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二人のすれ違い
最近、よく相談を受けるのが、シニア世代の夫婦仲の問題です。
夫は、今までさんざん家庭を顧みず好き放題やってきたものの、定年を過ぎると、やはり奥さまが一番かなと思うようです。
そこで、
と言います。
妻は、
と、心の中でつぶやいています。
夫は、定年を機会に妻との関係修復を考えている。
妻は、たまにしかいない夫だから耐えられたけれど、ずっと家にいて、稼ぎもない夫とこれ以上一緒にいてもしかたない。

と考えています。
離婚して財産分与する
妻は、
と考えています。
また、
と皮算用しているかもしれません。

では、妻の想い通り「離婚」できるか
夫は、当然反対します。
夫婦二人の意見は一致することはなく、現実には簡単に離婚はできないです。
合意できれば、協議離婚ですが、夫が反対するのに離婚するには、裁判離婚しかありません。
裁判で離婚するのは、民法(770条)で定めた離婚事由が必要です。
現実のハードルは高そうです。

財産分与の誤解
離婚ができても、財産分与で、簡単に半分を取得できるか大いに疑問です。
財産分与を決めなくても離婚はできます。
退職金は、財産分与に含めることができます。
ただし、婚姻期間中の期間に対応する部分のみです。
例えば勤務年数が38年で婚姻期間が30年であれば、30/38です。
理論上はその通りですが、実際に財産分与を決めるのは話し合いからです。
正式に決まるまで、長期間の精神的苦痛が発生します。
年金の分割は、意外に簡単にできます。
特に平成20年4月1日以降の部分は、分割の請求者だけで、手続き(年金事務所にて)ができます。
年金分割は配偶者だけでなく、事実婚の方でも可能です。
相続で取得した財産は財産分与の対象になりません。
相続財産は夫婦の共有財産でなく、特有財産となり、財産分与の対象外です。
問題はここです。

相続なら合意不要
相続であれば、話し合いをする夫(妻)がいないわけです。
もし残された配偶者と子が相続人の場合は、配偶者がすべて相続してもいいのです。
子にとっても、その財産は、いずれ手に入るからです。
実務経験でいっても、実の親子でもめることはほとんどありません。
ただ、一人っ子だと意外にもめるかもしれません。
ただし、配偶者が相続人になれるのは、相続発生時の配偶者のみです。
婚姻期間も関係ありません。
もしも相続発生の直前に離婚した場合、いっさいの相続権はなくなってしまうのが現在の法律です。
もっともお互いの相続発生のタイミングが分からないところが、人生の面白いところですが。

民法と相続税では取り扱いが違う
例えば、夫が退職金を2,000万円を手にした時、半分の1,000万円を妻名義に変更してある方がいます。
民法では「退職金は夫婦の共有財産」だからという思いからです。
しかしながら、夫に相続が発生した時、この妻名義の預金は夫の相続財産に名義預金として含めることになります。
贈与したということなら、贈与税が発生します。
敬愛する白洲次郎、正子夫妻が言っていました。
だそうです。(執筆者:橋本 玄也)