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漆塗りのお椀や箸は贅沢品ではなくコスパ最強のもの
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漆塗りのお椀や箸は、高価で贅沢なものというイメージがあるかもしれません。
しかし漆は、ぜいたくに見せるために塗られたのではなく、もともとは木のお椀や箸に強度を出すことが目的で塗られていたのです。
漆は、時間がたてばたつほど固くなり、つやが出ます。
作りが悪いお椀や箸は、使えば使うほど塗料がはがれてしまい、痛みが出ます。
漆塗りは使い込むほど味が出るのです。
テレビ番組「マツコの知らない世界」で津軽塗の箸が取り上げられたことをきっかけに「漆塗り」も話題になっています。
津軽塗は、幾重にも漆が塗ってあるため、一般的な箸よりも堅くて丈夫です。
安い箸をこまめに買い替えていた人たちが、津軽塗の魅力を知り1膳数千円の津軽塗の箸を購入しています。
津軽塗をオンラインで販売している店では売り切れも目立っている状態です。
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漆塗りは、手入れや管理が大変だと思われていますが、
「長く水につけない」
「紫外線に当てない」
この2つのポイントを押さえれば、日常的に長く使える「コスパ最強のもの」かもしれません。
100均と百貨店の違い
「漆塗りの定番」といえばお椀ではないでしょうか。
結婚祝いでは、桐の箱に入った漆器を贈ることもあります。
百貨店にある桐の箱に入った高級なお椀と100均にあるお椀は、塗りだけでなく、お椀の素地(お椀本体の材質)が違います。
「漆器」とは、素地が天然木で天然の漆が塗られているものをいいます。
つまり100均のお椀は正式には「漆器」ではなく「漆塗り風」です。
高価な「漆器」は手が出せない
百貨店で売られている漆器は数千円以上という高い金額で販売されています。
自宅でみそ汁を入れるだけなのに、お椀に数千円は出せません。
そんなときには、メルカリやネットオークションをのぞいてみましょう。
結婚祝いにいただいた夫婦椀や新築祝いでいただいたおぼん、戸棚で何年も眠っていた漆塗りの箸がたくさん出品されています。
桐の箱や取扱説明書が残っているものは、メルカリでも高値で取引されていることが多く、すぐに完売します。
箱や説明書に「天然木・漆塗装」と書かれていれば、正真正銘の漆器であり、手頃な値段ならばお買い得でしょう。
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メルカリでピンチ! 表示がなく「漆塗り風」と見分けがつかない
表示が確認できないときでも素地が天然木であるかを確認する方法があります。
天然木で作られたお椀は、底面の高台に厚みがあります。
樹脂製は高台に厚みがないことが多いです。
図々しくお願いできたら…
水に沈めると確実にわかります。
天然木は、水に沈めて手を離すと水に浮き、樹脂製は沈みます。
1番簡単でわかりやすい見抜き方ですが、出品者に「水に沈めてみてください」とお願いすることが最大の壁かもしれません。
「水に沈みますか」聞いて、「浮きます」と帰ってきたら天然木です。
高いものを買うときには、図々しいお願いもしてみたほうが後悔しないでしょう。
塗りは3種類! 「ピカリと光れば本物」は間違い
素地が天然木でも塗りが漆とは限りません。
流通している塗り物には大まかに分けて
・ 漆
・ カシュー
・ ウレタン塗装
の3種類があります。
漆の木から採取された漆が塗られていれば、本物の漆器です。
カシューは、漆よりも安価で加工がしやすいです。
よほど漆を知っている人でなければ、みただけでは漆と区別ができません。
ウレタン塗装は100均の商品にも使われている合成塗料です。
漆とカシューを比べると、漆が本物でカシューは偽物のように感じるかもしれません。
しかし、カシューにはカシューのいいところがあります。漆よりも紫外線に強く、アレルギーの心配もほぼありません。
さらに取り扱いが漆よりもラクです。
「漆器は取り扱いが面倒」という短所を見事になくしたものがカシューかもしれません。
漆塗りというと「真っ黒でピカリと光っているものがいいもの」というイメージがあります。
しかし、もともとの漆は黒色ではありません。
生の漆は、コーヒー牛乳のような色で、塗り重ねても褐色になるだけです。
しばしば「漆塗り」と表示されているにもかかわらず、木目がハッキリとみえているお椀があります。
あれは「拭き漆」といってコーヒー牛乳状態の漆を塗った製品です。
漆黒といわれる黒色は、漆に鉄の粉をまぜて酸化させて色を出します。
漆塗りの黒色は、化学的な黒色とは違う深みのある漆黒です。
緑色や赤色は顔料を混ぜます。
見た目で「ピカリと黒光りしているから本物だ」と判断することはやめたほうがいいでしょう。
漆の漆黒には、漆にしか出せない独特のやわらかさがあります。
100均で「漆器」は買えない 100均のお椀や箸のメリットとは
100均の食器売り場には「会津塗」、「若狭塗」のような有名な商品が並んでいます。
しかし、表示をみるとどれも「合成漆器」と書いてあり、お椀は樹脂製でウレタン塗装がされているものがほとんどで「漆器」ではありません。
おそらく、会津塗は「福島の会津地方で作られたもの」、若狭塗は「福井県の小浜市で作られたもの」として扱われているのでしょう。
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100均のお椀は、電子レンジや食洗機に対応できるものがほとんどです。
天然木のお椀は、長時間水につけていると変形してしまいます。
漆は紫外線に弱いため、使わないときには日の当たらない場所に保管しなければなりません。
100均のお椀や箸は、手入れや管理が簡単で、漆器にはない「気軽に使えるメリット」があります。(執筆者:式部 順子)