そんなコピーが躍る広告を目にしたことはありませんか?
「家賃を払っているのはもったいないから買おう!」なんて思う人もいるかもしれません。
「自己資金ゼロでも買えるなら…」と動き始める人もいるでしょう。
本当に自己資金ゼロで買うことはハードルが高いかもしれません。
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目次
住宅ローンで借りられるけど、先に自己資金で支払う可能性があるもの
紙の上では自己資金ゼロでの購入も可能です。
例えば、諸費用も含めた購入総額が3,000万円の計画だったとして、その全額を住宅ローンで借りる資金計画を立てて、審査に出すことは可能です。
そして審査が通れば資金計画が成立したと言えます。
ただ現実的には一時的にでも自己資金で先行して支払うものが発生します。
例えば
手付金
です。
契約時印紙代とは、土地や建売住宅、マンションを購入する際の売買契約書や注文建築の請負工事契約書に貼付する収入印紙代です。
契約書記載の売買金額(請負金額)に応じて収入印紙の金額が決まります。
この印紙代も含めて住宅ローンを借りることは可能です。
ところが物件の契約時にはまだ住宅ローンは実行されません。
つまり先に自己資金で立て替えて支払う必要があります。
同様に手付金も契約時に発生するものなのでいったんは自己資金で支払う必要があります。
そもそも自己資金完全ゼロでの購入は、紙の上での資金計画では成立しても資金繰りの面からはハードルがあります。
もちろん建売やマンションの売主である不動産会社が
となるならば話は別です。
ところがこういった対応はまっとうな不動産会社ではしません。
また、不動産会社が売主ではない中古物件を仲介会社を介して買う場合でも売主である個人が手付金をもらわずに売買契約を成立させることを了承するとはあまり考えられません。
考えられるのは仲介会社が買主の代わりに立て替えておくケースですが、先の売主の不動産会社が手付金は後でも良いですというケースと合わせて、いずれも宅建業法上、手付貸与の禁止という項目に違反する行為となります。
つまりまっとうな業者では口が裂けても言わない方法です。
ただここまでに書いた話は宅建業法の話です。
注文建築をするケース
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土地の購入、新築マンション・新築建売住宅の購入、中古マンション・中古住宅の購入といった不動産取引の場合の話です。
マイホームの選択肢で考えうるもうひとつは親や親戚が所有する土地を使用貸借して、注文建築をするケースです。
使用貸借というのは地代を払わずに無償で借りることを言います。
もし地代を払うなら借地権を設定するという意味で不動産取引になりますが、無償で借りるので不動産取引には当たりません。
土地を借りて、もしくは既にお持ちの土地に注文建築をする場合は、工務店やハウスメーカーとの工事請負契約になるので宅建業法は全く関係ありません。
工務店が「契約金も工事途中の支払いも住宅ローン実行後の支払いで大丈夫です」と言われたというケースも相談の中で稀にあります。
これは工務店に資金的な余裕がないとなかなかできない話です。
マイホーム購入の自己資金の目安は?
そんな質問をいただくことがあります。
一概にいくらとは言えませんが、少ないよりは多い方がメリットがあります。
自己資金が多い方が良い理由
(2) 住宅ローンの金利優遇などの好条件を引き出しやすい
今でこそフラット35も10割融資(物件価格の100%借りられる)をやっているので、自己資金が少なくとも家が買えます。
フラット35の前身の住宅金融公庫の時代、公庫融資では2割の自己資金と諸費用分の自己資金をお持ちであることが条件でした。
物件価格の8割までしか借りられないという制度だったからです。
そのあたりからマイホームを持つならの自己資金を用意しないといけないという認識をお持ちの世代の方もいます。
今でも2割以上の自己資金をお持ちであれば住宅ローンの審査は有利に進められるでしょう。
自己資金が多く用意できているということは銀行からすると
・ 購入物件に対して借入額が少なくなるので回収不能のリスクが少なくなる
そんな観点からも喜ばれます。
また最近の住宅ローン審査は「スコアリング方式」を採用していますので、担当者がシステムに入力したデータに基づいて申込人に点数がつけられます。
このスコアリングでは自己資金が多いということが有利に働きます。
当然、借りる側にもメリットがあります。
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住んでいる家を売れば住宅ローンは何とかなるということ
購入物件に対して借入額の割合が低くなることで家計的なリスクが減ります。
どういうことかと言うと、もし将来、売却をしなければいけない場合に住宅ローン残高よりも売却金額が低くなることは少なくなります。
つまり売れば住宅ローンは何とかなるという状況になります。
どんな状況で売却をしなければいけなくなるか分かりませんが、万一住宅ローンの返済に困って売却をしなければいけなくなるなら、住宅ローンの残高より低い金額では売却しづらいものです。
これが自己資金を多く入れていれば、住宅ローンの残高も少なくなり、買主から売買金額の交渉があっても応じる余地も生まれます。
もちろん下げて売りたくなければ断れば良いのですが、現金化することを急ぎたい事情があるなら交渉の余地が持てることは心のゆとりにもなります。
自己資金ゼロは資金繰り的に難しい
少し話が逸れましたが、「自己資金ゼロで購入可能か?」という問いに対しては、最低限、印紙代や契約金を建て替えて支払う貯蓄があるなら可能です。
もしその貯蓄すらないなら難しいということになります。
貯蓄はあるけどマイホーム購入計画では使わないのと貯蓄は全くないのとでは状況は全く違うということです。
やはりマイホーム購入を考えるなら家計としても貯蓄できる体質になっていないと厳しいということになります。
この文章を読んでいる方の中には「貯蓄もないのにマイホームを買おうなんて考えないでしょう?」と思う方もいるかもしれませんが、実際にローコストを売りにしている会社でマイホームを検討している方の中には本当に貯蓄がほぼないという方も少なくありません。
日本は中流がなくなり、富裕層と貧困層に二極化していると言われますが、マイホーム購入の現場を見ていてもその流れを感じることがあります。(執筆者:佐藤 陽)