1兆638億円、このとてつもない金額は日本学生支援機構が平成27年度132万人の学生に貸与した金額です。
一方で880億円が、入金も返済猶予などの手続きもないまま放置されているといいます。(平成27年度現在)

教育費が話題になるたび、奨学金はやり玉にあがります。
奨学金は給付型でない限り、紛れもなく借金であり返さなくてはいけないお金です。
「返済できない」となる前のつまずく原因はどこにあるのでしょうか。
日本学生支援機構が行った「平成29年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」から、奨学金の延滞者3,329人と無延滞者2,296人のデータを見てみましょう。
目次
申請の書類作成に本人が関わっていない

奨学金を受給するには、書類を作成し提出、認定を受ける必要があります。
奨学金を受給する最初の作業が提出書類の作成なのですが、延滞していない人は54.8%が「奨学生本人」が準備しているのに対して、延滞している人は35.5%にとどまっています。
さらに「奨学生本人」と「本人と親等」を合せると、延滞していない人では76.9%と3/4以上が学生本人が関わっているのに反して、延滞している人は56.5%と約半数しか本人は関与していません。
延滞者の中には、親(または祖父母などの家族、親戚)が書類作成者というケースが36.2%、なんと誰が申請したのかわからないという人(7.3%)までいます。
子どもに余計な不安を与えたくない親心かもしれませんが、奨学金の返済義務を負うのは学生本人です。
返さなくてはいけないことを知らない学生も

返済が滞っている人のうち、10.7%は「延滞督促を受けてから」返済義務があることを知ったと回答しています。
「奨学金は返さなくてはならない」という一番大切なことを本人が知らないという現実は、とても大きな問題です。
きちんと返している人は、申込手続きを行う前に、返済義務があることを9割近くが認識していています。
延滞の理由は


延滞が始まった理由は、「家計の収入が減った」(67.8%)が最も高く、次いで「家計の支出が増えた(40.2%)、「入院、事故、災害等にあったため」(19.9%)と、本人の頑張りだけではどうしようもないことも確かにあります。
しかし、見逃せないのは、延滞が継続している理由「奨学金の延滞額の増加」(45.0%)です。
返還期日までに返還しないと延滞金が課されます。
申し込み前に「いくら借りたらいくら返済するのか」しっかりシミュレーションしておきましょう。

法的措置を恐れる前に、猶予制度を活用する

延滞が継続している理由のなかには、「親の経済困難」により親が返還する約束をしていたものが返せないケース(23.2%)や子どもが親を援助している(24.2%)割合も少なくありません。
奨学金には、「返還期限猶予」「減額返還」「死亡または心身障害による返還免除」など、返せない時のためのセーフティーネットがあります。
しかしその認知率はというと、実際に返還が始まるまでに知っていた人は、延滞者ではわずか4.5%です。
しかも、「延滞督促を受けてから知った」人が、51.8%と半数以上を占めています。
一方延滞していない人は、「返還のてびき」や「奨学金申請時・採用時の資料」を読んだり、「学校の説明会」「日本学生支援機構野ホームページ」から猶予制度を知っています。
避けていては道は開けない、まずは本人がホームページにアクセスを

返還が滞っている人のうち30.7%が返還期限猶予制度を申請したことがありません。
日本学生支援機構のホームページには、返還が難しい時のための猶予制度や遅延した場合の手続き方法について掲載されています。
しかし、ホームページの閲覧したことのない人が、延滞者では3割弱存在します。
またスカラネット・パーソナルからは、ネット上で本人の奨学金に関する情報や登録内容を閲覧、転居・改姓・勤務先変更等の届出ができます。

夢を実現するために必要なこと
返済が苦しい延滞者であっても「奨学金のおかげで進学可能となった」という人は、60.0%と最も高い割合を占めています。
進学は、将来の夢を現実化させる第1歩です。
卒業後、夢に向かって確実に歩きはじめるためには、奨学生本人が奨学金に対する正しい知識を得ること、このことこそが、奨学金でつまずかない最も自覚しておきたいことと言えるのではないでしょうか。(執筆者:吉田 りょう)