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借金のイメージがある奨学金
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そう思っている人も少なくありません。
貸与型奨学金は確かに返還しなくてはなりませんが、返還の必要がない給付型奨学金を利用している人もいます。
給型奨学金は日本学生支援機構だけでなく、大学独自や民間など多岐に渡っています。
今回は知っておきたい給付型奨学金の種類についてご紹介していきます。
1. 日本学生支援機構「給付型奨学金」
2017年より始まった日本学生支援機構の給付型奨学金。
奨学金というとイコール借金というイメージでしたが、この奨学金は給付型なので返済の必要がありません。
貸与型奨学金と併せて申し込むことも可能です。
ここでは給付型奨学金を申し込む上で、知っておきたい大事なポイントをご紹介します。
申し込み要件
在学状況について(次のいずれかに該当する人)
・大学、短期大学、専修学校の専門課程に進学を予定している高等学校等の最高学年(高等専門学校の第3学年)、または高等学校等を卒業後(高等専門学校の第3学年を修了後)2年以内の人
・高等専門学校第4学年に進級を予定している高等専門学校第3学年、または第3学年修了後2年以内の人
・高等学校卒業程度認定試験の合格者(合格後2年以内の人)、または出願者
注意点
・1度でも大学等へ入学したことがある人、及び高等専門学校第4学年に進級した人は申込めない
・高等専門学校の第4学年に編入学する人は支給対象外
家計等について(次のいずれかに該当する人)
・住民税非課税世帯(家計支持者の市区町村民税所得割額が0円の人)
・生活保護世帯の人
・社会的養護を必要とする人
以上の申し込み資格に該当する人の中から、各高等学校等が推薦基準等に照らして適格者を推薦します。
「給付型奨学生採用候補者の推薦に係る指針(ガイドライン)の概要」
・ 人物について
学習活動その他生活全般を通じて態度・行動が給付奨学生にふさわしく、進学の目的及び進学後の人生設計が明確であり、将来良識ある社会人として活動し、将来的に社会に貢献する人物となる見込みがあること
・ 学力、資質について
十分に満足できる高い学習成績を収めている
教科以外で大変優れた成果を収め、概ね満足できる学習成績を収めている
社会的養護を必要とする人であって、進学後特に優れた学習成績を収める見込みがある
知識量しか問わないテストの結果や特定の活動などに偏重せず、観点別学習状況の評価や学力の三要素の趣旨を踏まえた選考になっているか
※学力の三要素とは…「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性・多様性・協働性」
選考の際に考慮する就学期間
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高等学校在学者については1年生から2年生まで(既卒者は3年生まで)を基本とし、各高等学校等の実情に応じて3年生時の状況を選考に加味できるとされている。
家計については申し込み要件の内容を確認した上で、世帯の状況や生活環境などを勘案し、申込者の進学が非常に困難な状況にあると認められることが必要です。
また贈与税の非課税措置が適用される直系尊属からの教育資金一括贈与の受贈者かどうかも考慮されます。
給付型奨学金の支給額
支給月額は次のように決められています。
大学・短期大学・高等専門学校(4~5年)・専修学校の専門課程の場合
・ 自宅通学
国立 2万円(0円)
公立 2万円
私立 3万円
・ 自宅外通学
国立 3万円(2万円)
公立 3万円
私立 4万円
*国立で授業料が全額免除となる場合は()の金額に減額されます。
返還が必要になるケース
給付型奨学金だからといって返還の心配がないと甘く見ていてはいけません。
次のような場合は返還が必要になるため注意しましょう。
学業成績が次のいずれかに該当し、やむを得ない事由によるものであると認められないとき
・ 当年度の修得単位数が標準的な修得単位数の2分の1以下であるとき
・ 在学学校長が当年度の修得単位(科目)数が著しく少ないと認めたとき
・ 学校処分により給付奨学金の廃止(打ち切り)の処置を受け、その学校処分の内容が除籍、退学、無期停学または3か月以上の有期停学であるとき
となっています。
返還が必要となった場合は、学校を通じて返還誓約書が交付されます。
返還方法や金額などについては機構から直接通知が届きます。
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給付型奨学金採用候補者決定後の流れ
1. 採用候補者決定の通知は10月下旬頃に高等学校等を通じて通知されます。
しかしこの時点ではまだ採用候補者であって給付奨学生ではありません。
正式に決定となるのは進学してからです。
2. 進学後は学生課など担当課の指示に従い、決められた期限内に「進学届」を提出します。
これを提出しないと給付奨学生として採用されず、採用候補者としての権利も失うので気を付けておきましょう。
3. 進学先の学校を通して誓約書が交付されます。
給付奨学生として学業に精励することなどの約束を明確にする契約書で、署名・押印して提出しなければなりません。
誓約書も提出しないと給付奨学生の採用が取り消されるため注意が必要です。
在学中にも定期的な手続きが必要
毎年7月と10月にはスカラネット・パーソナルを通じて在籍状況と通学形態を報告する「在籍報告」を行う必要があります。
事前に学校から連絡がくるので、その指示に従って期限内にネット上から報告を行います。
更に毎年12月~2月頃にかけて「給付奨学金継続願」を提出します。
こちらも事前に学校から連絡があるので、決められた期限内にスカラネット・パーソナルを利用して提出するようになっています。
「在籍報告」や「継続願」が未提出の場合は給付奨学金の支給が止まったり、打ち切りになったりするので気を付けておきましょう。
