最近は洋服や化粧品、その他さまざまな物が、インターネットの通信販売で手軽に買えるようになりました。
ただ、その場合現物を見ずに買うため、色が思ったのと違っていたり、サイズが合わないなどから、買うのを止めたいと思うことがあるでしょう。
1度購入をした商品などの契約を途中で止める方法として、真っ先に思いつくのが「クーリング・オフ」の制度です。
目次
「クーリング・オフ」とは?
「クーリング・オフ」とは、契約の申込みや契約を結んだあとに、一定期間の間(8日間ないし20日間、取引により異なります)であれば無条件で契約申込の撤回や解除ができる制度です。
クーリング・オフについては、特定商取引に関する法律(以下「特商法」といいます。)などで定められています。
通信販売のとき使えるの?
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クーリング・オフの制度は、ネット通販のような「通信販売」(特商法では、「通信販売」は事業者が新聞や雑誌、インターネットなどで広告し、商品などの販売やサービスの提供を行う取引のこと、ネット通販のほか、テレビショッピングやネットオークションなどをいいます)では設けられていないのです。
これは、通信販売の場合、訪問販売など不意打ちのような形で勧誘され、契約に至るのと違って、自分でインターネットなどに掲載されている広告を見て申込をし、商品などを購入していることから、冷静に判断できる状況の下、自分の意思で契約の申し込みをしているといえるからとされています。
その代わり、特商法では、クーリング・オフに類似の制度として、商品の引き渡しを受けたときなどから8日間は、申込の撤回または売買契約の解除ができるという返品の制度があります。
ただ、この制度の注意点としては
・返品するのにかかる郵送料などは売り主ではなく、買った人の負担になること。
(クーリング・オフの場合には、返品の際にかかるコストは売り主負担と定められています。)
・売り主である業者が通信販売の広告などで、返品を認めない特約を設けているときは、返品できなくなるということ。
です。
そのため、アクセサリーなど高額な商品や、洋服や靴などサイズや色が実際に確認できないものについては、購入する前にインターネットのサイトなどに「返品できる」と書かれているかどうか、良く確認をしてから購入するようにしましょう。
また、返品できるとされていても、期限が設けられていることもあるので、その点も含めて気をつけて購入した方が良いです。
エステ契約を止めたい場合には、クーリング・オフは使えるの?
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これに対して、エステティックに関する契約をしたけれども、そのあと友達から余り効果がないと聞いて契約を止めたいと思ったとき、クーリング・オフは使えるでしょうか。
結論からいうと、この場合には使えることがあります。
エステ契約は、法令で指定されているサービスの一つで、一定期間を超える期間に継続的に決められた金額を超えるお金を支払ってサービスの提供を受ける、「特定継続的役務提供」にあたれば、クーリング・オフの制度が使えるとされています。
・「決められた金額」は5万円を超える場合
と定められています。
エステの場合のような特定継続的役務提供では、クーリング・オフをすると、エステ契約自体だけでなく、契約の際美容機器などを購入していた場合には、美容機器の売買契約についても一括で無条件に解除できます。
ただ、エステ契約の際に化粧品やせっけんなどといった消耗品を併せて購入し、既に使ってしまっている場合には、化粧品等の売買契約の方は解除できなくなることがあるので注意しましょう。
クーリング・オフのできる期間は?
クーリング・オフができる期間は、エステ契約のような「特定継続的役務提供」の場合、法律で定められた内容を記載した契約書面を受け取った日を含め8日間とされています。
割とよくあるのは、
・そもそも契約書面など受け取っていない
という場合です。
このときはクーリング・オフの期間が進まないため、不備のない契約書面などを新たに受け取らない限り、クーリング・オフができます。
クーリング・オフをするには?
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クーリング・オフをするには、法律上書面で行う必要があるとされています。
これは、申込みの撤回があったかどうか後々紛争にならないように明確にするために規定されたものですので、裁判所の判断では口頭でも書面と同じ明確な証拠があればクーリング・オフを認めているものもあります。
ただ、実際には明確な証拠がなにか、争いになる可能性もあるため、書面で行うのが無難でしょう。
内容証明郵便で行うことが要件にはなっていませんが、後で証拠を残すという意味では、配達証明付内容証明郵便が一番よいです。
簡易な方法ではありますが、はがきに書いて両面コピーを取った上で、配達証明か簡易書留で郵送するというやり方もあります。
なお、クーリング・オフは解除などの書面を発送したときに効力が生じるので、いつ発送したかあとで証明できるようにしておくことは、行使期間との関係でも大切になってきます。
なお、エステ契約のような「特定継続的役務提供」の場合には、クーリング・オフの期間が過ぎても将来に向かって、理由を問わず契約を中途解約できます。
ただし、解約にあたってはエステサロンなどの事業者が顧客に対して一定の損害賠償額(解約手数料)を請求できるとされています(ただし、上限があります。サービス提供開始前は2万円)ので、その金額分は支払う必要が出てきます。
情報商材のトラブルも発生
最近では情報商材に関するトラブルも発生しています。
これも特商法上「業務提供誘引販売取引」(物品の販売や有償で行うサービスの提供の事業で、販売目的である商品などを利用する業務をすることで利益が得られるといって客を誘引して、商品の購入料などを負担させるという取引、内職商法やモニター商法などがこれにあたります)にあたれば、同じくクーリング・オフの制度を使って、契約を途中で解除できる場合があります。
「業務提供誘引販売取引」であれば、契約書面を受け取ってから20日間は契約申込の撤回または契約の解除ができます。
ただ、買主である消費者が提供された商品を利用して得た利益やサービスの利用による対価の返還について、事業者から請求される可能性が法律上ありうる点などが問題になっています。
特にここ最近のインターネットを利用した通信販売・サービスを利用した商売は、
・自宅でも出来る
といった手軽さがある反面、契約を中途で止めるときの手続きについて気をつけなければならないものが増えてきています。
安易に契約を結んであとで後悔することがないように、この記事のような情報も入手して慎重に検討しましょう。(執筆者:片島 由賀)