした。
なぜなら私、外見が(外見だけです!)スケベ親父な点には自信がありますので…。
準備その2.現地まで車で向かうことが調査の始まり
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調査は車を使って現地まで行くのが原則です。
電車のように移動時間が制限されず、また次の現場にもすぐ行ける、など自由度が高いからです。
そしてもうひとつ理由があります。それは道路です。
当然ですが、道路がなければ現地にはたどりつけません。
都会人にはイメージしにくいかも知れませんが、山間部など道路に接していない土地が結構あるのです。
建築基準法などの法律によって、土地が道路に接していないと建物を建築することはできません。
仮に今、そういう土地に建物があったとしても、それは何らかの特別な措置かもしれませんし、場合によっては無許可・違法建築かもしれません。
銀行は違法な建物や道路に接していない土地は担保にしません。
次に売ることができないからです。
自動車で現地に行くと、まずこの問題ある程度チェックできるます。
つまり車で現地までちゃんとたどり着ければ、その土地は道路に接しているといえるからです。
もちろん、表面上道路に見えても実は他人の土地だったとか、法律で定められた道路ではなかった(私道など)など、問題が全くない分けではありませんが、少なくともその土地まで何らかの道は通じているといえるわけです。
自分で不動産を見るとき、こうした視点で現地に向かうのも良いでしょう。
現地へは案内のアクセス方法どおりに向かう(徒歩の場合)
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不動産の案内に「〇〇駅から徒歩△分」と書いてあるなら、そのとおり駅から歩いて現地に向かいます。
この場合いくら便利でも車は使いません。
交通の利便や住環境、公共施設の有無など特にアパートでは重要になってきます。
もちろん銀行は担保の値踏みをするだけなのですが、現地調査の際にはあくまで
「自分ならこのアパートに住みたいか?」
という視点で見ることが必要です。
例えば、歩いて現地に向かうだけでもチェックできることはいくつもあります。
現地までの所要時間はあっているか?
不動産業界では
です。大幅に違っているなら、案内自体の信憑性が薄れます。
現地に向かう時はゼンリン地図や地図アプリなどで比較しながら向かう
繰り返しになりますが、アパートなどの収益物件は最寄り駅からの距離、利便性が重要です。
パンフレットの案内図とゼンリンやアプリとを比較して案内があまりにも違っているようなら、そもそも物件の前評判自体が怪しいともいえるのです。(執筆者:加藤 隆二)