2. 大学独自の給付型奨学金
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大学独自で募集している給付型の奨学金もあります。
ここでは早稲田大学独自の給付型奨学金をご紹介します。
「大隈記念奨学金」
創立者の大隈重信を記念し、人材の育成に資することを目的とした奨学金。
学業成績を重視し、各学部・各研究科・各学校の3種類の選考方法がある。
学部別選考の場合 … 各学部の成績上位者や公募による申請
1学年につき2名程度、年額40万円
「小野梓記念奨学金」
創立当初の功労者である小野梓を記念し、修学上特に困難な学生を援助することを目的とした奨学金。
学部481名、研究科188名程度、年額40万円
「校友会給付奨学金」
早稲田大学の卒業生組織である早稲田大学校友会の寄付からなる奨学金で、経済的に修学困難な学生を採用している。
採用者は校友会主催行事にボランティアとして協力参加し、校友との交流を深めること、また奨学生証授与式への出席が必要。
学部35名、年額40万円
主たる家計支持者の死亡・失職・疾病等、または火災風水害等によって家計急変が1年以内に発生したと認められる学生を救済することを目的とした奨学金。
春学期・秋学期 各40名、年額40万円
入試出願前に申請する奨学金
首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)以外の通信制を除く国内高等学校出身者で、学業の成績が優秀であるにもかかわらず、家計の事情で早稲田大学進学を断念せざるを得ない受験生を対象にした奨学金。
父母の最新の所得証明書記載の収入・所得全額を合算した金額が「給与・年金収入金額(控除前):800万円未満」「その他・事業所得金額:350万円未満」の者。
奨学金額と支給期間:半期(春学期)分授業料相当額(入学時納入金から免除)・4年間継続
※入学時納入金のうち入学金(20万円)、実験実習料、学生読書室図書費および諸会費の納入は必要です。また各学年で家計状況、学業成績による継続判定があります。採用候補者数約1,200名。
「紺碧の空奨学金」
児童養護施設やファミリーホーム入所者および出身者、または養育里親家庭で育った里子が経済的理由により早稲田大学への進学を断念することのないよう創設された奨学金。
奨学金出願時に満20歳未満で2019年度または2020年度の学部進学希望者で、入学後独立して生計を営む予定の経済的支援が必要な者が対象。
奨学金額と支給期間
・入学検定料および入学金の免除
・授業料、実験実習料等、その他諸経費を免除
・月額9万円を給付
原則として在学4年間の継続支援です。
※大学入試センター主催のセンター試験検定料は対象外です。
ほかの外部機関等からの経済支援を受けている場合や、国によって検討されている高等教育の無償化等の対象者となった場合は減額や停止する可能性があります。
また各学年で家計状況、学業成績による継続判定が行われます。
採用候補者数若干名。
3. 民間の給付型奨学金
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民間の団体でも給付型奨学金を募集しています。
ここではその一例をご紹介します。
・ 財団主催行事への出席を優先できる者。
・ 当財団の指定する大学で学部、研究科に在籍している正規学生であること。
・ 最短修業年限までの給費期間が1年以上見込まれる者。
・ 健康で学業成績、人物ともに優れており、在学する学校長の推薦する者。
・ 学費の支弁が困難と認められる者。
・ 採用後、三菱UFJ信託銀行(本店)に普通預金口座を開設できる者等、このほかにもいくつか要件あり。
・ 奨学金の金額と給付期間
大学生3万5,000円
大学院生5万5,000円
留学生大学生7万円
留学生大学院生10万円
奨学生として採用されたその年度の始期から、在学する学校の正規の最短修業年限の終期まで。
大学院生の場合で、その課程が修士課程および博士課程に分かれている場合は最短修業年限は各課程の修業年限となる。
高校推薦
・ 当財団指定の高校に在籍する3年生を対象にし、各校1名の学校推薦を添えて応募。
・ 真に経済的援助を必要としており、当財団指定の国公立大学進学を目指す学業成績優秀者。
・ 書類選考、面接を経て奨学生内定者を決定する。
・ 採用人数は最大40名程度。
・ 奨学金の金額と支給期間
奨学生内定者には大学合否を問わず、受験費用として一時金30万円を給付。
入学金相当30万円、期間内の授業料相当54万円(年額)を給付。
月額奨学金として自宅生には月額5万円、自宅外生には月額10万円(東京23区内在住者は月額12万円)を給付。
・ 入学時一時金として自宅外生に30万円を給付。
卒業年次まで給付(4年間)。医学部等の6年制学部については6年間。修士課程進学者には別途審査の上、更に最長2年間支給を継続する。
・ 大学の成績が低調であった等の際には、奨学金の支給を停止、または終了する可能性がある。
※高校推薦だけでなく、大学推薦の募集も行っている(給付額などはほぼ同じ)。
民間の給付型奨学金は、このほかにもたくさんあります。
・ 地域や学校、学年などを限定しているもの
・ 理系や医学科などの進学者を支援するもの
など様々です。
民間の奨学金は大学や高校を通して募集を行っているケースが多いので、指定校になっているかどうかや、申し込み資格の要件を満たしているかについては学校に問い合わせてください。
また奨学生として採用された後は、
などのルールが設けられている場合もあります。
これらを守らないと給付が停止することもあるので気を付けておくようにしましょう。
返還の必要がない給付型奨学金は、経済的に苦しい家庭にとっては非常に有難い制度。
さらに2020年度導入に向け、給付型奨学金や授業料減免を拡充する内容で政府が検討を進めています。
まずは奨学金の内容をしっかり把握することが大切。
また情報収集も積極的に行い、「知らなくて損した」ということがないように自ら動くように心がけましょう。(執筆者:藤 なつき)