最近よく聞く「卒婚」。
子どもが自立する50代や定年を迎える60代に卒婚を考える人が増えているようです。
しかし、卒婚を実行するにあたっては、経済面、生活面でクリアすべき問題がたくさんあります。
また、十分な準備なく卒婚して後悔する可能性も。
それを防ぐためにも卒婚について理解しておく必要があります。
そこで、今回は卒婚と離婚の違いや卒婚希望者が増えた背景、卒婚のメリット・デメリットについて解説。
また、卒婚に踏み切る前に熟慮すべきことについてもお伝えします。
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目次
「卒婚」とは?
卒婚とは、婚姻関係を継続したまま夫婦が生活を別にすることです。
夫婦関係を解消しない点が、離婚との大きな違いです。
卒婚を考える人は圧倒的に女性です。
一方、男性はあまり卒婚や熟年離婚を考えていないケースが多いようです。
多くの女性が離婚ではなく卒婚を選ぶ理由として特に大きいのが、経済的理由です。
離婚に伴う年金分割額の相場は、夫が会社員でも数万円。
自営業の夫でそれがゼロだと考えると、離婚に踏み切れず卒婚を選べば損が少ないと考えても不思議ではありません。
通常の卒婚は別居となりますが、諸事情から家庭内別居状態で卒婚する夫婦もいます。
特に、専業主婦の場合は家を借りられない場合も多いため、この形態をとることが多いです。
特徴的なのは、50代以上で長年連れ添ってきた夫婦に卒婚を検討する人が多い点でしょう。
・ 夫婦関係を見直すために一時的に配偶者と距離を置きたい
・ 親の介護の負担を配偶者には負わせたくない
以上のことから、卒婚を考える人が年々増えています。
卒婚を考える人が増えた背景
卒婚を考えている人が増えた理由のうち、特に大きいのは次の2つでしょう。
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1. 性的役割分担の弊害
私たち熟年世代が若かった頃は、性別役割分担が当たり前とされていた時代です。
夫は仕事で家庭を顧みる余裕もなく、仕事のストレスから妻に辛く当たる人が数多くいました。今でも妻への態度が横暴なままの夫も少なくありません。
一方妻は仕事を辞めて家庭に入り、「養ってもらっている」という負い目から、夫に強くものを言えない状態で家を守らざるを得ませんでした。
そのような理由から女性の多くは夫に強い不満や不信を持っても我慢するしかなく、夫のように外でストレスを発散する機会も持てないまま、不満を腹にためてきた人も多いのです。
それらの負の感情が子どもの自立や夫の退職などを機に吹き出し、強い卒婚願望につながっていることは間違いありません。
2. 夫婦間コミュニケーションの欠落
もう一つの背景として挙げられるのが、夫婦間コミュニケーションの欠落です。
結婚歴が長い筆者の経験から言えば、
女性にありがちな「言わなくても察してほしい」
は、夫婦仲を確実に悪化させます。
筆者夫婦も長年一緒に暮らしていますので、お互いに嫌気が差すことなど数えきれないほどありました。
しかし、その都度よく話し合うことで夫婦間のギャップを埋めてきました。
おかげ今もなんとか離婚や卒婚をせずに済んでいます。
夫婦ほど言葉での話し合いは本当に重要だと痛感しています。
それができないと卒婚につながりやすいのかもしれません。
ところで、若い夫婦は夫婦仲が悪化すると離婚を考えますが、熟年世代の多くは卒婚を検討します。
熟年世代がそのような中途半端な選択をする理由は、その年代ならではの事情があります。
長年連れ添った夫婦は、愛が冷めても情は残ります。
その情がまたやっかいで、離婚という選択をためらう大きな原因となります。
また、離婚による経済的損失の大きさを考えると、特に経済力のない熟年女性が離婚に踏み切るのは難しいのです。
その結果、卒婚という形を取る熟年世代が増えているのでしょう。
卒婚のメリット・デメリット
では、あらためて卒婚のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
