高校生から義務教育制度から離れ、各世帯で高校へ進学するお子さんの授業料や教科書代などの諸費用は無償化ではなくなります。
国は、2010年から「授業料無償化」制度を開始し、2014年4月からは新制度に代わり、私立高校進学希望者への進路も広げました。
新制度に変わり、低所得世帯や生活保護を受けている家族には、授業料は実質無償になります。
しかし、教科書代などの諸費用は、各家庭負担になりますが、諸費用負担を助けるのが、「奨学給付金制度」です。
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ところが、奨学給付金制度を利用しているはずなのに、出席停止・留年・最悪は退学というケースが出ています。
文科省や自治体も奨学給金制度の利用率などから、調査・検討を始めました。
では、今の高校生が抱える授業料などの問題や、今始まっている支援制度について紹介します。
目次
高校生の授業料などの制度をおさらい
1. 高等学校授業料の支援制度について
高等学校授業料の無償化制度は、2010年4月からスタートしました。
公立高校の家庭は無償なのに対して、私立高校の場合は、「就学支援金制度」のもとで月額9,600円をするとなっていました。
しかし、2014年4月から、公立・私立(支援学校や通信制・定時制も含む)問わずに「高等学校等修学支援金制度」と統一されました。
授業料に関しては、所得制限はあるものの、年収250万円以下の低所得家庭や生活保護家庭でも私立高校進学できる道ができました。
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国が行う、就学支援金制度は、授業料のみの支援であって、教科書代や修学旅行費用などの諸費用が出せない場合は、どうすればいいかとなります。
そこで、低所得家庭など負担が困難な家庭向けに、「高校生等奨学金」制度を導入し負担の軽減を行いました。
2.「高等学校等奨学金」について
給付金の金額については、生活保護世帯と非課税世帯(年収250万円以下)、国公立か私立・通信制で、年間受給金額は異なりますが、非課税世帯で第1子だけの場合、代表例としては、
・ 私立へ進学する場合:年額8万9,000円
を都道府県を通じて、申請し、審査の上で受け取ることができます。返済義務はありません。
生活保護世帯については、修学旅行費以外は、全て生活保護の範囲で支援が行われます。
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救われるはずが、中退者が出ているのはなぜか?
これらの支援制度のおかげで、家の経済事情で、今まで高校進学を諦めていた生徒が、救われるはずでした。
実際には、出席停止・留年・中退と出てしまうのはなぜでしょう?
大阪府が平成22年から平成26年の間に、高校中退者の追跡調査をしたところ、中退者数を全国と比較したところ、年々減少しているという結果が出ています。
平成27年の調査をみると、中退理由としては、
・ 不適応:34.1%
が上位で、「経済的理由」は2.7%という結果でした。
支援制度により経済的理由で中退することは減ったものの、「その他」というところで、16.8%の結果が出ています。
進学先で自分が考えていた世界が違うことや、最近の授業進行でついていけない高校生はいて、塾に通わなければついていけないという学校はあります。
そのギャップで進路変更をする子や、フリースクールへの進学に切り替える子はいます。
では、この調査の「その他」の内容に、注目してみましょう。
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奨学金では足りない? その他経費が支払えない
奨学金の支給については、審査が通っても、教材費など諸費用全てに充てることができない問題が出ています。
私立高校の例でいくと、初年度だけでも諸費用に、年額30万円は平均的とされています。
奨学金を受給していても、全てを払いきれない家庭が出ています。
生活保護世帯では、教科書代や学用品などの諸経費を、生活保護の措置によって、代わりに負担してもらえるけれども、修学旅行費が払えないという事態になっています。
授業料は、申請をしていれば、国から学校へ直接渡ります。
奨学金は、受給していても足りない場合は、自分達で工面する必要があります。
そこで、懸念されているのが、「奨学金を受けている生徒のアルバイト」で、学業の低下につながっているのではないかということです。
これらの事情から、留年・出席停止や、行事への不参加、最悪は中退するということに繋がります。
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制度の徹底が行われていないことによる悲劇
新聞などでの報道で、私立高校在籍の約15万人の生徒が、奨学金の受給対象者であるにも関わらず、約2万人の生徒が対象であるにも関わらず、受給していないことが発表されました。
奨学金制度については、入学時に一度案内はあるものの、
・ 転居や進学先を変更した場合は、あらたに再申請をする必要あり
などの案内が徹底されていないことも、同時にわかりました。
文科省や都道府県も、利用についてのリーフレットを渡すなどの対策をしています。
それでも再申請を忘れてしまい、1年間貯金を切り崩しての学校生活や、留年の措置になることがあります。
勉強意欲のある子への救済。各都道府県が取る支援制度
各都道府県では、勉強意欲がある生徒が、家庭の金銭的な問題や就労問題で、通えなくなることを助けようとしています。
授業料の援助についても、各都道府県が私立高校に対して行っている授業料の支援金制度があります。
国からの援助分に上乗せすることになり、授業料負担が軽くなることから、諸費用負担が軽くなるという制度です。
また、都道府県によっては、在学中に家庭事情や病気などで、留年処分となった生徒に対して、条件はありますが、卒業意欲があり、卒業が見込める生徒に対して、学校長判断で、1年間の救済制度行って、卒業できるようにしています。
同時に「学び直し支援金」制度も始まっているので、諦めずに是非利用して卒業を目指してください。
申請は、各都道府県へとなりますので、詳しくは、学校もしくは各都道府県の教育課・私学課へ問い合わせてみてください。
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まとめとして
今、小さな子供への教育費支援制度も進んでおり、一番お金がかかりやすい高校生への授業料支援は広がりつつあります。
しかし、制度について、詳しく知らされていないのが現状です。
今後の経済の動き次第では、年度内に、緊急で奨学金の申請をする家庭もあるはずです。
それなのに、現状は年1回しか申請するチャンスがありません。
公立高校に進学したとして、部活費などで奨学金をもらっていても、足りないというのが現実なので、奨学金制度の充実は課題と言えるでしょう。(執筆者:笹倉 奈緒美)