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卒婚のメリット
卒婚の最大のメリットは、自分のペースで生活できること。
いつ、どこでも好きなことができる解放感もあります。
また、ストレスのたまる配偶者の顔を見ずに済むメリットもあります。
加えて、ストレスが大きい離婚手続きが不要なのも大きなメリット。
収入の少ない方が婚姻費用を配偶者からもらって別生活できるのも離婚にはない魅力です。
逆に、夫婦が適度な距離を取ったことで配偶者の良さがわかり、夫婦関係が改善するきっかけにも。
また、お互いが自立することで依存心がなくなり、配偶者を対等な1人の人間として見つめ直すいい機会にもなります。
卒婚のデメリット
もちろん、デメリットもあります。
生計を別にするため、夫婦双方の経済的負担が増えます。
特に、リタイア後収入が激減する年金世代が生活費を分割すれば、間違いなく生活は厳しくなります。
また、リタイア世代は夫婦ともに生活に十分な収入が得られる職業に就くのが困難です。
その点を考えずに卒婚に踏み切ると、早々に老後貧困に陥るリスクもあります。
さらに、孤独感や不安との戦いも待っています。
健康な場合は問題ありませんが、困るのは病気になった時。
配偶者に頼れない状況の中、病気を悪化させて孤独死する可能性もないとは言えません。
その他、子どもの理解が得られない、別居期間が長引くと熟年離婚につながる場合もあるなど、卒婚にはメリットよりもデメリットの方が大きいと言わざるを得ないでしょう。
卒婚がうまく行くケースとは
さまざまな理由から卒婚を考える熟年世代。
私の周りにも卒婚を成功させている人はいます。
その多くが親の介護をきっかけに実家に戻り、配偶者と別居しているケースです。
現在親の介護で卒婚状態の人に話を聞くと、親の介護という大義名分があれば卒婚に踏み切りやすいとのことです。
しかしそれでもなお、次の条件をすべて満たしていないと卒婚の成功は難しいようです。
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・ お互いが配偶者の行動に干渉しない
・ 夫婦双方が経済的に自立している
・ 生活面で双方が自立している
・ 子どもの理解が得られている
これまで生計を同じくしていた夫婦が生計を別にして収入が減れば、これまでと同じ生活をすることは不可能です。
それを受け入れて身の丈に合った暮らしができる人だけが、卒婚ライフを満喫できるのでしょう。
また、別の成功例では、卒婚による別居からもとに戻った夫婦もいます。
先述の通り、距離を置いたことでお互いへの嫌悪感が薄らぎ、夫婦関係が修復に向かうこともあるようです。
卒婚に踏み切る前に考えてほしいこと
ここまで卒婚についていろいろお話してきましたが、実は卒婚は特に新しいことでもありません。
後期高齢者である私の親の世代でも、別居や家庭内別居で生計を別にする「卒婚夫婦」は決して珍しくなかったのです。
今も昔も、卒婚が成功する人は少数です。
卒婚を考える夫婦ほど、お互いへの甘えから配偶者に精神的な依存をしていることが多いからです。
そのような夫婦は、卒婚後に困ることが続出。
結局病気などを機に子ども世代に大きな迷惑をかけた末、親のお金がなくて子どもが親の葬式代に困るケースもあるのです。
逆に、常に言葉でコミュニケーションを取ってきた夫婦は、卒婚する確率が低くなります。
また、不幸にも卒婚を選択した場合も事前に卒婚後のマネープランを立てているため、少なくとも子どもに迷惑はかけずに済んでいます。
それを考えると、安易に卒婚を考える人ほど卒婚に失敗やすいのかもしれません。
DVやモラハラ、借金などの深刻なケースは別ですが、卒婚の背景にはたいてい夫婦間のコミュニケ-ション不足が潜んでいます。
卒婚の2文字が脳裏に浮かんだら、まずは自分が配偶者にどれだけ依存しているかを正しく知り、精神的に自立する必要があります。
その上で、配偶者との会話の機会を増やすなどして、卒婚を極力避ける努力をしてみることをおすすめします。
卒婚を実行するのはその後でも遅くはないでしょう。(執筆者:大岩 楓)